なぜバーバリーは、業界のデジタル先駆者になれたのか? 〜その軌跡を振り返る

いまから9年前となる2006年。当時のバーバリーのCEOアンジェラ・アーレンツ氏と最高クリエイティブ責任者のクリストファー・ベイリー氏は、同社がファッション業界のデジタル進出における先駆者になりたいと宣言していた。

その頃は、デジタル知識に乏しかったバーバリー。しかし現在、同社のデジタル展開は、経営の中核を成し、多くの賞を獲得するまでになっている。

バーバリーは、2009年に独自のソーシャルメディアプラットフォーム「the Art of the Trench(トレンチコートの芸術)」をローンチ。その後もいち早く、ブログ、Twitter、Facebookなどを取り入れてきた。バーバリーは、どこよりも早く、新たに開発されたソーシャルメディアを試してきた。

Snapchat(スナップチャット)とライブストリーミングアプリの「Periscope(ペリスコープ)」にも即座に反応。インスタグラムの動画とTwitterの「購入(Buy)」ボタンもリリースと同時に試した。2014年の終わりにはモバイルサイトのアップグレードも行い、結果、モバイル収益が3倍にも伸びた

新流行にすぐさま飛び込む

バーバリーの現CEOであり最高クリエイティブ責任者を兼任するベイリー氏は(アーレンツ氏は2014年にAppleに移籍している)、デジタル技術がブランドの方針のなかにあると発言している。顧客にとって、これはこれまでラグジュアリー界には存在していなかったブランドとつながる新たな方法だ。しかし、バーバリーにとってはオンライン、店舗、モバイルの顧客、すべてを同等に扱うという意味になる。

バーバリーはこのデジタルを中心とした考えにより、法人向けのデジタル分析を手がけるL2社より2015年12月第1週にリリースされた、「2015年デジタルファッション報告書」から高い評価を受けた。この報告書は毎年リリースされるもので、ファッションブランド企業のデジタルコマースやマーケティングを成功と失敗でランク付けする。モバイル展開、ソーシャルエンゲージメントやブランド認知などのデジタル分野でバーバリーは、ほかの82社のファッションブランド企業に勝り、トップになった。

「完全デジタル宣言」を即実行

2006年に「完全デジタル宣言」がされ、バーバリーが「完全デジタル」に移行するために最初に行ったことが2009年の「Art of the Trench」サイトのローンチであった。このサイトは、バーバリーの代名詞のひとつであるトレンチコートを着用するユーザーによるコンテンツを掲載するサイトだ。

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「Art of the Trench」(同ホームページより)

さらにこの年、2010年の春/夏のファッションショーの最中、バーバリーは従来招待制であったファッションショーをライブストリームすることに決め、誰でも視聴できるようにした。

L2社は、これらの継続的な投資こそが、バーバリーがデジタル分野でリードしている理由だと述べている。デジタルをブランドの価値を薄めてしまう「大量消費市場」と捉えがちなラグジュアリーブランドのなかで、バーバリーのこうした取り組みはとても興味深い。

「すべて見渡せるビジョン」

しかし、L2社の報告書が述べている通り、「ラグジュアリーブランドにとって厳しい現実は、何十年もかかって築いたブランド価値も、オンラインではそれが正しく反映されないことだ」(ロイター通信によると、2015年9月の贅沢品市場の全体の成長は1〜2%ほどだが、バーバリーの収益は11%も上昇している)。

「ラグジュアリーの小売店にとって、完全にデジタル化するという戦略を取ることは珍しいし、すべてを見渡せるビジョンが必要となる」と、デジタルエージェンシー・アイソバー(Isobar US)のアソシエイト・プランニング・ディレクターであるエイミー・ゲール氏はコメントする。「こういったデジタル戦略をとるラグジュアリーブランドが、バーバリーやほかの数社しか思いつかないのが悲しい」。

