トランプ騒動渦中のニューバランス、栄枯盛衰を学ぶ?:選挙後のノーマルな状態とは

ボストンに本拠を置くシューズメーカー、ニューバランス(New Balance)はいま、どれだけ迅速に物事を撤回できるのかを学んでいる。

きっかけは、同社のコミュニケーション担当バイスプレジデントが、次期大統領のドナルド・トランプ氏と一緒に働くことを楽しみにしていると述べたことだった。その後、ネオナチのブロガーが同社のシューズを「白人のための公式シューズ」と述べたことも手伝って、同社製品のボイコットを呼びかける動きが消費者のあいだで起こった。

それ以来、同社はダメージコントロールに取り組んできた。

謎のGoogle検索広告

この件に興味をもった人は、Googleで「ニューバランス(New Balance)」と「トランプ(Trump)」という言葉を検索してみるといい。同社の検索広告が先頭に表示される(下記キャプチャーを参考)が、その内容は、同社のシューズをボイコットする前に「真実を知ってほしい」とユーザーにお願いするものだ。また、広告をクリックすると「BuzzFeed(バズフィード)」の記事が表示される(広告の文面とBuzzFeedの記事タイトルも異なっているところにも注目)。その記事には、ニューバランスがトランプ氏の貿易に対する考え方に賛同しているだけであることをほのめかす話が載っている。

「new balance trump」の検索で表示される広告

ニューバランスが自らこの広告枠を買ったのかどうかは不明だ。米DIGIDAYはこの件に関してコメントを求めたが、回答は得られていない(回答が得られれば、またお伝えする)。BuzzFeedの広報担当者によれば、この広告が掲載される前にニューバランスから連絡はなく、この広告が前出の記事にリンクされている理由もわからないという。

「この件についてニューバランスから連絡はない。どうやら彼らは、有料検索を利用して、我々の知らないうちに許可なく記事コンテンツを拡散しているようだ。通常なら、こうした行為は当社の利用規約違反となる」と広報担当者は語った。

ソーシャルメディアで釈明

ニューバランスは、ソーシャルメディアでも同社の見解を広めようとしている。同社のFacebookの投稿には、トランプ氏関連のコメントが溢れている。

BuzzFeedの記事によれば、発端となったコミュニケーション担当役員のコメントは、文脈を無視して引用されたものだという。この役員は、ドナルド・トランプ氏が「環太平洋戦略的経済連携協定」(以下TPP)に反対していることに期待感を抱いていると述べたようだ。TPPは、貿易障壁を減らすことを目指して12カ国が参加する貿易協定で、ヒラリー・クリントン氏とバーニー・サンダース氏も反対の意を示していた。

ニューバランスは、例の発言がソーシャルメディアで話題になった後、クリントン氏とサンダース氏を支持していると表明。また、米国内で製造するシューズの数を増やしたいと考えているため、貿易に関して「独自の見方」を取っているのだと釈明した。同社が投稿した一連のツイートは、そうした彼らの立場を明確に示すものだった。

 

ニューバランスは、いかなる形であれ、偏見や憎悪を許すことはない。当社の役員の1人が貿易政策について尋ねられた際に述べたコメントが広まっているが、これは文脈を無視して引用されたものだ。米国内に5つの工場をもち、あらゆる人種、性、文化、性的指向にまたがる数千人の従業員を抱える創業110年の企業として、ニューバランスは価値を重んじる組織であり、世界中の人々が慈愛と誠実さ、コミュニティ、互いを尊重する気もちを重んじる文化をもっている。当社はこれまでも、そしてこれからも、米国内で製造を続けていくつもりだ。

 

我々はコミュニティの力を信じている。慈愛の心を重んじている。当社の靴を作っている人も、当社の靴を履いている人も、最大の誠実さをもって行動することをよしとして、我々はありとあらゆる人々を歓迎している。1906年の創業以来、我々は独自の道を切り開き、ニューイングランドにある5つの工場で製品を作ることに情熱をもって取り組んできた。ニューバランスと世界中にいる当社の数千人の従業員は、地域社会をより良くするための努力を常に行っている。我々はこれまでもそうしてきたし、これからもそうするつもりだ。

