炎上がエンタメ化した現代、担当者はいかに向き合うべきか?

誰もが激怒しているが、誰も気にしていないのだろう。

いつもブランドが過ちを犯した際に、大量に寄せられる暴言。担当者はできる限り対応するよう教育されているが、あまりにも大量のため、それが不可能になっている。そして、ブランドが問題を抱えるとき、いつもオオカミ少年たちが騒ぎ出すため、どれくらいケアすれば良いのかも分からない。

米レストランチェーンのチックフィレイや米貨物運送企業UPS、コカ・コーラなどにサービスを提供しているエージェンシーのモクシー(Moxie)。そのCEOであるショーン・リアドン氏は、「私たちは苦しんでいる」と話す。「ひとつひとつに対応していたら、それだけに1日を費やしてしまう」と、彼は指摘する。

ソーシャルメディアに対する怒りも文化となってきた。ブランドが引き起こす、すべての失敗は「大ごと」もしくは「恥ずべきこと」となっている。また、ブランドが何かしらのミスをすると喜んで糾弾する者もいるが、この人たちも実は無害だ。いままで以上にブランドはイメージの保護を求めているが、それを請け負うエージェンシー側は対応しきれなくなっている。

「消費者は優勢側につく。私がクライアントに言いたいことは、ブランドが犯した失敗などはすぐに忘れてしまう、ということだ」と、とあるソーシャルエージェンシーのCEOはコメントした。消費者側の怒りを真剣に考えていないと、彼のクライアントに思われないよう、彼は匿名を条件に答えてくれた。

他人の不幸は蜜の味

ビール世界最大手ABインベブの発泡酒ブランド「バドライト」を見てみよう。「今夜あなたの辞書から『ダメ』という言葉をなくさせる最適なビール」という新しいキャンペーンコピーに対して、レイプ犯罪を増長させると炎上したのだ(最悪のスローガンだが、故意というよりかは、単に不器用すぎて失敗したものと思われる)。タクシー配車サービスのUber(ウーバー)民間宿泊サービスAirbnb(エアビーアンドビー)も、それぞれのロゴを変えたところ袋叩きにあった。

人々は他人の不幸がたまらなく面白いのだ! 特に、ブランドは消費者に好かれようと努力を続けているため、より面白い。「ブランドによる失敗は、もはやエンターテイメントだ」と、ブランド戦略ファームのシーゲルプラスゲール(Siegel+Gale)のCEOであるハワード・ベルク氏は語った。

ソーシャルメディアリサーチ会社ブランドウォッチ(Brandwatch)のCMOであるウィル・マキネス氏は、ブランドによるオンラインでの失敗例が増えていると指摘する。これは、数自体が増えているのではなく、ソーシャルメディアによって、それらの失敗にスポットライトが当てられるから増えていると感じるのだ。「人々は、ソーシャルメディアに投稿される無神経で不愉快なコメントに注目する。これらは失敗だとわかり易い」と、彼は話す。「人々が予想していたことと異なる意見を言うと、人々は即座に憤怒という形で反応する」。

ブランドウォッチのアナリストであるケラン・テリー氏によると、#brandfail(ブランドの失敗)のハッシュタグは2016年1月1日以降、230回ほどしか使われていないと話す。多くの場合、人々がブランドに対して不快感を示すときはハッシュタグを使用しない。その代わり、ブランド名の前に@マークをつける。「ブランドとの関係性や、ブランドへの怒りは個人的なものが多いため、対象のブランドにメッセージが届くよう、メンションを飛ばしている。彼らは問題について話し合おうとしているのではなく、不満があるということをブランドに伝えたいだけなのだ」と、テリー氏はコメントした。

スピードは加速しているが、レベルは下がっている

ジョージ・ニッツバーグ氏は、教育と心理学を専門としている、コロンビア大学教員養成学部の非常勤助教授だ。彼によると、現在のこのデジタルエコシステムでは意見が作られるスピードが加速しているが、集中できる期間も短くなってきているという。人間はこの文化に慣れてしまい、衝動的な行動の制御もできなくなってきている。そして、人々は以前よりも増して権力を感じている。

