中国で売上を40%伸ばした、エスティローダーのやり方

化粧品メーカー、エスティローダー(Estée Lauder Companies)では、ほかのどの市場よりも中国で売上が急増している。これは、50名からなる中国専任チーム、中国最大のeコマースマーケットプレイスであるアリババ(Alibaba)のTモール(Tmall)におけるブランドのストアフロント、そして独立したeコマースサイトなど、巧妙なローカル戦略のおかげだ。

エスティローダーは8月18日、2017事業年度の決算報告を行い、中国で総売上が40%、eコマース売上が50%増加したことを明らかにした。全体の年間売上は5%増の118億ドル(約1.3兆円)で、中国市場の成長は全体を上回った。全体の売上のうち、オンラインは20%だった。

全方位のeコマース戦略

中国は、エスティローダーにとって米国、英国に次ぐ第3の市場だ。同社オンライン事業担当プレジデントのデニス・マケナイリー氏は、チームの規模と売上の数字の両方がもっとも急速に成長している市場だと語る。

「中国は独特の市場だ。製品の好みも、マーケティングで用いる説明もほかとは違う。ソーシャルメディアとインフルエンサーが重要だが、その空間の持って行き方に微妙な違いがある」と、マケナイリー氏は述べる。「現地に合わせるのがカギとなる。ニューヨークで作ったプログラムと戦略をそのまま中国で立ち上げてもうまくいかないので、そうはしていない」。

エスティローダーは、直販eコマースサイトだけでなくサードパーティのパートナーの受け入れも行っており、中国市場に全方位から取り組んでいる。同社の主要3ブランドであるクリニーク(CLINIQUE)、エスティローダー、MAC(マック)はそれぞれ、自前のeコマースサイトを開設後、アリババの消費者向けマーケットプレイスであるTモールに目を向け、ブランドのストアフロントを開設した。ここでは、買い物客が各ブランドのコンテンツを閲覧し、サイトから商品を直接購入できる。マケナイリー氏によると、2017年にMACがTモールに開店した際には、同サイトにおける高級化粧品会社の初日としては最高の売上を記録したという。

Amazon出店は計画外

しかし、アリババで行った戦略をAmazonでも展開する計画はない。エスティローダーの社長兼CEOを務めるファブリツィオ・フレーダ氏は投資家たちとの電話会議で、エスティローダーが傘下ブランドの製品を2018年にAmazonで販売する計画はあるかと聞かれると、それを否定した。

「我々はブランド構築力のある流通を求めており、ハイタッチ・サービスなど高級美容品の重要な要素を実施するパートナーと組んでいる」と、フレーダ氏は説明。「そのため、Tモールのような、そうした基準が十分に尊重されているチャネルに流通させている。Amazonは違う。Amazonに卸すことは、当社の2018年計画にはない」。

中国消費者にとって、デジタルショッピングの主要チャネルはモバイルだ。エスティローダーは、WeChat(微信)などのソーシャルプラットフォームで、現地中国のチームによる、中国人インフルエンサーを起用したキャンペーンを立ち上げている。2017年5月には、新しく立ち上げた化粧品シリーズ「ピュアカラーラブ(Pure Color Love)」のプロモーションのために、免税チェーンのDFSと組んで、バーチャルリアリティによる口紅の試用アプリを微信内で公開した。

その成果は出てきている。売上が増え、マケナイリー氏が見たところ、実店舗のない都市で収益が増えており、全モバイル売上の半分以上を中国が占めている(全デジタル売上の50%はモバイルで行われている)。

TモールのMAC

TモールのMAC

活況を呈する中国市場

どの傘下ブランドも、自前サイトのeコマースの能力を十全に発揮するため、発送オファー、マーケティングキャンペーン、組み込み決済を現地化している(アリババのアリペイ[Alipay:支付宝]を採用している)。マケナイリー氏は、外国の広告主向けの税金を下げるという中国政府の最近の方針変更により、マーケティング資金に余裕ができ、それをソーシャルメディアでの新しいキャンペーンに回していると述べた。

外国ブランドは、中国におけるeコマースの発送と物流の微妙な違いにうまく対処できないところが多いが、エスティローダーは、市場の拡大にあわせてそこへのリソースを増やしている。フレーダ氏は、8月18日に行われた投資家との電話会議のなかで、中国売上の前年比40%増加は持続可能なものではないとしながらも、2桁成長は続くとの見方を示した。

中国におけるeコマース売上の急増に、エスティローダーやクリニーク、MAC、トム・フォード(Tom Ford)、トゥフェイス(Too Faced)などのブランドを傘下にもつエスティローダーが乗じるなか、こうした急増は、高級ファッションブランドも押し上げている。自宅での買い物をする中国人が増えるなか、グッチ、ルイ・ヴィトン、サンローランといったブランドが新しいeコマース戦略を模索しているが、そのアプローチはさまざまだ。サンローランが、eコマースマーケットプレイスであるJD.comとファーフェッチ(Farfetch)の提携を利用してJD.comで販売しているのに対し、グッチとルイ・ヴィトンは、自前のeコマースサイトで独自に参入。偽物が多発する中国のオンラインマーケットプレイスは回避することに決めた。

自社の売上のために

中国の高級品業界を扱う出版物を出しているコンサルティング会社の精日传媒(Jing Daily)でアソシエイトエディターを務めるイーリン・パン氏は、「中国では自宅における高級品の消費が拡大しており、ブランドはこの市場を攻略する必要がある」と語る。「アリババとJD.comは顧客ベースが巨大で非常に有名なので、中国人は、オンラインで買い物をするとなるとまずこのふたつを考え、ほかのプラットフォームはその次になる。このふたつのサイトの外にあるブランドサイトで買い物をしてもらうには、人々を教育し、説得する必要がある」。

エスティローダーの戦略は、その両方で販売して、より多くの顧客にリーチしようというものだ。模造品販売者がいることからアリババとJD.comを避ける高級ファッションブランドがあるのに対し、エスティローダー傘下の各ブランドは、アリババ傘下のTモールを採用している。ここで認知度を確立してから、最終的に自前のeコマースサイトで買い物するように消費者を誘おうという計画だ。ブランドのストアフロントは消費者が本物と偽物を区別する助けになると、マケナイリー氏は確信している。

「Tモールはうちのブランドが輝く場所だ。我々は、Tモールでは売上をコントロールしている。ストアフロントをブランドにして、そこでクリエイティブ、マーチャンダイジング、マーケティング、トラフィック促進などを行っている」と、マケナイリー氏は述べる。「中国の専任eコマースチームがすべてに対応しており、我々はストアフロントを、ブランドを格調高く提示できるようにコントロールしている」。

Hilary Milnes (原文 / 訳:ガリレオ)