パナソニックにとって、欧州「GDPR」は何を意味するか?:B2Bマーケテイングの事例

欧州「一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:以下、GDPR)」の施行が2018年5月に迫るなかで、頭を悩ませているのはBtoCのマーケターばかりではない。BtoBのマーケターもまたそれなりの課題を抱えている。

パナソニックの場合、その課題は、同社の既存の法人顧客33万社を、要望に応じてメールや電話でのマーケティング対象からいつでも外せるようにしておくことだ。BtoBのマーケターはBtoCのマーケターとは異なり、GDPR施行下でも、データベースにすでに登録されている全員にデータの利用許可を求める必要はない。

これは、GDPR施行後に同意が必要とされないケースの典型だ。パナソニックのような総合電機メーカーは、既存の法人顧客に関連製品のマーケティング資料を送る場合、「合理的関心」の存在を法的根拠として、法人顧客データを利用できる。そうした顧客を希望に応じてマーケティング対象からいつでも外せるようにしておけば、同社によるメールや電話でのマーケティングは、法的に問題がない。

優先するのは「顧客体験」

注意しなければならないのは、やはりパナソニックを例にすると、法人顧客データが広報、営業、製品保証登録などの異なる部門にばらばらに保存されている場合だ。同社はこれまでにも、自動化された従来システムにより、自社のマーケターに現行のEUプライバシー関連法への準拠を徹底させてきた。

そしていま、マーケティングオートメーションを手がける企業マルケト(Marketo)の協力を得て、パナソニックによるデータの保存および利用に同意した企業の記録を集約する新システムを導入している。これにより、2018年5月のGDPR施行後、法人顧客が自社に関してパナソニックが保有する全データの開示を求めた場合、パナソニックはこのシステムを通じて保有するデータの内容や社内の保存場所を開示できるうえに、必要に応じてその法人顧客への資料送付をやめることもできる。

法律上は、複数の社内データベースに分散している法人顧客データをばらばらのままでその法人顧客に開示しても、問題はないかもしれない。だが、それは「顧客体験としては最悪だ」とパナソニックの欧州BtoB事業のマーケティングディレクター、スティーブン・イェオ氏は語った。「法人顧客が我々からの告知を望まない場合、その意向を可能な限り簡単に我々に伝えられるようにしていく。もちろんほかの問題にも、我々のシステムで対応できるようにする」。

データの破棄は惜しまない

GDPR施行後はデータ利用の事前許諾が必要となるため、パナソニックは現在、将来の新規顧客から同意のうえでデータを受け取る方法について、調整を進めている。ここは、同社が慎重に慎重を重ねている部分だ。実質的には、同社は将来の新規顧客に対し、「弊社に関心がある場合は、データの保存と利用に同意してください。さもなければ弊社はお客様にご連絡を差し上げません」などと言わなければならないと、イェオ氏は語った。「マーケティングは必然的に、押しが弱くなる。個人的には、それは良いことだと考えている」。

GDPRの準拠でもっとも困難なことは、異なる地域やオフィスをまたぐデータの管理だとイェオ氏は語った。GDPRに準拠していない契約の記録がひとつでも存在すると、その企業全体が処罰対象になる。同社の顧問弁護士らは同氏の率いるチームに対し、実際に罰金を課されることになるのは何度もGDPRに違反した企業だけだろうとアドバイスしているが、しかしブランドの評価にかかわるかぎり、保有する顧客データの破棄を惜しんではいられない。同氏のチームは現在、すべての顧客データをチェックすることで6年以上コンタクトがない顧客の特定を進めており、そうした顧客のデータの削除を検討している。

Seb Joseph(原文 / 訳:塚本 紺)