ペプシ「クリエイターズリーグ」は広告代理店キラーか?:インハウス化が進むコンテンツ制作

大手炭酸飲料メーカーのペプシ(Pepsi)は2016年5月第3週、ニューヨークのソーホー地区に4000平方フィート(約370平方メートル)の敷地をもつ、コンテンツスタジオ「クリエイターズリーグ(Creators League)」の開設を発表した。同社はエージェンシーに代わって、マーケティング担当者がクリエイター業務を行うようになると期待している。

これまでは、ペプシがオンライン動画やコンテンツの編集を行う際には、その内容をエージェンシーに送り、そこからエディターのもとへ届けられるなどしていた。これら一連の工程にかかる期間は、平均して2週間だったという。それが、現在では1時間で済む。

ペプシのグローバルブランド開発担当のシニアバイスプレジデント、クリスティン・パトリック氏は「当社が長年行ってきたマーケティング活動において、スポットCMの制作本数は年間2本か3本だった」と話す。

これと比較して現段階では、Youtubeやソーシャルビデオ、画像を含めたデジタル動画やコンテンツ制作数は、年間400に上るとパトリック氏は予測する(例:こちらの動画は、UEFAチャンピオンズリーグ後援のために制作された。主演はアメリカのグラミー賞受賞歌手のアリシア・キーズ)。従来は提携エージェンシーや制作会社を通していたが、「クリエイターズリーグ」によって、すべて社内で手掛けることができ、時間とコストの削減につながると考えられるという。

クリエイターズリーグのメインフロア

「クリエイターズリーグ」のメインフロア

スタジオの内覧会では多数の編集エリアや上映設備、そして、いまのところは用途未定だが、撮影や制作にも使用可能な部屋なども、数多く披露された(スタジオ担当者によると、ペプシの動画制作現場はロケが多いため、スタジオでは撮影後の編集作業が中心となるようだ)。フルタイムのスタッフは10人から15人ほどだが、エージェンシー同様、プロジェクトの必要性に応じて増員する予定だという。

スタジオ内の編集エリア

スタジオ内の編集エリア

コストは大幅に下がる。この業界ではエディターを雇う場合のコストは1日平均750ドル(約8万2000円)だが、外部に依頼すると5000ドル(約60万円)に跳ね上がると試算されるという。「消費者とつながっていたいと思うのであれば、このようなコストの効率化をしなくてはならない」と、前述のパトリック氏は話した。

ただ、これはエージェンシー業界全般にとって、懸念すべき大きな傾向の一部分にすぎない。エージェンシーを素通りして、直接制作会社へコンテンツなどの制作依頼をするブランドが非常に多くなってきているのだ。大手清涼飲料水メーカーのレッドブル(Red Bull)は、以前から自社スタッフによるスポットCMの撮影、編集、制作を行っている。また、ヘアケア商品で知られる化粧品会社ロレアル(L’Oréal) は2015年、カナダで販売する製品ラインのリアルタイムかつ地元密着型のコンテンツを制作するため、コンテンツ部門を立ち上げた

デジタルメディア事業者団体SoDAの報告によると、現在はブランド全体の27%がデジタル事業でエージェンシーを利用しないと回答しており、その割合は2014年の2倍以上となった。

撮影を待つ限定商品

撮影を待つ限定商品

スタジオ内の上映室

スタジオ内の上映室

しかし、既存の提携エージェンシーとの関係に悪影響が出るのではないか、という質問に対してパトリック氏はそれを否定した。「クリエイターズリーグ」と名付けたのには理由があり、提携するパートナー同士を結び付けるものなのだという。たとえば、世界的な広告代理店のTBWA\シャイアット\デイ(TBWA\CHIAT\DAY)もそのひとつで、先ごろスポーツドリンクブランド、ゲータレードの作品撮影のため、同スタジオを訪れていた。

こちらも上映室

こちらも上映室

また、「クリエイターズリーグ」には、オリジナルコンテンツに投資し、制作を行うという側面もある。たとえば現在、米映画『ダラス・バイヤーズクラブ』のプロデューサーを務めたロビー・ブレナー氏とミュージシャンのT.I.氏とともに、長編映画(どこかにペプシ製品が関わってくるのかもしれないが)を制作している。「都会の大人」の映画だ。パトリック氏によるとアッシャーをはじめ、アーティストも顔を出す。またテニスプレーヤーのセレナ・ウィリアムズも極秘プロジェクト撮影のために来訪しているという。

製作スペース

制作スペース

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「ここは文字通りのオープンスペースだ」と、パトリック氏は語る。「どこのブランドにも、できることではないだろう。ブランドのライフサイクルが、強い資産価値をもつ段階になって、はじめてできることだ。もともとデジタルに関わってきた企業のなかには、コンテンツが常にライフサイクル全体に関わっている場合もあるが」。

Shareen Pathak(原文 / 訳:Conyac