動画時代、マーケターが知るべき・取り組むべき5つのこと:「ブランドサミット2016」レポート

本記事は、ブランドサミットを主催する企業コムエクスポジアム・ジャパン株式会社のiMedia Chairmanである中澤圭介氏からの寄稿となります。

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去る5月23日〜26日、沖縄残波岬ロイヤルホテルで、最先端を行くブランド企業のマーケターが集う「ブランドサミット2016(Brand Smmit2016)」が開催された。ブランド企業のマーケターとエージェンシーなどのパートナー企業、約350人が集まり、3泊4日で最新の事例をシェアしたり、日々の課題をディスカッションしながら、ネットワーキングを行った。

今回は2011年の第1回からすべてに参加している人がいる一方、初参加となる企業や、過去参加企業であってもメンバーが入れ替わるなど、フレッシュな顔ぶれで行われた。本記事では、ブランドサミットの30を超えるセッションを通じて見えてきた、企業の広告・マーケティング担当者が知るべきこと・今後取り組むべきことについて取り上げたい。

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「ブランドサミット2016」の様子

1. 動画の「役割と分類」を意識する

セッションにおいては目立ったのが、「動画コンテンツ」の活用に関する内容だ。2015年に一気に企業の活用が進み、さまざまな事例ができた。インターネット広告のリッチ化によって「ブランディング」を目的とした活用は年々広がり、特に動画は、伝えられる情報量がテキストやバナーと比べて非常に多く、スマートフォンの普及と通信速度の向上という環境面も手伝って、もはや「活用するのは当たり前」の状態になりつつある。セッションでは、この1年で蓄積されたさまざまな動画活用に関する効果・課題を踏まえて「その先どうするのか?」を軸に各社がプレゼンを行った。

動画制作・動画マーケティング企業ビーバー(Viibar)にてセールス&マーケティングユニットのディレクターを担当する堀野勝也氏のセッションでは、「生活者が接する場面によって有効な動画」をコンテンツ系の「スター(Star)」「ヘルプ(Help)」「ハビット(Habit)」、コマーシャル系の「インサート(Insert)」「パーセージョン(Persuasion)」という5つの役割に分類。パーチェスファネルのなかで、それぞれがどの役割を果たすのかを説明。さらに、役割ごとのクリエイティブの違いについても述べた。

この6月に開催される「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティフェスティバル」では、2016年から「ライオンズエンタテインメント」が新設される。そこでは「アンスキッパブル・クリエイティビティ(Unskippable Creativity)」、つまり「スキップされない動画クリエイティブ」が評価の軸になっている。これだけ聞くと、どうしてもソーシャルメディアなどでシェアされやすい、エンターテインメント性が強い動画を想起しがちだが、「スキップされない動画クリエイティブ」の意味は、生活者との接点と役割によって大きく変わる。企業側には、Web動画の役割と分類をしっかり意識したうえでのプランニングが求められる。

2. 動画の「掲出先」の価値を見極める

またオープンエイト代表取締役社長 高松雄康氏やシーマーTV(CMerTV)代表取締役社長 五十嵐 彰氏のセッションから明らかになったのが、「Webメディアのプレミアム枠の重要性が高まっている」こと。ここ数年、サイトアクセス履歴などから人を特定して、興味関心に合わせて広告を表示する「オーディエンスターゲティング」が注目されてきた。しかし、ブランドリフトや告知・認知を目的とする動画広告においては、「顧客としたい層が多く利用しているメディア」の広告枠を活用した方が、効率的に情報を届けることができる。

Webメディアは、これまで自社の広告枠を安価に提供せざるを得ない状況もあった。しかし今後は、それぞれの「メディア特性と抱えているユーザー層の価値」が見直される機会となるだけに、コンテンツの充実と広告収入の関連性が高まることになる。企業側は、動画広告を活用するうえで、オーディエンスデータのみならず、改めて「どのメディアが適切なのか」に関する情報をつかんでおく必要がある。

それ以外にも、両社からは「完全視聴率を高める仕組み」「視聴後の反応・効果が高まる要素を見極めて制作を仕組み化することによる低コスト・大量制作」「使用する音楽など必要な法的処理を一括で行う」なが語られるなど、Web動画活用の初期で見えてきた課題を解決し、さらに発展させていくステージに入っていることが印象付けられた。