だが、印象は変わらない

それでもまだ、多くの顧客には、同社がまだトランプ氏を支持しているように見えていた。また、反ユダヤ主義と白人至上主義を掲げるWebサイトの「デイリー・ストーマー(Daily Stormer)」が、騒動の直後にニューバランスに対する支持を表明したことが、事態をさらに悪化させた。コメントから距離を置くだけでは十分な成果が得られなかったことから、同社はいま、積極的なPR活動に乗り出している。

競合他社も同社の追及に余念がない。リーボック(Reebok)は「リーボッククラシック(Reebok Classics)」のツイートで、ニューバランスのシューズをボイコットしようとしている人にリーボックのシューズを無料で提供するとツイートしている。

 

(※「ニューバランスのシューズなんてトイレに流してやろうよ」というツイートに対して)

 

お客様のトイレが詰まってしまうかもしれないので、ダイレクトメッセージを当社にお送りいただければ、近くのトイレまで歩いて行けるようシューズをお届けします。?

 

いつになく政治が話題となっているのには、さまざまな理由がある。どちらの陣営の有権者も感情的になっているなか、一部のブランドの幹部が、自身の意見を表明するにあたってミスを犯しているのだ。

むしろ分が悪いヒラリー支持層

デリバリーサイトを手がけるグラブハブ(Grubhub)の最高経営責任者であるマット・マローニ氏にとっては、トランプ氏の政策を支持する従業員は退職すべきだと従業員宛の電子メールに書いたことが、とりわけ大きな失敗だった。この出来事のために、同社のサービスの利用をボイコットしようという動きがTwitterで広まることになった。

トランプ氏の支持者らは、ほかの企業のボイコットを呼びかけるキャンペーンもはじめている。その1つがペプシ(Pepsi)だ。きっかけは、同社のCEOを務めるインドラ・ノーイ氏の発言だった。同氏は、ペプシの全従業員が選挙結果を「嘆いている」と述べたうえ、マイノリティ、女性、LGBTの人たちがもはや「安全」ではいられないと心配していると語ったのだ。

ブランド各社は近年、ソーシャルメディアで顧客との「会話に加わる」ようアドバイスを受けている。だが、過激な物言いの人たちが互いの不寛容さを非難して罵り合いをはじめ、状況を悪化させる例が増えている。

主導権を握ったトランプ支持層

ソーシャルメディア分析企業のブランドウォッチ(Brandwatch)によれば、標的となった企業はソーシャルメディアでさまざまに叩かれるが、最終的にはひとつの質問に行き着く。それは、どちらの側につくのかということだ。

ニューバランスは、今回の選挙に関して、親トランプと読めるコメントを発した唯一の企業だ。だが、驚く人も多いだろうが、トランプ氏を支持しないとする企業には否定的なコメントが多いのに対し、ニューバランスに対するコメントは、どうしたわけか、いまでも肯定的なものが多い。

ソーシャルメディアでの印象

「トランプ氏の支持者は、こうした会話で主導権を握っている。我々がそのことに気づいた理由は、彼らのソーシャルメディアへの投稿で、この傾向が明らかに見て取れるからだ」と、ブランドウォッチのアナリストは述べている。

これがいまやノーマルな状態

たとえば、トランプ氏の支持者にボイコットの対象とするよう呼びかけられている企業の最新リストが、レディット(Reddit)に掲載されている。このリストを管理しているのは、WhiteChristianManというハンドルネームのユーザーだ。

一方、トランプ氏一族と取引関係がある小売企業をまとめたリストがTwitterで出回っている。このリストには、Amazon、メイシーズ(Macy’s)、マーシャルズ(Marshalls)、ニーマン・マーカス(Neiman Marcus)、ノードストローム(Nordstrom)、ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)、ロードアンドテイラー(Lord & Taylor)などの名前が、顧客問い合わせ窓口の情報とともに掲載されているのだ。これらの企業はすべて、トランプ氏の娘イバンカ・トランプ氏のコレクションを取り扱っているという。

ブランドにとっては、これがいまやノーマルな状態になったというわけだ。

Shareen Pathak(原文 / 訳:ガリレオ)
Image via Alicia A. L.(Creativecommons)