マーケターを悩まし続ける、ドメインの「なりすまし」問題:プログラマティック広告の闇

プログラマティック広告のいつまでも解消されない問題は何かとマーケターに尋ねれば、多くの者が同じ答えを返すだろう。ドメインのスプーフィング(なりすまし)だ。

ドメインスプーフィングとは、たちの悪いパブリッシャー、アドネットワーク、アドエクスチェンジなどが、トラフィックの正体を隠し、まともなウェブサイトに見せかけるものだ。この業界では新しい問題ではないが、マーケターたちがアドフラウド対策やブランドセーフティに力を入れるなか、注目を集めている。

一例として、インタラクティブ広告協議会テックラボ(IABテックラボ)が5月に、ads.txtという構想をスタートさせた。これは、パブリッシャーのインベントリー(在庫)を販売する資格のある業者を、メディアバイヤーに知らせるものだ。たとえば、デマンドサイドプラットフォーム(以下、DSP)やエージェンシーのトレードデスクが、オープンなアドエクスチェンジで「goodsite.com」のインベントリを購入したいとする。その場合、「http://goodsite.com/ads.txt」に行けば、このアドエクスチェンジがパブリッシャーから許可を得た再販業者なのかどうかを知ることができる。

スプーフィングの実態

プログラマティックのアナリティクス企業であるメタマーケッツ(Metamarkets)によると、スプーフィングをするドメインは、ウェブサイトのアドレスを偽るものだけではなく、質の低いコンテンツからなるバナーファームの場合もあるという。たとえば、メタマーケッツのあるブランドクライアントは、毎月のトラフィックが非常に大きい、きちんとしたエンターテインメント系のウェブサイトに広告が配信されるはずだった。しかし、広告はそこではなく、「mangago.me」という無名のサイトに掲載された。

スプーフィングをするドメインの中には、ウェブアドレスの偽装という意味の「なりすまし」ではないものもある。ソース:メタマーケッツ

スプーフィングをするドメインのなかには、ウェブアドレスの偽装という意味の「なりすまし」ではないものもある。ソース:メタマーケッツ

ドメインスプーフィングの温床は、アドネットワーク、エクスチェンジ、詐欺的なウェブサイトだけではない。アドエージェンシーのクレイマー=クラッセルト(Cramer-Krasselt)でメディアとアナリティクスを担当するエグゼクティブディレクター兼シニアバイスプレジデントを務めるクリス・ウェクスラー氏によると、インターネット調査企業のコムスコア(comScore)によるパブリッシャーランキングのトップ100のうち、少なくとも10のパブリッシャーが、アドネットワークからの詐欺的なトラフィックを購入しており、詐欺行為を助長しているという。

「こうした詐欺師たちの稼ぎは、いまのところ1000インプレッション当たり数セントだが、長期的に見ると、まともなパブリッシャーの売上と、市場における広告主への信頼を低下させている」と、ウェクスラー氏は言う。

どのように発生するか?

アドテク企業サイズミック(Sizmek)の最高成長責任者、マイク・カプリオ氏によると、広告インプレッションの典型的な流れは次のようになる。パブリッシャーが入札リクエストを作成し、いくつかのサプライサイドプラットフォーム(以下、SSP)やアドエクスチェンジに送る。入札リクエストはそこから、複数のDSPに送信される。落札されたら、パブリッシャーのアドサーバーがデマンド側のアドサーバーを呼び出し、広告が表示される。

「プロセスのなかにいくつも飛んでいるところがあるので、どの当事者も、起きていることをすべて見渡してはいない」と、カプリオ氏は言う。

入札リクエストに含まれる情報には、パブリッシャーのドメイン、記事のURL、広告掲載IDのほかに、コンテンツのカテゴリーやユーザー情報のようなメタデータがある。DSPが偽装ドメインを捕捉するのが難しいのは、DSPがもっぱら入札リクエストにあるサイトのドメインと記事URLに基づいて処理をしているからだ。プログラマティックネイティブの会社であるシェアスルー(Sharethrough)でプロダクト担当バイスプレジデントを務めるカート・ラーソン氏によれば、パブリッシャー、アドネットワーク、あるいはアドエクスチェンジによって最初からドメインが書き換えられていたら、DSPには見分けがつかないという。

責任のなすりつけ合い

理屈から言えば、防御の最前線はSSPであり、SSPはページの出どころやドメイン登録が行われたタイミングなどを確認するべきだろう(たとえば、2日前に登録されたサイトがオープンなエクスチェンジで5000万インプレッションも販売できるわけがない)。しかし、カプリオ氏によると、SSPは通過させた量で儲けているわけだから、そうする動機がないという。

また、インデックス・エクスチェンジ(Index Exchange)のパートナーサクセス担当バイスプレジデント、スティーブ・サリバン氏によると、まとめ売りをするSSPが、小さなサイトのドメインを、より有名なドメインであるかのようにごまかして売っている可能性もあるそうだ。エージェンシーからすると、アドテク中間業者のあいだの責任のなすりつけ合いによって、悪質な行為を捕捉するのがさらに難しくなっている。

「インプレッションの供給と流通のチェーンは不透明なので、チェーン内なら、よそに責任を押しつけるのは誰でも簡単だ」と、ウェクスラー氏。「(ドメインスプーフィングは)解決が非常に困難で、費用がたくさんかかるというのが本当のところだ。ヨソがやってくれれば、時間と労力をかける必要がないのにと、みんなが思っている」。

正当なインプのために

エージェンシーのマレンロー・メディアパブ(MullenLowe Mediahub)でメディアサイエンス担当のディレクター兼シニアバイスプレジデントを務めるダン・デービーズ氏も、ベンダーによるスケープゴート探しをたくさん経験していると語った。デービーズ氏のチームでは、モート(Moat)やインテグラル・アド・サイエンス(Integral Ad Science)のような第三者企業と組んで、インプレションのドメイン情報とページ情報が合致しているかの確認にあたっているが、ドメインスプーフィングを完全に捕捉することは、どこもできていない。

デービーズ氏は次のように述べる。「アドエクスチェンジが売り手をフィルタリングする一番良い位置にいると思う。ドメインスプーフィングを業界が厳しく取り締まれればと本当に期待している。広告のインベントリーを浄化していくにつれて、CPMはそれだけ上がっていくだろうが、正当なインプレッションを買えるようになるのなら、それで構わない」。

この記事のために話を聞いた幹部たちの話をまとめると、買い手側が第三者のベンダーと組んで入札前と購入後に検証することは可能だが、ドメインスプーフィングをリアルタイムで検知する技術は、いまのところDSPにもSSPにも存在しない。ラーソン氏とサリバン氏は、IABのads.txtプロジェクトならプログラマティックにもっと透明性をもたらせるのではないかと期待している。というのも、ads.txtは、販売権限のあるメディアの取り扱いのみに力を入れるようSSPに促すものだからだ。

「業界の売り手側は、この問題に責任を持つべきだ。一方でDSPは、こうしたうますぎる話があれば、見て見ぬふりをしないようにしなければならない」と、サリバン氏は語った。

Yuyu Chen (原文 / 訳:ガリレオ)