消えるからあえてリークする、アディダスのSnapchat戦略:ファレルとのコラボで拡散に成功

熱狂的なファンを抱えるスニーカー業界において、発表前にプロダクト情報がリークされてしまうことは珍しくない。iPhoneで撮られた画質の悪い非公式のプロダクト写真が出回ることを減らすため、アディダス(Adidas)がとった戦略がSnapchat(スナップチャット)だ。

アディダス・オリジナルズのグローバルPR・ソーシャルメディア・ディレクターであるシルビア・キャリガー氏は、米DIGIDAYの取材に次のように語った。「古典的なローンチ手法がうまく行くとは限らない、そんな時代になった。いまはグローバル世界で、携帯電話を持っている人なら誰でも非公開の写真をキャプチャーすることができる」。

ファレルとのコラボ

アディダスのライフスタイル・ブランドであるオリジナルズは、2016年5月17日にSnapchatのチャンネルを開始した。そこでは機密性の高いコラボレーション・プロダクトを先行的にお披露目している。

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Snapchatでの写真

ロサンゼルスで開催されたアディダスのイベントに参加した、ミュージシャンのファレル・ウィリアムズは、アディダス製オリジナルズ・スニーカーの写真を同社のSnapchatアカウントで投稿。そのパープルの「Human Race」NMDスニーカーの写真は人々の注目を集め、Snapchatのスクリーンショット機能により4000回ほどキャプチャーされた。後にインスタグラムやTwitterといったプラットフォームで拡散された。

キャリガー氏は「これが正しい手法なのか、はじめるまで分からなかった」と語る。「ユーザーたちに内輪感のある視点を与えたかった。ほかのあらゆるメディアで見られてしまう前に、Snapchatで見てもらうことをプライオリティにした。Snapchatでは一度画像が消えてしまうと、もう見られないからだ」。

ほかのスポーツウェア・ブランドも、Snapchatとセレブリティという組み合わせに、なんとかあやかろうとしている。プーマ(Puma)とファッションモデルのカイル・ジェナーのコラボレーションが好例だ。しかし、ほとんどのコンテンツは、写真撮影の舞台裏画像となっている。だが、アディダス・オリジナルズはもう一歩先へと進んでいる。コンテンツを作るのではなく、インフルエンサーたちにコントロールを預けてしまうのだ。

独自のSnapchat戦略

アディダスは、すでに異なるSnapchatチャンネルを擁している。2015年8月にローンチされ、ヨーロッパのサッカー・ファンをターゲットにしている、アディダス・フットボール(Addidads Football)がそれだ。同じアディダスでも、オリジナルズとフットボールではSnapchatにおける戦術は違っている。アディダス・フットボールは非常に多くの選手やチームと提携契約を組んでいるのに対して、オリジナルズでは「フレンズとファミリー」と彼らが呼ぶ、少人数のアンバサダーたちとコラボレーションを行っているのだ。

ファレルが担当したSnapchatチャンネルでは、ロスでのイベントが一人称視点で届けられた。ブランドのハッシュタグやラッパーのビッグ・ショーンといったセレブリティのカメオ出演も交えられた。ビッグ・ショーンはアディダス・オリジナルズのファミリーの一員だ。

Snapchatには場所によって特定のフィルターが使えるようになるジオフィルター機能があるが、ファレルはブランドのデザインチームと協働してローンチイベントのためのジオフィルターを制作もした。それはファレルの描いたデザインが基となっている。600万人のフォロワーを誇るDJキャレド(DJ Khaled)のアカウントをはじめ、さまざまな来場者のアカウントで使用された。

「ブランドのアンバサダーとコラボレーションをするとき、お互いに共有している価値観というのが当然ある。しかしアンバサダーたちは、ブランドがそれまで携えていなかった物も与えてくれる。ファレルの場合、それはSnapchatのオーディエンスで、だからこそ彼と一緒にローンチをする意義は大きかった」と、キャリガー氏は語る。

即時性と親近感が重要

pharrell_bigseanファレルのオーディエンスは、オリジナルズが狙う「スポーティな10代の子ども」で構成されている。彼らは若いデジタル・ネイティブと呼ばれる世代でポップ・カルチャーを次から次へと消費する。

また彼らはインスタグラムやTumblr(タンブラー)を主に利用する層と違い、キュレーションやパーソナライズが行われたコンテンツを欲していない。即時性と親近感を求めているのだ。キャリガー氏は「長いあいだ、私たちはレトロなブランドとして認知されてきた。このモバイルでの会話が、いまこの瞬間において、ブランドとして印象づける助けとなった」と言った。

24時間で、Snapchatのライブセクションに128秒のSnapchatコンテンツが流され、それがフォロワーたちのフィードに届けられた。それは340万回ものビューにまで達した。さらには87%のユーザーがコンテンツをすべて再生したのだ。

分析会社であるスナップリティクスドットアイオー(Snaplytics.io)のトーマス・シリウス氏によると、10枚のスナップが含まれるSnapchatストーリーの場合、すべてのスナップを再生するユーザーは85%が平均値となっている。それが30スナップのストーリーであれば数字は66%まで落ちる。これに従うと、33スナップで構成されたアディダス・オリジナルズのストーリーは、Snapchatにおける平均を21%も上回ったことになる。

1年分のスナップ計画

今後、アディダス・オリジナルズはさらに多くのクリエイターたちをアンバサダーとして加えていくだろう。キャリガー氏は詳細を語らなかったが、そこにはフォトグラファーやミュージシャン、スタイリストなどが考えられる。

アディダス・オリジナルズのソーシャル・チームは5人で構成されており、そのうち2人はSnapchatに専念。彼らは毎日フォロワーたちにアップデートを届けるというよりは、イベントを中心にSnapchatを運営している。

「インフルエンサーたちとコラボレーションをするためには、彼らと使える短い時間を最大限利用するために、綿密なスケジュールを組む必要がある」と、キャリガー氏は説明した。

チームはローンチやパーティ、新しいコレクションを特集する1年分のスナップをすでに計画したそうだ。さらにはジオフィルターといったツールを使ってコンテンツをローカライズする方法を探っている。ほかのブランドはSnapchatの記事配信コーナーである「ディスカバー(Discover)」での広告を試しているが、オリジナルズはそこに参入する計画は無い。

「いまはそれよりも自分たちのチャンネルに留まることに集中している。私たちは自分たちで発言をしていくことができる信頼性を持っている」と、キャリガー氏は語った。

Grace Caffyn(原文 / 訳:塚本 紺)