ディオール、eコマース業界に参入か? 〜オンライン販売に拒否反応を示す高級ブランドたち

2015年11月16日、クリスチャン・ディオール(Christian Dior)が、はじめてオンラインで靴の販売を開始した。ジュエリーが施されたスニーカーやレーザーカットパンプスなど、ディオールの14のアイテムが用意されたこのキャンペーンは、ニューヨークの高級百貨店バーグドルフ・グッドマン(Bergdorf Goodman)とのパートナーシップで実現したものだ。ただし、期間限定ショップのため、同年12月31日にはクローズされる。

この取り組みは、クリスチャン・ディオールという高級ブランドにとって、eコマース業界へ参入する足がかりとなる、ほんの小さな一歩(ディオールの4インチヒールのパンプスほどの一歩だろうか……)となった。本来、ディオールは低価格コスメやスキンケア商品、香水以外は、オンラインストアで販売をしていない。ニーマン・マーカス(Neiman Marcus)のようなチェーンデパートでも、サングラスや美容関連のみの扱いとなっている。ディオールにとってオンライン販売は、もともと限定的なものだったのだ。

そのため、バーグドルフ・グッドマンとパートナーシップを組んだとしても、eコマースへの参入を意味しているわけではない。ディオールのクチュール部門代表のパメラ・バクスター氏は、ファッション誌「Women’s Wear Daily」の取材に対して、オンラインで販売する商品を拡大する計画は、今回のキャンペーン以降、予定していないと語る。

躊躇する高級ブランド

バクスター氏は、「我々にとって、店舗での体験やスタッフと顧客との関係構築がもっとも重要なことだ。正直にいえば、実際の店舗では顧客が誰なのかはっきりとわかっているスタッフがいるのに対し、オンラインでどのように顧客との関係を構築するのか方法がわからない」とコメントした。

オンラインで販売することを躊躇してきた高級ブランドは、決してディオールだけではない。しかし、多くの老舗ブランドたちは、次々とデジタル販売をはじめるべく準備をしている。シャネルも2015年の初めに路線変更をし、オンラインストアを2016年にオープンすると発表した。フェンディとトム・フォードも2015年からオンラインでの販売を開始しており、セリーヌがオフラインを貫く最後の高級ブランドとして残っているようだ。

バクスター氏は、顧客との関係性を築くことが、ブランドが最優先するべき戦略だと話す。「これまで実店舗で築いてきたような顧客との関係性を、オンラインでも築く方法があるとすれば、我々はすぐにでも参入する」。

ブランドであろうがデパートであろうが、オンラインショップ運営において、小売が抱える大きな問題がひとつあるとすれば、それは、オンラインの顧客と実店舗の顧客をいかに同一人物と認識するかということだ。バクスター氏によると、ディオールのブランド価格設定では、顧客と長く続く関係性を築くことの方が、オンライン販売よりも重要だという。

相乗効果を生み出すべき

「多くの高級ブランドは、必ずしも売上を追いかけているわけではないので、オンライン販売に対してあまり乗り気ではなかった。ラグジュアリーとは、希少性だからだ」と話すのは、市場調査企業フォレスターリサーチの主席アナリストであるスチャリタ・ムルプル=コダリ氏。

「しかし、いまはオンラインでも最高級のエクスペリエンスを届ける方法はある。実際にとても裕福な人たちもオンラインで買い物をするからだ。いまの時代、eコマース参入がブランドを傷つけるようなことにはならないと思う。なぜなら、オンライン販売は、いまやどの企業も実施していることだし、オンラインでの体験が実店舗での体験を強化させることも可能だ」と、続けてコダリ氏は言及した。

バーグドルフ・グットマンの社長、ジョシュア・シュルマン氏は、オンラインストアは高級ブランド企業にとって「幸福をもたらすもの」になっていかなくてはならないという。同氏は、クリスチャン・ルブタンとアレキサンダー・ワンと共同し、バーグドルフ・グッドマンのオンラインストア立ち上げに貢献している。

「これらブランドの顧客は、とても忙しい毎日を過ごしている。実店舗とオンラインの両方で高級ブランドの買い物ができる便利さは、彼らにとって当たり前のものなのだ。ブランド企業も、店舗とオンラインストアの両方をもつことで相乗効果を生んでいると気づいている。カスタマーエクスペリエンスの観点から見ても、インストアとオンラインの融合は付加価値になっているのだ」と、シュルマン氏は語る。

運営は全面的に百貨店

ディオールが出店しているバーグドルフ・グッドマンのオンラインストアにおいて、その運営は全面的に百貨店に頼っているという。また、同ブランドとデパートは、4人の女性モデルを新たに起用。インスタグラムにてファッションを担当していたエヴァ・チェン氏、女性ファッション誌『ザ・マンリペラー』に勤めていたリアンドラ・メダイン氏、ファッション・ライフ誌『ザ・カット』のエディターであるシオナ・テュリニ氏、ファッション・インテリアデザインのブログ「ソング・オブ・スタイル」を運営するエイミー・ソング氏など、影響力ある女性を靴のモデルとして採用した。

もちろん、クリスチャン・ディオールの商品をオンラインで買うことに抵抗がある人もいるだろう。そんな人々に朗報がある。今回のキャンペーンにおけるディオールコレクションは、2015年末までマンハッタンにあるバーグドルフの本店でも購入可能だそうだ。

Hilary Milnes(原文 / 訳:BIG ROMAN)