「Photoshopで1600%の拡大画像を見て 哲学的になる」:「スクエアスペース」デザイナーの1日

高機能なWebサイトビルダー「スクエアスペース(Squarespace)」のようなプラットフォームの登場は、デザイナーたちにとってはチャンスだった。デジタル分野での仕事が増えるからだ。しかし、従来のデザインの仕事からの移行は、簡単なものではなかった。仕事のやり方を大きく変えないといけなかった。

161213michelleミシェル・リブ氏(写真左)は、スクエアスペースで2年前に働きはじめる前は、プロダクションデザイナーだった。スクエアスペースで働きはじめてすぐに分かったのは、そこでのテンプレートやグラフィックスのデザインは、それまでのデザインの仕事と、まったく違う頭の使い方が必要ということだった。

20人編成のチームの一部として、リブ氏が心がけていることは、ただコンピュータースクリーン上で作られるデザイン以上のものを作ることだ。「テック業界では私は変わり者だ。というのも、私の(デザインの)仕事では、実際にプロダクト(モノ)を使うからだ」。

たとえば、小規模の食料販売店向けのテンプレートを作っているとき、ガラスの瓶のようなモノを実際に作って、彼女がそれを写真に撮影したりする。「別の領域へと越えること、インスピレーションはスクリーン上を越えるべきだと気付くことは、すごく重要だ」。

リブ氏の1日を今日は紹介する。分かりやすさのために若干編集を加えてある。

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07:30 am アラームが鳴って起きる。ベッドからずるずると出るときは、まだほとんど半分寝ているような状態で、でも頑張って朝のルーチンに取り掛かる。私の朝のルーチンは、ビックリすることにフレイジャー・クレーン先生(アメリカのテレビ番組に登場する精神科医のキャラクター)と似ている。フレイジャー先生はコーヒー、高繊維の朝ごはん(たぶんこれが一番大事なところ)、そしてパリッと刷り立ての新聞と一緒に、1日をゆっくりはじめるべきだと主張している。

しかし、いまは2016年だ。私はそれなりにモダンな人間なので、古くなってきたiPad(2012年のホリデーの贈り物だったもの。ありがとうお父さん)で新聞は読む。朝のルーチンをひとつでもスキップすると、その1日は完璧とはいえなくなる。

08:47 am 記事をいくつか読んでいるうちに時間の感覚が無くなってしまう。身支度をするのが面倒だから、余計に記事を読みたくなるというのが、ほとんどだけど。化粧や身支度をして、公衆に見られても恥ずかしくない状態にキープするというのは、ときには面倒なもの。

09:54 am 地下鉄に向かって歩きながら、忙しい1日に備える。歩いているときは、Nasty Women(直訳だと「卑劣な女たち」。トランプがヒラリーをこう呼んだことから、男性社会の逆境に負けずに誇りを持って生きる女性を示す言葉として肯定的に使われるのがトレンドとなっている)たちの女性の応援歌風なものを聴いてるかな。最近ではジャネット・ジャクソンの「Nasty」をよく聞いている、なぜって #今話題 だから。ジャネットは力を与えてくれる。

10:12 am 電車がホイト・スキマーホーン駅についたら、そこで乗り換え。歌はジャクソンファミリーつながりで、マイケルの「Bad」に。というのも友達のケネスが教えてくれたのだけど、この駅のプラットフォームで「Bad」のミュージックビデオが撮影されたらしい。マンハッタン行きの電車に乗ってエレーナ・フェランテの『ナポリタン』シリーズを読む。地下鉄では皆、これを読んでる。

10:38 am オフィスに着いたらeメールをチェックして、水を一杯入れて、次にポートフォリオテンプレートを作る人物像のことを考える。

11:06 am ブルックリンミュージアムのデジタルコレクションを閲覧する。初期のアメリカンフォトグラフィーから19世紀の木製版画、コートジボワールのバウレ・マスクまで幅広く備えている。このデジタルコレクションを見て1日を過ごすなんて簡単。

00:30 pm お腹を好かせた同僚たちからランチに行こうと、Slackのメッセージが来る。

01:17 pm スクエアスペースの休暇ポリシーはフレキシブル。なので、食後のコーヒーではチョコレートの話から休みをいつ取るのか、なんて夢のような話題が上がる。

02:36 pm さまざまなオンライン・ポートフォリオのリサーチを幅広くしたあと、リサーチ結果と自分の考えをまとめて新しいテンプレートの試作品を作りはじめる。今回はフリーランスのグラフィックデザイナーを想定することにする。彼は幅広い種類のプロジェクトを披露しないといけない。そこからどんなタイプのコンテンツがテンプレートのなかに表示されるかを決めはじめる。

デザイナーがポートフォリオのなかで特に見せたいものが何であるか? たとえば複数のパートから構成されるプロジェクトを見せたいと思う人はいるはずだ。いくつものスクリーン表示をもつアプリであるとか、構成要素が複数あるブランディングプロジェクトであるとか。プロデューサーと相談して必要な素材を決める。そこからデモコンテンツに取り掛かり、ライセンスが必要な画像などもチェックする。

03:43 pm ふいに、フォトショップで1600%に拡大された画像を睨みつけている自分に気付く。モニターの反射に写る自分を見て、自分の存在について考えはじめてしまう。自分の人生における、あらゆることの意味を問いはじめる前に、すぐ横のデスクについている同僚に話しかける。

私たちは仕事をしながら、お互いが聞いているポッドキャストについて話をする。スクエアスペースがスポンサーにもなっている「彼女に電話しな(Call Your Girlfriend)」や「まだ考え中(Processing)」といったポッドキャストをすごく尊敬している。こういったポッドキャストは、アメリカの有色人種の女性が経験する問題をトピックとして捉えているからだ。

05:15 pm 私たちのデジタルライブラリーのなかにコンスエロ・カナガによる素晴らしい写真を見つける。それをポートフォリオテンプレートのなかに入れるプロジェクトのひとつに含めることにする。典型的なグラフィックデザインのポートフォリオがどんな物か考えつつも、この作品を使うことで、ひとつのビジュアルシステムに収まるプロジェクトでも、異なる側面を見せることができるのではないかと考える。

06:30 pm 自分のデスクでオートミールの夕飯を食べる。それから同僚のデザイナーから進められたフランス語会話のクラスに向かう。

08:07 pm ワインという魔法の薬のおかげで、フランス語のセンテンスをひとつかふたつほど作ることができた。クラスにいた別の生徒は週末にバチェラレット・パーティ(結婚する女性のために開かれる宴)をしたと説明している。フランス語ではバチェラレット・パーティは「若い女性の人生の埋葬」と訳されると学んだ。

10:00 pm ようやく自宅に到着。ベッドに入る準備をして、退屈すぎて止められない「テラス・ハウス」シリーズを見る。次の朝、遅くまで起きていたことを後悔するのだ。

Shareen Pathak(原文 / 訳:塚本 紺)