ホーム・デポはなぜ、Amazonの脅威にさらされないのか?

ファッション小売店や百貨店にとってAmazonは非常に大きな脅威となっているが、住宅リフォーム・建設資材・サービスの小売チェーンであるホーム・デポ(Home Depot)にとっては違っているようだ。多くの小売ビジネスが店舗を閉じているなか、ホーム・デポは今年記録的な売上を見せている。

アメリカ、カナダ、メキシコにおいて2200店舗を展開しているホーム・デポは先月、第1四半期売上が約280億ドル(約3兆1000億円)であったと報告。これは前年の同時期と比べて6.2%の増加となっている。そして昨年と比べて同一店舗売上高も6.3%の増加を見せているという。それでもAmazonの影響が小売業界すべてに拡大することを恐れた投資家たちは、ホーム・デポの価値を3%減らしている

ほかの小売業界と比べて、住宅リフォーム業界はAmazonの影響から少し外れているように見える。小売業界の専門家たちによると、これは高価な商品は店舗内で実際に見て、触ることを消費者たちは求めているからだという。しかし、ホーム・デポの成功の理由はそれだけではない。彼らの力強いデジタルオペレーション、そして業者(建築業者、不動産管理者、共同住宅のオーナー)にフォーカスしていることも成功に寄与しているという。

メイン顧客の3~4割は業者

エージェンシー、サピエント・レイザーフィッシュ(SapientRazorfish)のコンテンツコマース部門シニアバイスプレジデントであるジェイソン・ゴールドバーグ氏は次のように語る。「これまでの歴史を見ても、板といったプロダクトは配達が難しく、またオンライン販売で利益を上げることも難しいため、ホーム・デポはAmazonの影響を免れてきた。そして彼らはデジタルで良い仕事をしている。たとえば、ハウツーもののチュートリアルといったオンラインコンテンツに、早い段階から取り組んできた。またオンラインで購入した商品を店舗で受け取ることもできる」。

住宅の修理が必要なときはすぐに対応することが必要だ。だがオンライン注文ではそれを達成することができないと指摘するのは、リテールエージェンシーであるセオリーハウス(Theory House)のプレジデントを務めるジム・カッソン氏だ。「もしも私が水道の蛇口を買いたければ、実際に手に握ってサイズに納得できるか見てみたいと思うだろう」と、彼は説明する。ホーム・デポ店舗内の体験は意図的に、電気技師や建築業者といった専門業者を意識して作られている。作業用照明や、材料の大量販売、そして建築素材もバリエーションが揃えられている。ホーム・デポの最大の競合他社であるロウズ(Lowe’s)は一方で、一般的な消費者をターゲットにしている。

カンターリテール(Kantar Retail)のリテール分析部門ディレクターであるローラ・ケネディ氏によると、ホーム・デポの売上の30〜40%が業者によるものだという。一方のロウズは、25〜30%だ。ホームデポのCEO兼プレジデントであるクレイグ・メニア氏は5月の収支報告で、第1四半期においてDIY消費者よりも業者による売上のペースが上回ったと報告した。

デジタルへの素早い対応

ホーム・デポは、2016年末に2〜4時間の間隔で配達を行うというデリバリープログラムを開始したが、これも業者のニーズに応えた形だ。メンテナンス、修理、そしてオペレーション(MROと呼ばれる)プロダクトの全国的な流通業者であるインターライン(Interline)を2015年には買収している。インターラインを経由する業者の顧客は、インターラインのアカウントを利用したスワイプカードを使って、ホームデポで買い物ができるようになるとメニア氏はいう。

「ホーム・デポはMROモデルを真っ先に開始した。いまではロウズもそれを行っている」と、ケネディ氏はいう。

モバイルをちゃんと理解できている小売チェーンは少ないが、ホーム・デポはそこでも強みを見せているとケネディ氏は語る。たとえば、アプリを使ってどの商品がどの店舗にあるか地図上で簡単に確認することができるのだ。さらにはAR(拡張現実)機能もアプリに追加された。これを使えばドアや鏡台といった大きなアイテムが自宅に設置するとどのように見えるのかが確認することができる。

いまでは、ホーム・デポのマーケティング全体予算の半分以上をデジタルが占めていると、先月の収支報告でマーチャンダイジング部門エグゼクティブバイスプレジデントであるテッド・デッカー氏は語った。またGoogleホームを通して住宅リフォーム商品を音声で注文できるようなサービスにも取り組むと先週発表した。

しかしAmazonの脅威は健在

その一方で、ホーム・デポの好成績の理由を別のところに見ることもできる。小売業コンサルティング会社マジッド・アソシエイツ(Magid Associates)の小売部門シニア・バイスプレジデントであるマット・サージェント氏は、ホーム・デポの成功の一因は住宅市場の回復、そして新規の住宅購入者の増加にあるという。「経済は回復しつつある。大手量販店のターゲット(Target)やロウズなどほかの小売業者でも大きな成長が見られている」と、同氏は語った。

しかし、リテール分野のエグゼクティブによると、これまで家庭電化製品カテゴリーがAmazonの脅威から守られてきたからといってホーム・デポが永遠に安全な地位にいるわけではないという。7月には米大手百貨店のシアーズ(Sears)が自社レーベルであるケンモア(Kenmore)電化製品を、Amazonを通して販売するという契約を結んだ。シアーズはまた、Alexa(アレクサ)を通して音声コントロールできるスマート家電のラインナップをローンチしつつある。

ケネディ氏は「(シアーズの)契約がホーム・デポにすぐに影響を与えるとは思わない。しかし、消費者の信頼をもつブランドと協働して、Amazonが侵入してきている。電化製品は注意しなければならない分野になった」と述べた。

Yuyu Chen(原文 / 訳:塚本 紺)
Image courtesy of Home Depot