「音楽プロジェクト」に深く傾倒する、ペプシの思惑:MTV、Shazamらと協働で

ペプシ(Pepsi)の音楽への関心は、テレビCMやミュージックコンサート、フェスティバルを超越している。

同社は9月の第1週、MTV、アイハートメディア(iHeartMedia)、シャザム(Shazam)といったメディアパートナーと共同で、音楽の動画シリーズおよびアーティスト発掘プログラム「ザ・サウンド・ドロップ(The Sound Drop)」を開始。同プログラムの狙いは単に注目を集めることだけではなく、時代の先端を行く表舞台でブレイク寸前のミュージシャンたちにスポットライトをあて、支援することだ。

人気上昇中のスターをしっかりつかまえることで、ペプシはそのアーティストを早くから(そしておそらくもっとも熱心に)応援しているファンのあいだで信頼を構築したいと考えている。ルーカス・グラハム、アレッシア・キャラそして、ジデーナを筆頭に、ペプシは毎年約10名のアーティストを取り上げる予定だ。

「ザ・サウンド・ドロップ」におけるレコードレーベルおよびアーティストとの折衝のためにペプシは、同社のミュージック担当者であり、長年音楽業界でエグゼクティブを務めてきたエマ・キグリー氏を派遣。彼女はペプシ幹部、メディアパートナー、そして音楽業界の人間を含む、11名で構成されるパネルを指揮するだけでなく、同プログラムのアーティスト選抜の責任者も兼ねている。

オリジナルコンテンツを制作

ペプシはスポンサーシップを越えて音楽業界との関係性を拡大しようとしており、そこから「ザ・サウンド・ドロップ」が生まれた。その意味で、同プログラムはレーベルまたは、アーティストが金儲けをするための近道というわけではない、とキグリー氏はいう。

「これまで、アーティストが当社に望むことは、当社のCMに出演する、または自分たちの音楽が採用されることだった。実際にはどれだけ頻繁にそのようになると思う? 運が良ければ、せいぜい年に1、2回だろう」とキグリー氏は語った。

代わりに「ザ・サウンド・ドロップ」は、既存メディアとの協力を経て、特別に制作する動画とマーケティングで、フィーチャードアーティストたちを盛り上げる。各アーティストは、MTVなどを運営するメディア企業バイアコム(Viacom)の社内コンテンツスタジオ、バイアコム・ベロシティ(Viacom Velocity)によって、主演のショートドキュメンタリー映像が制作される。そして、そのミニドキュメンタリーは、ペプシのYouTubeチャンネルで公開。ルーカス・グラハムにスポットライトを当てた、最初のエピソードは、9月初旬に初登場して以来、31万回の視聴回数を記録している。

新しいコンテンツ提供方法

「ザ・サウンド・ドロップ」は、アイハートメディア(iHeartMedia)のプラットフォームにおける動画およびオーディオ広告で活用される予定だ。たとえば、アイハートラジオのSnapchat(スナップチャット)「ディスカバー」チャネルをペプシが24時間引き継ぎ、最新のフィーチャードアーティストと「ザ・サウンド・ドロップ」をプロモートするコンテンツを流す。このチャンネル引き継ぎは、「ディスカバー」チャネルでの2週間の広告キャンペーン中に実施される予定だ。

もうひとつのメディアパートナーのシャザムは、フィーチャードアーティストからの個人的なメッセージへとユーザーを誘導する「ザ・サウンド・ドロップ」のバナー広告を出す予定だ。このメッセージは、ユーザーが同アプリでフィーチャードアーティストの曲にタグを付けたときにも実行される。

ペプシはまた、フィーチャードアーティストの曲のリミックスやカバーを作成するため、ソーシャルインフルエンサーたちのネットワークも手配している。これらの動画は、ペプシのYouTubeチャネル上で紹介され、もちろんインフルエンサーのソーシャルアカウント上でも同じようにアップされる予定だ。たとえばルーカス・グラハムの「ママ・セッド」をユーチューバーのデボン・テレルがリミックスした動画は、テレルのYouTubeチャンネルで34万回の視聴回数をカウントした。

コンテンツの利権にも絡む

サリバンズ・コンテント・ラボインプリント(Sullivan’s content lab Imprint)のマネージング・パートナーを務めるアンディ・サイバート氏によると、音楽業界内で異なるリソースにあたるこのアプローチは、「ザ・サウンド・ドロップ」が成功する確率を高くしているという。「バイアコムは、そのコンテンツで素晴らしい仕事をするかって? もちろんするだろう。これは彼らの伝統だ。アイハートメディアとシャザムは素晴らしいマーケティングプラットフォームを提供できるはず。彼らには規模と広い守備範囲がある」とサイバート氏。

ペプシはブリトニー・スピアーズからビヨンセまで、多くアーティストと仕事をしており、音楽業界とは長い付き合いがある。同社は2年前にキグリー氏を採用し、スーパースターだけではなく、これから伸びる才能のあるアーティストとの有意義な仕事を見出そうとしている。

「私が十分に身に染みたことのひとつは、外部でパートナーになりそうな人間と話をはじめると、彼らは皆、アイデアをすでにもっているが、しかし、それは一様に『ペプシの協賛でやりたい』というものだった」と、キグリー氏は語る。「私にとって協賛することは居心地が良いものではなかった。我々は彼らのスポンサーになりたいわけではなく、彼らのアイデアを実行するのであれば、その所有権ももつということだ」。

人々がYouTubeやほかのデジタルプラットフォーム上で無数の音楽コンテンツを消費できるようになっているいま、我々の期待は、オリジナルでコンテンツを作ることでより多くの所有権をもち、ペプシに対する好影響を徐々に浸透させていくことだ。

「音楽領域で実験を試みるブランドがたくさん存在しているが、皆違った試みでコンテンツを公開している」と、キグリー氏は述べる。「我々は新しい方法で音楽業界にブランドの資産価値を構築している。我々がアーティストのためにこのような機会を提供し、その反響が彼らのファンを通して広く拡散されれば、我々ブランドにとっても、素晴らしい話になる」。

Sahil Patel(原文 / 訳:Conyac