マーケ業界で、2016年に「緊張が高まる」5つの対立とは?

本記事はエージェンシーであるポッシブル(Possible)のグローバルCEO、シェーン・アッチソン氏からの寄稿である。

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もはや、この時期になると来年の12カ月を予想することがお決まりとなっている。一方で、これらの予想が大抵の場合は当たらないということに気づいている人は私だけではないだろう。少なくとも私の予想もあてになった試しがない。

これは私だけではないはずだ。たとえば、家電ショーなどで「最優秀賞」を獲得した商品のパッケージの裏を見たことがあるだろうか? 私が知る限り、最優秀賞を獲得した商品にはPalm社の「Pre」、Motorola社の「XOOMタブレット」やZen社のミュージックプレーヤーである「Vision」などがある。これらが専門知識がある者たちによって選ばれているとは思えない。

私は2016年にヒットするものを予想するつもりはない。その変わり、今後の業界でのキャリア、ビジネス全体や生活面で役立つ5つのトレンドを紹介したい。この内のいくつかは将来に期待がもてるが、いくつかは正直、業界の構造を脅かすものもある。しかし、これらはすでに大きなインパクトを与えていて、今後は成長する見込みしかない傾向のものばかりである。

ロボット vs. 人間

まずはこれから業界が直面するテクノロジーの脅威から始めてみよう。現在、さまざまな業界での仕事はすでに人間ではなくロボットが行うようになっている。AP通信を例に挙げると、現在彼らは記事や財務報告書をソフトウェアで作成している。また、Facebookは、Messengerアプリに「M」というデジタルパーソナルアシスタント、いわゆるAIを実装計画している。

今後、このようにして人間が行っていた仕事をロボットに任せていくことで、現実の世界が受けるインパンクトもさらに大きくなるはずである。また、業界全体が入れ替わってしまった事態もある。WebブラウザのMosaicやNetscape Navigatorを開発したマーク・アンドリーセン氏によると、CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)が、IT業界のビジネスモデルに大きな変化をもたらした最たる例だという。このような変化は今後見守らなくてはならないトレンドだ。

能力 vs. 資格

雇用も難しくなってきている。これまで、私の業界では資格を重視し、才能を育成させるために徒弟教育を行ってきた。大学の一般教養学部の学生を雇用し、時間をかけてコピーライターやアカウントマネージャーなどに育てていたのだ。それが、最近ではすでに自ら能力を磨き、たとえキャリアがなくても即戦力となるような人材を多く雇用するようになってきている。

もしあなたがスポーツ動画を撮影できる人、インスタグラムで面白い投稿をし、アカウントのマネジメントができる人、または、ヘアアーティストやメークアップアーティストを探している場合、最適な人材は普通に学校に進学している人たちではないかもしれない。そのような貴重な人材は、もしかすると自身の実家の地下に住み、独学で技術を磨いているかもしれない。これは今後、私たちがどこで才能を発掘し、人材を確保するのかに大きな影響を与える。

利便性 vs. 信頼

10年前、私たちはオンラインショップへクレジットカード情報を渡すことに恐怖を覚えたが、すでにそんな恐怖は忘れてしまっている。いまや多くの人々はプライバシーより利便性を選び、AmazonやTargetに大量の個人情報を渡している。企業や政府が個人をターゲットとするため、信頼と利便性の間に緊張状態が発生している。

ここで実際の例をあげてみよう。私の友人が車の購入を検討していたときの話だ。友人が車両販売会社の問い合わせフォームにeメールアドレスを載せたところ(電話番号は記載しなかった)、1時間後に販売員から電話がかかってきたのだ。この企業は友人のeメールアドレスと公共のデータと組み合わせ、電話番号を入手した。

これは良くない。企業は、利便性を高めるために顧客データを使用しなくてはならないが、顧客との関係性を築き、また管理するには細心の注意を払わなくてはならないのだ。

費用とUX vs. 実用性

2年前、皆が現在までには住宅は自動化していると予想していた。携帯電話などで照明を点けたり、カギを閉めたり、調理ができるようになると考えていたのだ。しかし実際には、それらの技術の採用が遅く、実現はできていない。その理由のひとつに照明やカギ、調理などの自動化が、あまり大きな問題ではないことがあげられる。

また、そのわりにコストがかかりすぎるという理由も考えられる。デバイスの設置やシステムを覚えるのに時間がかかってしまうのだ。費用とユーザーエクスペリエンス(UX)のバランスや、そもそもの実用性についてさまざまな意見が交わされている。ブランド企業は、ひとつの物事を解決するために新たな問題を作らないことを肝に銘じる必要がある。

デジタル vs. 現実世界のつながり

最近、社内の2人の部長が、アメリカの歴史ある友愛団体でソーシャルクラブの「Elks」に登録した。私の父ならば分かるが、まさかデジタルエリートである友人たちが登録するとは思わなかった。2人に話を聞いたところ、2人とも現代社会に寂しさを感じ、人との実際の交流を求めていたという。ソーシャルメディアを生活に受け入れ、デバイスに依存するように私たちの生活は、人とのコミュニケーションを失った。今後も、デジタルメディアによって作られるエンターテイメントの無限の可能性と、リアルな人間関係や会話とのあいだに生まれる壁は、高まるだろう。

これらの物事が実際にどうなるかは、未来だけが知っている。未来予想は読みものとしては面白いだろうが、私が今回紹介した2016年のトレンドにも注目してもらいたい。これらのトレンドが未来を形成していくのは間違いない。

Shane Atchison(原文 / 訳:BIG ROMAN)