インテル、「インスタント記事」を活用するブランド第1号に:「我々はパブリッシャーになることを目指す」

マーケターとパブリッシャーの区別はますます曖昧になりつつある。

1年前にインスタント記事(Instant Articles)を開発して、パブリッシャーが発行する記事の読み込みを高速化したFacebookは現在、そのツールをブランドにも提供。これを利用する最初のブランドが米IT大手のインテル(Intel)で、同社は先日からインスタント記事として、テクノロジーカルチャーマガジン「iQ」のコンテンツを投稿しはじめた。

2012年に開設された「iQ」は現在、17の言語に翻訳されて、それぞれのエディションが世界中で発行されている。米国で運営に当っているのは、インテルの社員3名と契約社員。インテルによると、米国版は週に7~10本の記事が投稿され、月に100万~500万人の読者にリーチしており、その大半が有料のソーシャルディストリビューションを介したものだという。

「iQ」の目標は、「インテル」といえば「最先端の技術」を連想してもらうことだ。同社に対するPCメーカーという認識を、クラウドコンピューティングやコネクテッドデバイスの開発に取り組むテクノロジーブランドへと変えようとしている。

いまのところテスト段階

インテルでデジタルマーケティングおよびメディア担当のバイスプレジデントを務めるベッキー・ブラウン氏によると、「iQ」はリーチの大半をFacebookから獲得しているため、インスタント記事はうってつけだったという。同誌は記事の半分をこの方式で発行することを計画しており、従来型のパブリッシャーと同様に、インスタント記事のエンゲージメント率を通常の投稿と比較して、その使用を拡大すべきかどうかを検討している。

インスタント記事で公開された「iQ」コンテンツの1本「エクストリームスポーツの科学をファンに紹介するエックスゲームズの技術」

インスタント記事で投稿された「iQ」コンテンツ

「一般ユーザーに対する全体的なエクスペリエンスは向上している。しかし、我々は手を広げ過ぎないよう、やや慎重に事を進めている」とブラウン氏は語る。

ブラウン氏によると、インスタント記事への移行はインテルがFacebookと行った数回の会談から生じたものであり、Facebookにおける長年に渡る経験(インテルは、ダークポスト[非公開の投稿]から自動再生動画、写真投稿まで、フォーマットの実験を長らく行ってきた)を基礎としているという。

「我々は優れた実例を提示した。この実感こそが、すなわち顧客にとってエクスペリエンスの大幅な向上だろう。公開する記事から得られるエンゲージメントとフィードバックに基いて、インテルはパブリッシャーであると自負している」。

インスタント記事をめぐる事情

いまのところ、インテルはインスタント記事でコンテンツを公開している唯一のブランドだ。しかし、Facebookはブランドがこのツールを利用することを制限する明白なルールを設けていない。Facebookが唯一気にかけているのは、その組織がすでにパブリッシング業務を手がけており、基準を満たすコンテンツを定期的に公開するかという点だけだ。

多くのマーケターが独自のコンテンツを制作する一方で、インテルのようにパブリッシング専門の部署を置く企業は減ってきている。Facebookは、定期的な配信を行わないマーケターのために、従来型パブリッシャーのインスタント記事を介したスポンサードポストや、ニュースフィードに表示されるマルチメディア広告「キャンバス広告」など、広告を出すための方法をほかにも考案してきた。

従来型のパブリッシャーから見ると、インスタント記事は多くの問題を抱えている。記事をマネタイズする手段をなかなか提供してくれなかったからだ。また、多くのパブリッシャーが、広告売上やユーザー体験を完全にコントロールできる自社サイトにユーザーを呼び戻したがっている一方で、インスタント記事はユーザーをFacebookのアプリ内にとどめておくようにデザインされている。

媒体社を目指すインテル

インテルは、「iQ」の記事を広告によってマネタイズしたり、必ずしも読者をサイトに呼び戻したりする必要はないという点で、ほかのパブリッシャーと異なっている。同社の狙いは人々に記事を読んでもらい、インスタント記事を活用して、メールによるニュースレターへの登録を促すことだ。

いまのところソーシャルトラフィックの大部分は有料のものだが、もしインスタント記事がより強力なエンゲージメントにつながるのであれば、インテルがソーシャルディストリビューションに注ぐ支出を減らすという選択肢もある。

ブラウン氏は、トレードマークである稲妻のアイコンをつけて、インスタント記事で従来型のパブリッシャーたちとともに「iQ」のコンテンツを配信することがきっかけとなり、ユーザーたちがインテルをパブリッシャーとしても認識してくれるようになればいいとしたうえで、次のように語った。

「我々は真似事ではなく、本物のパブリッシャーになることを目指す。今回の移行は、インテルがただの広告主ではないことを伝えるための絶好の機会だ。インテルは、話題となっているテーマや、文化運動、人々が関心を寄せる事柄に関連するコンテンツを配信している」。

パブリッシャーの懸念

マーケターがインスタント記事に参入すると、従来型のパブリッシャーはFacebookにおける自分たちの地位が弱体化するのではないかと懸念するかもしれない。しかし、その心配はない──少なくとも、いまのところはまだ。

米ジャーナリズム研究機関のアメリカン・プレス・インスティチュート(American Press Institute)でエグゼクティブディレクターを務めるトム・ローゼンスティール氏によれば、ユーザーがブランデッドコンテンツを本物の記事と間違えることはないという。ただし、サードパーティのサイトにブランデッドコンテンツが公開されることで、その状況が変わるかどうかはまだわからないそうだ。

まだパブリッシャーは、ブランドエクイティやオーガニックリーチ、パブリッシングの経験などの点で、Facebookにおいてマーケターよりかなり優位に立っていると、米PR企業エデルマン(Edelman)のチーフコンテンツストラテジスト、スティーブ・ルーベル氏は指摘する。ルーベル氏は、インスタント記事に配信することでブランドが失うものは何もないが(事実、クライアントにはそうするようにアドバイスしてきた)、Facebookにパブリッシャーを使ってスポンサードコンテンツを配信するほうが賢明だ、と語った。

同氏は、「スポンサードコンテンツがもたらす大きなメリットのひとつは、メディアブランドと密接に関わっていることから得られるハロー効果だ。どのブランドも、それがブランデッドコンテンツだという事実を克服しなければならない」と述べている。

Lucia Moses (原文 / 訳:ガリレオ)