2014年、バーバリーはより多くのオーディエンスを獲得するために「Art of the Trench」サイトの拡大を行った。現在、同サイトはバーバリーの世界中の市場に展開されていて、140万人がサイトの紹介動画を閲覧し、今日までに2480万ページビュー数となっている。

ベッカム次男主演動画がヒット

2016年の春/夏ファッションショーの際には、バーバリーはライブストリームの域を超え、「スナップチャット(Snapchat)」にてコレクションすべての写真を公開した。公開はコレクションがランウェイに登場する前から行い、1億インプレッションを記録した。

また、L2社の報告書には「時代遅れの投資対象を復活させる能力は珍しい」とある。バーバリーが続ける投資にはクリスマス動画がある。2015年の動画は「The Burberry Festive Film(バーバリーの祝祭動画)」と題され、有名サッカー選手デビッド・ベッカム氏の次男、ロメオ・ベッカム氏が主演している。

2014年もロメオ・ベッカム氏をフィーチャーした「From London with Love(ロンドンから愛を込めて)」という動画をリリース。950万回の視聴数を集め、4番目に多く視聴されたブランド動画となっている。テレビ広告の15〜30秒を大きく超える4分17秒の視聴時間。高級ブランドは長尺のネット動画制作でブランディングをはかるのがトレンドだ

ファッションショーのストリーム動画を視聴する人たちからも収益を上げる方法を編み出した。2013年にオーダーメイド・サービスを開始し、視聴者がファッションショーの商品を購入できるようにしたのだ。

顧客をブランドに近づける

2014年の春/夏コレクションで発表された服の販売を、ファッションショーが終了すると同時に2週間限定で、オンラインとモバイルサイトの両方で行った。中国では巨大ユーザーを抱えるメッセージアプリ「WeChat」からの注文も、バーバリーは実験的に行った。

これらの戦略の目標は、顧客をブランドに近づけることである。

バーバリーには信頼できるデジタル部隊が在籍し、プラットフォームやモバイルサイトで共有されているすべてのコンテンツは社内で作成されている。それには2015年10月にSnapchatを利用して行った広告キャンペーンも含まれる。

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Snapchatを利用したバーバリーのキャンペーン告知

このキャンペーンの広告写真はすべて、写真家マリオ・テスティーノ氏によって撮影されたものだ。ほかにも、ロンドンのイベントや男性ファッションショーのライブ配信を「Periscope」を利用して行った。Apple Musicにもブランド企業による最初のチャンネルを開設し、音楽プレイリストの制作も手がけている。

Twitter購入ボタンも即座に採用

デジタルチャンネルにおける、バーバリーの目標は調和である。買い物客はオンラインで商品を購入し、店舗にて受け取ることが可能だ。店舗にいながら販売員にBurberry.comから注文してもらうこともできる。

また、モバイルとデスクトップの両方から統一されたショッピングカートで買い物できる。チャンネル同士を同調させることによりバーバリーは日本や韓国など、新たな市場に展開することができ、ソーシャルを通じてのショッピングを可能にした。さらにバーバリーは2014年、当時発表されたばかりのTwitter「購入(Buy)」ボタンをファッションショーに取り入れ、モバイルからの購入を即時にできるようにしている。

また、日本でもLINEにおいて公式チャンネルを運営し、約370万人の友だちを獲得。これは同サービスに展開している、イブ・サンローラン(23万)、コーチ(57万)、クリスチャン・ディオール(66万)、ラルフローレン(100万)と比べても驚異的な数字だ。

業界屈指の「デジタル使い」に

2016年もさらなる進化が計画されているバーバリーのデジタル戦略は、バーバリーをラグジュアリー・ファッション分野のトップだけではなく、業界全体のトッププレイヤーとして成長させた。「Apple、ナイキやGoogleなど、業界を代表する企業と同様に、現時点でバーバリーはデジタル知識が豊富なブランド企業として確立した」と、L2社はコメントしている。

Hilary Milnes(原文 / 訳:BIG ROMAN)
Image from Art of the Trench