相次ぐベンチャー買収で、ユニリーバが思い描く未来図:統合の時代を迎えた消費財業界

消費財(CPG)大手のユニリーバ(Unilever)がセブンスジェネレーション(Seventh Generation)の買収を発表した。バーモント州を拠点とするセブンスジェネレーションは、エコフレンドリーな洗剤で知られるブランドだ。

今回の買収は、ブランドポートフォリオを拡大し、特定の分野におけるリーチを拡張しようとするユニリーバが仕掛けた最新の動きだ。その前には、ヒゲ剃りのサブスクリプションサービスを提供する新興企業ダラーシェイブクラブ(Dollar Shave Club)を7月に買収している。ユニリーバはさらに、消費者製品の小売を手がけるオネストカンパニー(Honest Co.)の買収にも興味を持っているという報道が飛び交っている。

消費財業界は統合の時代に

eコマース分析企業プロフィテロ(Profitero)で戦略およびインサイト部門担当のシニアバイスプレジデントを務めるキース・アンダーソン氏は次のように述べている。

「ユニリーバは関連性の高い新規分野に参入すると同時に、大手ライバル企業が『破壊的プレイヤー』を獲得したり無力化したりするのを阻止して、同社が今後10年以上にわたって現在のポジションを維持するためのチームとツールを獲得しようとしている。いま、CPG(消費財)業界は統合の時代を迎えている。この業界で今後1年半のうちにさらに多くの買収が行われても、驚くには値しないだろう」。

ダラーシェイブクラブとセブンスジェネレーションの買収は、どちらも消費者製品業界がデジタル世界で直面する困難を明らかにする何よりの証拠だ。基本的に、ユニリーバなどの巨大CPG企業は、デジタル世界の目まぐるしい変化に十分な素早さで順応できていない。市場は、インカンベント企業(すでに市場にポジションを築いている企業)のやり方で対応できる以上の速さで動いており、今日のすべての消費者カテゴリーにおいて製品が仕入れ、発見、販売される方法には著しい変化が生じている。

外部の力を吸収して拡大

こうした課題に直面するユニリーバなどのブランドには、2つの選択肢がある、と小売業界カンファレンス「ショップトーク(Shoptalk)」のチーフリテールストラテジスト、スチャリタ・ムルプル氏は語る。製品とプロセスを内部から迅速に一新するか、イノベーションを可能にする新規あるいは近接分野の企業を外部から買収するかのどちらかだ、というのだ。ファウンドリー(Foundry)という社内スタートアップアクセラレーターにも投資してはいるユニリーバだが、社外にイノベーションを求めざるをえない状態が続いている。

ブルームバーグ(Bloomberg)が9月16日付けで報じたところによると、ユニリーバの最高経営責任者(CEO)ポール・ポルマン氏は「革新的な企業は内部と同程度に外部に可能性を求めなければならない」とインタビューで語っている。また同氏は、ユニリーバはダラーシェイブクラブのような企業をさらに買収する意向であるとも語り、「我が社の将来のイノベーション能力を生み出す中心的なインキュベーターは、内部よりも外部にいる可能性が大きいと私は見ている」と述べている。

かねてよりユニリーバは、パーソナルケア製品分野への参入を試みてきたが、その分野は近年、同社のライバルであるプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)が握っている。タフツ大学フレッチャースクールのバスカー・チャクラボーティ教授がハーバード・ビジネス・レビュー(Harvard Business Review)の記事ので指摘しているように、この動きは、ユニリーバが最近見せているブランドとカテゴリーの入れ替え、およびスタンダード&プアーズとMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)の両指数における「加工食品」部門から「個人用品」部門への移動からも見てとれる。

求めるのは圧倒的な成長

ダラーシェイブクラブ、そして今回のセブンスジェネレーションの買収により、ユニリーバはいま、P&Gとの争いで戦力になりうるCPGブランドからなる多様なポートフォリオに真っ直ぐ狙いを定めた。

「ユニリーバのような規模の企業にとって、小さな賭けをすることは意味をなさない。求められているのは圧倒的な規模の成長だからだ。業界内のチャレンジャーブランド(トップブランド以外のブランド)を獲得し、それを10億ドル(1000億円)規模のビジネスから、50~100億ドル(5000億〜1兆円)規模のビジネスに変えるほうが理にかなっている」とショップトークのムルプル氏は語る。

インカンベント企業が、まだ比較的小さいうちにライバル企業を吸収しようとするのは珍しいことではない。ダラーシェイブクラブもセブンスジェネレーションも(そしてオネストカンパニーも)それぞれの業界に大きな影響を与えてきた。前者は、他社と比較して何分の1かの値段でヒゲ剃りの替刃を販売するサブスクリプションサービスを提供することによって、後者は、環境問題に取り組むという目的に導かれた強力なブランド像を確立することによってだ。

流通にもたらされた革新

ユニリーバでホームケア部門のプレジデントを務めるニティン・パランジピ氏は、「セブンスジェネレーションを獲得したおかげで、ユニリーバは目的を持った高品質な製品に対して高まる需要に応えられるようになるだろう」と語る。また、プロフィテロのアンダーソン氏は、「こうした買収が、市場を上回るペースで成長する、若くてファッショナブルなブランドを象徴している」という。

デジタルは、これまであった小売業者と供給業者の関係を変え、両者のあいだに著しい重複を生じさせた。いま、小売業者が独自ブランドを確立しようとする一方で、供給業者とブランドは消費者に直接リーチする新たな方法を考案しつつある。

P&Gやユニリーバのようなレガシー企業は依然として、この変化する状況を切り抜けるのに苦労しているが、ダラーシェイブクラブやオネストカンパニーなどの新興企業は、直販型ブランドの確立に成功している。こうした新興企業はソーシャルメディアを通じて消費者とのデジタルコネクションを築き、それを活用してマーケティングだけでなく、製品の販売も行っている。彼らは製品だけでなく、流通の最前線にも革新をもたらししつつあるのだ。

「アクハイアリング」という目的も

エージェンシーのレイザーフィッシュ(Razorfish)でコマースおよびコンテンツプラクティス部門のシニアバイスプレジデントを務めるジェイソン・ゴールドバーグ氏は次のように述べている。

「彼らはデジタルネイティブの垂直統合型ブランドだ。こうした企業を買収する理由のひとつは『アクハイアリング』(「買収」と「採用」を組み合わせた造語。人材の獲得を目的とする買収)にある。このアクハイアリングがデジタルネイティブ度の高い優秀な人材を組織にもたらし、その不足を埋める力になる」。

Tanya Dua (原文 / 訳:ガリレオ)
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