柴犬まるは世界2位! ペットインフルエンサーにブランドが首ったけの理由

2015年9月、ロニ・エドワーズ氏がニューヨークのスターバックスで、アイスパッションティーのベンティを片手に「クロエ」を連れて席に着くやいなや、ひとりの女性が駆け寄り、写真を撮りはじめた。クロエはソーシャルメディアの新しいスターになった小型のフレンチブルドッグで、インスタグラムのフォロワー数は12万3000を超えている。

「クロエは有名なのだと実感したのはその時だった」と、エドワーズ氏は語る。

ペットの世界のインフルエンサーはクロエだけではない。ブランドはたくさんのペットを広告キャンペーンに起用しており、エドワーズ氏は自称「ステージママ」としてマネジメントを行っている。クロエはわずか2年半の間に、バドワイザーのスーパーボウルCMへの出演、高級リゾートホテルで開催されるイベントへの参加、写真モデル、そしてヴォーグ(Vogue)、マーサ・スチュアート(Martha Stewart)、バーニーズ(Barneys)、ボウ&ドレイプ(Bow & Drape)、ペットスマート(PetSmart)といったブランドとコラボを果たした。

エドワーズ氏は、「人々は生まれながらに、ペットがフワフワで暖かい幸せな気持ちをもたらしてくれると知っている。ブランドが接触してくるようになったのは、ペットが本当に人々を幸せにしてくれるからだ。ブランドは広告で人々に幸せになることを望んでいる」と、語る。

ペットインフルエンサー戦国時代

クロエだけなのかというと、ぜんぜん違う。たとえば、ペットのインフルエンサーをランキングしているサイト「furcard.com」によると、インスタグラムのフォロワー数240万超を誇る、日本の柴犬まる(@marutaro)は世界第2位だ。

ハーゲンダッツの投稿に登場した柴犬まる

そのほかにもキングチャールズのトーストネコのナラオオカミ犬のロキフレンチブルドッグのサー・チャールズ・バークレーなど、クロエの4本足の友人たちが、取り巻きを引き連れて写真撮影やブランドとの契約などに日々飛び回り、1契約あたり2000~3500ドル(約20万〜35万円)を稼いでいる。

こうしたムーブメントを支えているのは、Webのビジュアル化の高まりだ。Facebookやインスタグラムといったプラットフォーム上の写真の力で、ペットたちは誰もがその姿を見ればわかるスターになった。グランピーキャットのナラなど、インスタグラムにアカウントをもつペットのトップ5は、いずれもフォロワー数が100万を超えている。ナラは例外的な存在ではまったくなく、時代の先駆者であったことが明らかになった。ペットのインフルエンサーたちがスカーフを身につけるだけで、大量のいいね!を獲得できる時代だ。これに大手ブランドが関心を示したのは、当然のことなのかもしれない。

ブランドが求める「完璧な公式」

インフルエンサーマーケティングを行う企業スピーカー(Speakr)の創業者でCEOのマルコ・ハンセル氏は、「要するにソーシャル・ミームとペット・ミームというふたつの大きなトレンドを融合させているわけだ。まさに完璧な公式だ」と、語る。

エージェンシーであるデジタスLBi(DigitasLBi)のソーシャル戦略担当シニアバイスプレジデントであるジル・シャーマン氏は、こう言っている。「そんなペットが自分たちの力で膨大な数のフォローを集めている。ブランドがペットを有名にしているのではなく、その逆だ。面白くて新しいコンテンツを絶えず更新し続けるというプレッシャーから、ブランドはあらゆる形の影響力とリーチを探している」と、シャーマン氏は言っている。

ジェットブルー航空(JetBlue)は2015年8月、ニューヨークにあるジョン・F・ケネディ国際空港の5番ターミナルのセキュリティ通過後の屋外レクリエーションエリアに、旅行者とペットのための「ウーフトップ(Wooftop)」広場を開設したが、その際、イヌのマーニーなど数匹のインフルエンサーの協力を得た。


JFKの「ウーフトップ」で佇むイヌのマーニー

また、ユナイテッド航空は、2015年のクリスマスキャンペーンで、フレンチブルドッグのサー・チャールズ・バークレーを起用。最近では、オオカミ犬のロキが、メルセデス・ベンツの2017年GLSクラスSUVのための仮想現実キャンペーンに起用された。

