サウスウエスト航空の神対応は、いかに生み出されたのか?:ソーシャル担当部門を組織の「ハブ」化

航空業界では、2015年10月11日(日)のことを「血の日曜日」と呼んでいる。

この日、飛行機の発着に関係する運用システムの誤作動により、サウスウエスト航空(Southwest Airlines)のフライトが800便も遅れるなどの事態が発生。数万人におよぶ利用者に影響を与えた。

また、空港でフライトの再開を待つ乗客の列は、数マイルに及んだという。そのため、このトラブルに対する苦情は、Twitter上に溢れかえった。


@SouthwestAir はエンジニアをたたき起こして、解決させてくれ! もう愛用するのは止めようかな……

状態は悪化する可能性があったため、同社は少しでも事態の改善をすべく、対策を続けた。Twitterに関しては、すべての苦情に関するTweetに返信。その数は数万にも及んだ。また、足止めされた乗客たちが空腹を訴えはじめると、ロサンゼルス国際空港へただちに従業員を派遣。飢えを癒やすためのピザを配らせた。

この取り組みは、崩壊する可能性もあったサウスウエスト航空ブランドの危機的な状況を救い、逆に賞賛された。ケガの功名ともいえる同社のソーシャル対応は、多くの利用者から感謝され、結果的にTwitter上には同社に対するポジティブな投稿が寄せられたのだ。


#airportnightmare @SouthwestAir エアラインのテクノロジー障害の影響が拡大している。辛さは増すばかりだったけど、従業員はとても良い人たちだったわ。サウスウエストを愛してる。

組織内の「ハブ」と位置づけ

サウスウエスト航空が、30人で構成されたソーシャルビジネス部門を新設したのは、2014年のこと。同社のすべての部署をまたぐ、運営全般に携わる部署と位置づけられた。人事部やロジスティックス部、オペレーション部などの部署とも連携しているのだ。

通常、企業のソーシャルメディア担当は、マーケティング部門やコミュニケーション部門と紐付けられる。カスタマーの声に耳を傾け、問題の解決に寄与させる必要があるからだ。

しかし、サウスウエスト航空のソーシャルビジネス部門は、組織内の「ハブ」となり、すべての部門と繋がっていると、ソーシャルビジネス戦略シニアアドバイザーのカーティス・ミッドキフ氏は説明する。人事部門とのユニークな関係が、その一例だ。求人だけでなく従業員の擁護、社内環境整備やカスタマー対応など、あらゆるタスクをソーシャル面で支援する。

新規顧客の開拓も実施

また、同社ではソーシャルビジネス部門の発足直後に、カスタマーケアとその他の仕事を担うリスニングセンターを設置。 2014年10月17日、Transfarency(トランスフェアレンシー:Transparency[透明性]とFare[料金]をかけた造語)というキャンペーンの一環として、#FeesDontFly(サーチャージ料は取りません)というイベントを実施した。

この日、荷物受け取りカウンターで、ほかのエアライン利用者にインタビューを行い、サウスウエストのサービスの優位性について説明。その乗客が、ほかのエアラインに払ったサーチャージ料を相殺し、次のフライト利用にサウスウエストを選んでもらうため、ギフトカードや無料チケットを提供するマーケティングキャンペーンであった。

ミッドキフ氏によると、このリスニングセンターも、さまざまな部署間のハブとして日常的に機能しているという。そのため、組織としてどう機能しているか、ほかの部署をどのように支援できるのかを知るため、人事部門や営業部門、そしてオペレーション部門やIT部門などから視察が訪れる。ソーシャルメディアやソーシャルリスニングは、単にブランドコミュニケーション機能だけではなく、企業内すべての部署の利益のために存在するのだ。

重要性が増すソーシャル

ソーシャルメディアのアナリティクスやビッグデータを扱うクリムゾン・ヘキサゴン(Crimson Hexagon)がリリースした、航空業界のソーシャルメディアの存在感に関する報告書によれば、他業種以上に航空業界のソーシャルメディアは重要性が増しているという。フライトに関する悪評があまりにも蔓延しているからだ。

なお、サウスウエストだけを対象としたネガティブな発言は40%を切っているが、エアライン全体での平均は47%となる。もっともネガティブなTweetがされているのはアメリカンエアラインで、約55%だったという。

最近、サウスウエストでは、ブランド企業がTwitterのフォロワー分析や潜在フォロワーの開拓を行えるプラットフォーム「ソーシャルランク(SocialRank)」を採用。Twitterでアクティブな同社のフォロワーを見つけ、コンサートへの参加機会を提供したり、セレブと交流をもてる企画をプレゼントしている。

「こうした企画を考えるのは大変難しいが、これが当たれば、売り上げに結びつくだろう」とミッドキフ氏。

ユーザーを惹きつけること

また、ソーシャルビジネス部門は、リスニングセンター以外にソーシャルカスタマーケア部門も創設。このチームは、オペレーション部門で業務についてのコンテンツを作成するコミュニティマネジメントチームと協働している。

「ソーシャルビジネス」というコンセプトについて、作家のシェリル・バージェス氏はメディアやコミュニケーションをもとにビジネスを創造する術だと定義した。合わせて、組織の中心にソーシャル担当部署を位置付けて成功している社としてアドビ(Adobe)やシスコ(Cisco)などを挙げている。

プラットフォームに関しては、FacebookやTwitterやインスタグラムに力を注いでいると、ミッドキフ氏は語る。また、Twitterのライブ配信サービス、Periscope(ペリスコープ)にも注目しているという。たとえば、エアラインの荷物係や誘導エージェントたちの1日を体験できるサービスを提供できるかもしれない。さらにSnapchat(スナップチャット)やMedium(ミディアム)も忘れてはいない。

「もちろん、もっとも重要なのはそれらを運用するヒューマンリソースだ」とミッデッギフ氏。「活用できるソーシャルプラットフォームはリソースの3倍もある。だからこそ、プラットフォームの運用をいくつはじめても、ユーザーをしっかり惹きつけることに成功しなくては、まったく意味がない」と、ソーシャルメディア活用への期待とリスクを見据えている。

Shareen Pathak(原文 / 訳:南如水)
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