モバイル普及で加速する「中小企業」のグローバル化:いまや新興国の保有率は90%!

日本の中小企業は、国内企業数の99.7%を占め、雇用の約4分の3を提供している。少子高齢化が進むなか、国内市場だけではジリ貧のため、中小企業の海外進出ブームは起きた。

Facebookは2015年11月9日、東京ミッドタウンで中小企業向けカンファレンス「Facebookマーケティング・ブートキャンプ」を開催。そこにおいて、中小企業のグローバル化と外国人観光客の急拡大をめぐって議論がなされた。

イベントにおいて国際大学GLOCOM准教授の庄司昌彦氏は、モバイルの保有率が先進国で120%(2台持ちを含む)、新興国でも90%以上に達したと主張。また新興国では、モバイルを保有した消費に対して積極的な若年層が人口動態の主要な部分を占めているとし、日本の中小企業が新興国に進出するファシリティを与えているとの見方を示した。

グローバル化が進む、日本の中小企業

民間企業の事例として取り上げられたのは、岩手県奥州市のバイオ企業「ファーメンステーション」。同社の酒井里奈社長は、耕作放棄地を開墾して育てたコメから、消臭スプレー用のエタノールを製造する事業を起業。通常の製品に比べ、格段に高価な商品を無農薬のオーガニックものとして付加価値をつけた。

中小企業にとって難関となりやすい販路の開拓には、FacebookページやWebメディアでの記事掲載などネットを活用。日本語と英語両方で発信することで、国内外の人が同社を訪れるようになったという。そのおかげで、キャロライン・ケネディ駐日米国大使が同社を表彰し、クールジャパンのプロジェクトにも採択されている。中小企業がデジタルマーケティングで活路を見出した例と言えそうだ。

NPO法人横浜コミュニティデザイン・ラボ代表理事の杉浦裕樹氏は地域活性化の事例として登壇。杉浦氏は自身が編集長を勤める「ヨコハマ経済新聞」を軸に、横浜の行政とコミュニティ形成やコワーキングスペース、FabLab Kannaiなどを展開する。杉浦氏にとって、Facebookなどのソーシャルメディアが活動の鍵だ。「管理人になっているFacebookページは60個、管理しているFacebookグループは62個もある」。杉浦氏は、1999年頃に始まった渋谷発のネット企業ブーム「ビットバレー」の「裏方を務めていた」という。

スマホの普及が状況を変えている

JETRO(日本貿易振興機構)総務部総務課長の北川浩伸氏は、世界的なスマートフォンの普及が中小企業の海外進出環境を大幅に変えていると指摘。「Webカメラで海外店舗の様子をみて、来客が少ないようだったらFacebookでクーポンを配るなど、さまざまな施策ができる」。衆議院議員の平井たくや氏(自民党IT戦略特命委員長)は中小企業のグローバル展開について「結構行き当たりばったりの人が成功している。パッションがある人がいい。海外のパッションのある人と合うからだ」と話した。

円安とビザ緩和に支えられたインバウンドも好調を続けている。日本政府観光局(JNTO)によると、外国訪日客は2015年累計(1~9月)で、前年同期比48.8%増の1448万7600人。9月10日時点で2014年の年間の訪日客数(1341万人)を上回っている。高級ホテル予約サイト「relux」は、海外の日本旅行に興味がある層にFacebookで広告を打ち、集客につなげている事例を紹介。観光業界はWeb広告により為替などの外的要因に左右されない、集客力をつくる必要がある。

中小企業こそデジタルマーケティング

「中小企業には課題がある。販路の拡大だ」。Facebook Japan執行役員SMB(中小企業)事業担当の井上英樹氏は語った。この課題の解決策として、Facebook広告を提案した。実名登録制によりターゲティングの精度が高く、数千円のスモールスタートが可能な商品と説明。Facebookページから会員登録を行えるようにするリード獲得広告、位置データをもとにして、実店舗近くにいる潜在顧客に「いますぐ電話する」だったり、到達経路を紹介する「近隣エリア広告」。インスタグラム広告などを紹介した。

井上氏はFacebookはユーザーがモバイルにシフトする傾向にもマッチしているとした。Facebookは2015年第3四半期決算において、広告売上が43億ドル(約5160億円)に達しており、モバイル広告の売上は34億ドル(約4194億円)で広告売上の78%を占めた。アジア太平洋地域SMB事業責任者のアンディ・ファン氏は「ブートキャンプ(Boot Camp)のようなイベントは初めて。海外に向けて情報発信したい中小企業を支援したい」と語った。

しかし、国によって戦略も異なる

企業の海外進出の動きは近年中国に対するものが盛んになり、東南アジアを含んだ「チャイナ・プラス・ワン」へとシフト。昨年のナレンドラ・モディ政権の誕生により、インドが注目されているなど、視線が西へ広がっている。2020年までに世界の成人人口の80%がモバイルを持つという予測があり、中小企業の進出を助けるかもしれない。

しかし、ネットの利用法、ユーザーの性質は各国でさまざまなため、日本や欧米で成功した事例が、アジアなど新興国でそのまま適用できるとはかぎられない。中国がその端的な例だ。共産党が厳しく監視する世界2位の国内総生産(GDP)のネット空間では、Facebook、Googleともに利用できない。

Facebookの中小企業へのアプローチは、同じく低予算から開始可能なリスティング広告(検索連動型広告)を提供する、Googleアドワーズの商圏とぶつかりそうだ。デジタル広告において、FacebookがGoogleのシェアの一部を絡めとるとの予測もあるが、Twitter、ピンタレストなど後続勢も追いかけている。

written by 吉田拓史
photo by Thinkstock / Getty Images