新サイトで高級ブランド獲得に動く、アリババの勝算:取り締まり強化とターゲティング

中国最大のeコマースプラットフォーム、アリババ(Alibaba)が、小売業者向けBtoCマーケットプレイス「Tモール(Tmall)」を、高級ブランドにとって居心地がいい売り場になるようサービスの改善を進めている。

守るべきイメージのあるブランドは、Tモールに対して慎重だ。Tモールでは、絶えずサイトに現れる、安価な高級品のフェイクを売る、ニセの業者との戦いが続いている。アリババがセラーの在庫をもっているわけではないので、Tモールの全商品について真贋を点検することはできない。また、Tモールは大量販売が特徴で、さまざまなカテゴリーの非常に多様なブランドと小売業者がいる。そのため、ビールのブランドからおむつのブランドまで、どんなブランドと高級ブランドが並ぶことになるかわからない。1月時点で、Tモールでは1万4500のブランドが扱われている。

それでも、中国のeコマース売上は急速に成長してきた。今後5年間は、グローバル全体の年間成長が3~4%と低迷すると予測されている高級ブランドとしては、これを無視するのはどんどん難しくなっている。2016年、中国のオンライン売上は一気に26%増加し、7520億ドル(約82兆円)になったが、中国の国家統計局はこの急増の理由を統合型eコマースサイトを有するブランドの数が増えているためだとした。また、世界の高級品販売の3分の1を中国人顧客が占めるなか、この1年間は高級品のショッピングが中国に戻ってきている。ベイン・アンド・カンパニー(Bain & Co.)による2017年の成長予測では、中国の買い物客は、かつては米国やフランスのような外国で買っていたものを、国内で買うようになってきているという。

「ラグジュアリーパビリオン」

そこで、アクティブユーザー数が5億5000万人、2016年のオンライン売上が190億ドル(約2兆円)と報告しているアリババは、中国人顧客に対してオンラインで直接販売したい高級ブランドの取り込みを画策している。そのため8月2日、「ラグジュアリーパビリオン(luxury pavilion)」をTモールに展開。さらにそこでニセ物の売り手へのプレッシャーを強めてきた。

「Tモールと(競合する)JD.comはどちらも本来、マスマーケット向けのプラットフォームであり、高級ブランドは両者を避けている」と語るのは、デジタル調査会社L2でアジア太平洋調査の編集者を務めるリズ・フローラ氏。「巨大な市場シェアゆえに、Tモールでの高級ブランドの人気はやや高いが、それでも採用率はまだ低い」と同氏は話す。

L2のデータによると、現在、(高級ブランドに限定しない)ファッションブランド全体のうち、Tモールに公式ストアがあるのは21%にすぎない。

アリババは、ラグジュアリーパビリオンのローンチで公式ストアの数を増やしたいと考えている。そこでは、アリババの包括的プラン「ニューリテール」の一環として、小売業者やブランドがアリババの大量の顧客データを利用して、そこから価値を得るのを後押しする。このラグジュアリーパビリオンは、それより下のブランドや小売業者、それにニセ物業者といったTモール住人がひしめく場から距離を取ることで、ユーザーインターフェイスを改善したTモール上にある独立した拠点だ。この新サイトで販売するブランドは、アリババによって選ばれる必要があり、ローンチ時は、バーバリー(Burberry)、 ラ・メール(La Mer)、ヒューゴ・ボス(Hugo Boss)、マセラティ(Maserati)、ゲラン(Guerlain)、ゼニス(Zenith)といったブランドが、衣料品、革製品、スキンケア、腕時計、さらには自動車を販売する。

Amazonと似た戦略を採用

また、顧客データベースを駆使して、ラグジュアリーパビリオンにはさらなる限定要素が追加された。過去の購買履歴や、Tモールでの上位購入者だけが入れるアリババ・パスポート(APASS)の会員かどうかなどに基づき、高級ブランドを買いそうなユーザーだけをマシンラーニングを使って選び出す。そのため、高級品を買わないユーザーがTモールを訪問した場合には、何ら変化はなく、通常の商品セグメントが表示される。しかし、高級ブランドを購入していると判明したユーザーには、デスクトップやモバイルアプリのホームページに、高級ブランド商品が表示される。

高級ブランドを別プラットフォームで販売するというのは、ファッション業界への拡大を目指すAmazonと同様の発想だ。Amazonのマーケットプレイスは、高級ブランドにサイトで販売してもらうのに長年、苦労してきた。Amazonは、アリババのように偽造品に苦しんではいないが、Amazon自体がプライベートブランド市場に参入していることが、安心の欠如を強めている。アリババの場合、アリババが在庫を抱えたり商品を開発したりはしないため、高級ブランドは、自社のコンバージョンと顧客データのコントロールを渡す必要がない。

Amazonと同じく、アリババで販売するブランドにとって何より大切な魅力は、トラフィック量とロジスティクスだ。アリババには5億5000万人のユーザーがおり、その一部だが高級ブランドユーザーもたっぷりいる。また、アリババの高級ポータルにアクセスできる顧客に対しては、アリババがマシンラーニングと顧客行動のアルゴリズムを駆使してその顧客の関心にもっとも適した商品を表示する。これは、個別ユーザーによるパーソナライズが行われないTモールのマス向けマーケットプレイスとは異なる。

ニセ物撲滅へのアピール

アリババは、この新しい高級ブランドポータルを準備する一方で(2017年中に正式ローンチの予定)、偽造品問題に取り組んでいることをブランドに納得してもらえるように、ニセ物の取り締まりに余念がない。2016年は、4億3700万ドル(約477億円)相当の偽造品を没収したが、この額は2015年の2倍になる。偽造品掲載の取り消しも2015年から26倍に増えた。

「アリババは偽造品の取り締まりに成功しているとブランドに納得させるため、ブランドがニセ物を報告するプログラムや、人目を引く訴訟などに取り組んでいる」と、フローラ氏は述べる。「(その一方)JD.comは、アリババのプラットフォームにおけるニセ物の数に不満のあるブランドを引き込むため、偽造品に対する厳しい姿勢をアピールしている」。

JD.comはまた、新しいパートナーシップの選択でも、アリババと張り合っている。JD.comは6月、高級ブランドをさらに味方に引き入れるため、高級ブランドのグローバルなマーケットプレイスであるファーフェッチ(Farfetch)に3億5000万ドル(約382億円)を投資した。L2によると、ファーフェッチでは、中国で手に入る高級ブランドの83%が売られている。

Hilary Milnes (原文 / 訳:ガリレオ)
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