スパイサー報道官、目の敵のアイスブランドに歩み寄り?:リアルタイムマーケティングの作戦勝ち

ショーン・スパイサー報道官

ショーン・スパイサー報道官

トランプ大統領の就任式について「過去最高の人数」と表現したことで批難を浴びたショーン・スパイサー報道官は、ホワイトハウス入りする何年も前、アイスクリームブランドのディッピン・ドッツ(Dippin’ Dots)に対する悪態をTwitter上でしきりに展開していた。それは端から見ても妙な光景だった。そんな長年に渡る争いが、いまになって意外なクライマックスを迎えている。

「未来のアイスクリーム(Ice Cream of the Future)」というマーケティングスローガンを長年使ってきたディッピン・ドッツ。ショーン・スパイサー報道官は、2010年から15年にかけてTwitter上で同スローガンを嘲笑し、2011年には同社が破産申請を出したことも馬鹿にした。その4年後には、ワシントンナショナルズの試合会場で、同社のバニラアイスが品切れになっていたことに対する不満もぶちまけている。

オンラインで公開書簡

そして先日、ディッピン・ドッツのスコット・フィッシャーCEOは、スパイサー報道官の記者会見の日を選んで、彼宛の書簡をオンラインで公開した。書簡が公開されて24時間も経たないうちにディッピン・ドッツ、スパイサー報道官ともに、FacebookとTwitterのトレンディング・トピックとなり人々の話題となった。

「あなたのツイートを拝見してきました。私たちはあなたの敵ではなく、友人になれたらと願っています。あくまでも私たちは点と点と結ぶことの可能性を信じているからです」と、フィッシャー氏の書簡には書かれている。

前にも言ったと思うけれど、ディッピン・ドッツは未来のアイスクリームじゃない(※スパイサー氏による、6年前の投稿)

「点と点を結ぶ」をまさにディッピン・ドッツはやってのけたようだ。ソーシャルアナリティクス会社ブランドウォッチ(Brandwatch)によると、書簡が公開される前の週末からの1週間、オンラインでディッピン・ドッツは7300回言及された。その大部分である約7200回分は書簡が公開されてからの3日間に発生したものだ。ソーシャル上の反応は日曜日と月曜日には主にネガティブなものであったが、火曜日にはブランドが話題となったポストの54%はポジティブなものへと転換したとデータが示している。

「ネガティブな反応のほとんどは、未来のアイスクリームに対する『奇妙』なスパイサー報道官による攻撃に対する反応だった。現在、ポジティブな反応がどんどん増えており、このようなニュースに巻き込まれてしまったディッピン・ドッツの対応を称賛するものになっている」と、ブランドウォッチのシニア・データ・アナリストであるケラン・テリー氏は語る。

今回の施策の背景

この見事な対応の立役者となったのは、ディッピン・ドッツのエージェンシー、マーケティング・ゼン(Marketing Zen)だ。彼らはウェブメディア「AVクラブ(AV Club)」が日曜日に発行した記事で、「はたして(スペンサー報道官は)彼の大敵、「未来のアイスクリーム」であるディッピン・ドッツを口撃することなく5分間のスピーチを終えることができるだろうか?」と書かれているのに、注目した。

記者会見ではディッピン・ドッツを口撃することはなかったが、マーケティング・ゼンは月曜日にフィッシャー氏とカンファレンス・コールを開き、ブランドのマーケティング責任者とコミュニケーション責任者とともにどうアプローチするか議論した。

トランプ内閣と争いになることをブランドたちは恐れている。それは正当な心配だ。ディッピン・ドッツもまた、政治的な争いに巻き込まれることに対して懸念があったが、「ブランドのメッセージを明確にしておきたかった」と、ブランド広報担当のビリー・スタバー氏は語る。

「消費者たちは私たちからの反応を必要としていたため、無視することはできなかった。反応をしない、というのは今日ではひとつの反応として見なされてしまうため、沈黙というオプションはない。スコット氏は透明性を大変重視する人物だったので、彼はこの件に取り組みたいと考えた」と、マーケティング・ゼンのシャーマ・ハイダーCEOは語った。

フィッシャー氏からスパイサー報道官への公開書簡に加えてディッピン・ドッツは、その書簡へのリンクをシェアする投稿をソーシャル上にいくつかポストした。これに関してメディアに支払って宣伝してもらうということはしなかったと、ハイダー氏は付け加える。

@seanspicer、点と点を一緒につなげましょう! 私たちがアイスクリームを提供する社会的なイベントを、あなたとホワイトハウスが行っていただけることを願っています。

報道官からの返信

大統領選挙からここまで、お菓子ブランドは不思議な頻度で政治的な話題にのぼってきている。ドナルド・トランプ Jr.がシリア難民をボール一杯の毒入りスキットルズにたとえた声明を出したときに、スキットルズは反応を出さないといけなくなったのも記憶に新しい。ハイダー氏は「ブランドはソーシャル上のチャンスをつかみ、批判する声を支援の声へと変換する必要がある」と語る。

ブランドや公人はソーシャルメディア上でどのような振る舞いをするか、もっと慎重でなければいけない(それはスパイサー報道官のボス=ドナルド・トランプも含めてだ)、と語るのはエージェンシー、アーノルド・ワールドワイド(Arnold Worldwide)のソーシャル・コンテンツ・システムのシニア・バイス・プレジデントであるロブ・シプル氏。今回の騒動を通じて、ディッピン・ドッツは大人な対応をした側としての印象を残した。

過去3年間、ディッピン・ドッツの「売上は二桁成長」を見せている。雇用といった重要なトピックではなく、アイスクリームに注意を払うホワイトハウス報道官をちょっとからかうような余裕はあるということだろう。

「彼に恥ずかしい思いをして欲しいというわけでは、まったくない。メッセージはもっと屈託のないもので、政治的ではない。トランプ内閣の狙いは理解しているということを示したかっただけだ」と、ハイダー氏は言った。

返信が遅れて申し訳ない。我々の国のために仕えてくれた人々(=軍人、退役軍人)のために何か良いことを一緒にするというのはどうですか。

Yuyu Chen(原文 / 訳:塚本 紺)
Photo by Getty Image(人物)