サブウェイの価格が6ドル(約670円)に値上がりするときも多くのツイートがあったが、これに対しニッツバーグ氏は、消費者が意見を口にすることで何かしらの変化に貢献したと感じていると、予想している。ブランドに対するこのような社会的自己満足を満たす行為も、客観的に見ると意味のないことかもしれないが、ツイートをしている本人からすれば、決して「ささいなこと」ではない。発言するだけで満足することも多いのだ。


また、デジタルはブランド側のスピードも加速させている。「もう何でも良いから、配達しろ!」という考えが広まっているのだ。これはとりあえず、商品は消費者に届け、バグや欠陥などは、あとで直すという考えである。

多くの企業が消費者にメッセージを送るなか、ブランド側のコミュニケーション部隊による勉強不足が目立つと、メディア企業のミューレンロウ・メディアパブ(MullenLowe Mediahub)のコミュニケーション戦略を担当するスコット・カラムビス氏は話す。「細かなことが多く、時間に限りがあるため、ミスをしないことは不可能に近い」と、彼は指摘する。「なので、いくらかの失敗は妥協しなくてはならない」とも、最後に付け加えている。

ハッシュタグによる失敗もあれば、本当の失敗もある

失敗や欠陥箇所が壮大すぎて、無視できないということも当然ある。最近発生したチポトレでの大腸菌による集団感染や、フォルクスワーゲンによる悪事は、理論上、マクドナルドのチーズスティックにモッツァレラチーズがかかっていなかったということよりも消費者を怒らせてしまう。ブランドによる重大な失敗と、軽微でバカみたいな失敗の線引きが曖昧になってきているのだ。

カラムビス氏は、ロゴの変更による混乱など、次元の低い怒りに慣れてしまったと話す。「人々は変化を嫌う。私が常に言っていることは、良い面を知れということだ。良い面があれば、確実に悪い面もあるからだ」。

これらのことにより、マーケティングの手法も変わってきている。消費者から怒りの声が挙がったとき、まず行うことは返答するのではなく、その失敗が本当に発生したかどうかを確認し、どれくらい深刻な状況なのかを把握する。「私たちが介入することでより混乱を招いてしまわないか? もしくは別の失敗が原因なのか?」。これらのことを考えなくてはならないと、シーゲルプラスゲールのベルク氏は説明する。

航空企業のソーシャルメディアマネージャーによると、企業の方針に変更はないものの、「黙っていれば明日にはみんなが忘れる」といった空気感があると話している。

また、ブランドによる失敗は大騒動になりすぎて、ブランドを孤立させてしまうこともあると、エージェンシーのアイリス・ニューヨーク(Iris New York)の計画部長であるディプティ・ブラムハンドカール氏は話す。「ハッシュタグによるブランドの失敗の問題は、注意が別の問題にも向いてしまうことだ」と、彼女は話す。「140文字の制限があるなど、共通点が多くある。現在、ブランドによる失敗はエンターテイメントと化している。綴りの間違え、翻訳の間違え、食中毒の発生など、すべてがブランドによる失敗だとされる」。本当の問題は、これらの問題に基準がないことだ。

ブラムハンドカール氏はひとつの方法として、エージェンシーやブランンドが失敗に対処する際には感情ではなく、苦情の量を見た方が良いと話している。もしくは、怒りの度合いを測れる何かしらの計測装置を作ることだ。「私たちにはいまだ、重大な問題と最悪な問題を見分ける能力がない」と、ブラムハンドカール氏はコメントする。「台風に警告があるように、私たちにも計測の基準が必要だ」。

Shareen Pathak(原文 / 訳:BIG ROMAN)
Photo by Thinkstock / GettyImage