3. 「テレビCM」も有効活用する

登壇したブランド側のマーケター(ジョンソン・エンド・ジョンソン コンシューマーカンパニー マーケティング本部長 リュウ・シーチャオ氏、ライオン 宣伝部部長 小和田みどり氏、ヤマサ醤油 マーケティング部部長 藤村 功氏、日本マクドナルド マーケティング本部 上席執行役員 マーケティング本部長 足立 光氏)は、Web動画をはじめとしたデジタル施策の最適化や、最新の事例やソリューションの仕組みを理解することの重要性に理解を示す一方で、「それだけでは不十分」と話した。

「たとえば小売・流通を介して商品を販売するメーカーにとっては、下がってきたとはいえ効率的にリーチできるテレビCMはバイヤーとの交渉材料としてまだまだ不可欠。したがって店頭販売施策との連動のみならず、会社の経営戦略・マーケティング戦略との連動の中で、動画をはじめ各ソリューションはどの役割を担うのかという視点を持たなければならない」といった指摘には、参加した多くのマーケターが深く頷いていた。

4. 「制作体制づくり」も慎重に

もうひとつ、企業のマーケターが今後意識すべきこととして見えてきたのが「企業変革につながるパートナー選びの重要性」だ。それが色濃く現れたのが、ニューヨークのデジタルエージェンシー R/GAのジェイ・ザサ氏の「キーノートセッション(Keynote Session)」だ。ジェイ氏は同社がなぜ新しい取り組みができるのかについて、これまでのエージェンシーのビジネスモデルと比較しなから解説した。

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R/GAのジェイ・ザサ氏

「当社(R/GA)のビジネスは『コミュニケーション(Communications:従来のエージェンシーの役割)』『プロダクト/サービス(Products/Services:新商品・新サービスの開発)』そして『ビジネストランスフォーメーション(Business Transformation:コンサルティングによる事業の変革)』の3つで成り立っており、クライアントのビジネスのより深い部分に関わるようになっている。加えて、これらのビジネスを成功させるには、右脳と左脳のように、ストーリーをつくり、物事をシンプルにまとめる力と、システムを理解しあらゆる可能性を試そうとする力の両方が求められる。ただ、この2つは相反する力であるため、個人に2つの能力を求めるのではなく、チームとしてそれぞれの能力のある人物を配してバランスを取ることが大切である」と語った。

そのため同社においては、クライアントの課題に向き合って企画・アイデアを考える際、従来の広告コミュニケーション型のトップダウンによる「ビッグアイデア(Big Idea)」と、生活者の声をボトムアップで集めて分析する「デジタルタクティック(Digital Tactic)」の両方を取り入れた「ホールアイデア(Whole idea)」を重視しているということだった。

5. 「仕事領域」を限定してはいけない

最近、コンサルティング会社がエージェンシーを買収するなど、広告・マーケティング領域での存在感が高まっている。クライアントのコミュニケーションのみならず、商品・サービス開発からビジネス変革までを手掛けるR/GAのビジネススタイルを通じて、企業のマーケターからは「ブランド価値を高めるためにどのようなパートナーを選ぶべきかについて、自社に合った基準を明確に持たなければならない」という声が挙がった。

同時に企業のマーケターは「自身が担当する仕事領域はここまで」と規定することなく、前述したように会社の経営戦略をより意識しなければならない。「マーケティングの変革、ひいては企業の変革につながることを提案・実行するのも自身の仕事」という意識を強く持たなければ、その領域にまで踏み込もうとうしているパートナー企業の能力を持てあますことになるかもしれない。そして、パートナーとなる企業は、なにもエージェンシーやデジタルソリューション提供企業だけではない。顧客層を同じくする他業種の企業など、広く目を向けてみると新しい発見につながる。

パートナー企業が擁する豊富な知見や事例、他業界とのコラボレーションやなど、外部の力を借りることで、自社だけで取り組むよりも変化のスピードは圧倒的に速くなる。ブランドサミットを通じて見えた「いま必要なこと、これから取り組まなければならないこと」に向かって行くためには、トップマーケターとのネットワーキングによって構築した、独自のネットワークをいかに活かせるかがカギを握りそうだ。

Written by 中澤圭介
Image from Thinkstock / Getty Images