ベンツSUV撮影時のオオカミ犬ロキ

「我が社のブランドストーリーを伝えられるよう、いろんなインフルエンサーと協力してさまざまな方法を常に試している。しかし、ロキとロキのストーリーはうちのSUVポートフォリオにとりわけよくマッチした。会社の調査によると、たくさんのSUV所有者がペットを飼っている」と語るのは、メルセデス・ベンツUSAのマーケティングサービス統括マネージャーであるマーク・アイクマン氏だ。

Animal_influencers-FINAL-155x1024アメリカペット用品協会(APPA)は、2015年のペット支出が600億ドル(6兆6000億円)を超えていると推測しているが、近年ペットの家族化が進んでいることを考えると驚きではない。いまでは、ペット用の温泉、ヨガ、オーガニック食品、さらにはビールまであるのだ。

ペットのインフルエンサーたちの人気を受け、際限がないように見えるこのブランド拡大のチャンスに乗じようと、規模の小さなプラットフォームが多数できている。たとえば、ペット向けブログのコミュニティであるブログポーズ(BlogPaws)。ママさんブロガーらに着想を得たものだが、これはペット向けのサービスだ。エドワーズ氏も最近、ドッグ・エージェンシー(The Dog Agency)という新しいベンチャーを立ち上げ、クロエのようなペットとブランドの理想的な仲介を目指している。バーク(Bark & Co.)も「バークパック(BarkPack)」という独自プラットフォームを立ち上げた。「ファー・カード(Fur Card)」など、人気インフルエンサーの追跡に特化したWebサイトもある。

ペットの大半はまだ人間よりも安い

「2015年のはじめ、バークではバークパックとアフィリエイトプログラムについて月に3件ほど、ブランドと話し合いをしていた」と語るのは、バークのインフルエンサー部門であるバークパックの最高売上責任者(CRO)、スザンヌ・マクドネル氏だ。「年末には、話し合いが週に3件になった。現在、広告主やブランドパートナーとの話し合いは、どれもバークパック絡みになっている」と、同氏は話している。

こうしたプラットフォームは、ペット所有者とペットに特化した幅広いネットワークをブランドが利用できるようにする。ブランドは、キャンペーンの認知度やエンゲージメントを、型破りで楽しい適切な方法で向上させたいときに、こうしたプラットフォームを利用することができる。バークパックでは、P&Gの「スイッファー(Swiffer)」、アメリカン・エキスプレス(American Express)、ユナイテッド(United)、ワンホテルズ(1 Hotels)、 アンハイザー・ブッシュ(Anheuser-Busch)といった広告主と、さまざまな形で協力している。

シェアされやすい普遍的な魅力

従来型のインフルエンサーネットワークでさえ、ペットのインフルエンサーと仕事をしたいというブランドの要求が高まっているのを経験している。たとえばスピーカーでは、CEOのハンセル氏によると2015年、ペットの依頼が2014年から200%増加した。「そして2016年はすでに、ペットの依頼が2015年の合計と同じくらい届いている」とハンセル氏は語る。

デジタスLBiのシャーマン氏は、フォロワー数が100万を超えるペットが増えており、ブランドも容易に規模を実現できるようになったと話す。ペットの大半はまだ人間よりも安いのだ。もっともハンセル氏によると、人気が高いペットは、投稿1件で何万ドルも稼ぐこれまでのインフルエンサーに匹敵する額に着々と近づいているという。

ジェットブルー航空でブランデッドコンテンツとソーシャルメディアマーケティングの責任者を務めるチャン・トラン氏は、「言葉を話し、その結果、ブランドにフィットしなくなったり、議論を呼んだりするおそれがある人間よりも、かわいいペットと仕事をするという、ある種の安心感もある」と、語る。

こうしたペットたちも多くは、ひとりひとり人格があるのかもしれないが、全般的に、ペットの方がほぼあらゆる状況に対し融通が利く傾向がある。ペットはかわいく見えさえすればよいのだ。

「ほかのほとんどのものにはない、普遍的な魅力がある」とメルセデス・ベンツのアイクマン氏は語っている。

Tanya Dua (原文 / 訳:ガリレオ)