「従来型」のアドフラウドは、なぜ一掃されないのか?

アドフラウドの一掃は水虫の撲滅と同じくらいに、思いのほか難しい。ドメインなりすまし無価値なトラフィック送信広告在庫タイプの偽装などの従来型の手口が、いまだに後を絶たない。実は、こうした古いタイプのアドフラウドがいまもなくならない背景には、ブランドセーフティの重視やヘッダー入札の普及などの、最近の業界トレンドが関わっている。

米BuzzFeedは10月18日、あるアドフラウドの実態を暴露するスクープ記事を発表。記事がSNSにて広くシェアされるなかで、広告業界に詳しいさまざまなメディアのジャーナリストらは、大手ブランドがいまだに従来型のアドフラウドの被害に遭っていることについて、特に注意を促した。

いまもしぶとく残り続けている手口のいくつかを、以下で見ていこう。

ドメインなりすまし

悪徳パブリッシャーが、アドエクスチェンジで自社メディアのURLを偽装することで、本来はほとんど価値がないインプレッションを広告枠のバイヤーに高く買わせる手口。たとえばアドエクスチェンジ上で、あやしいドメインyourwebsitesucks.comをディズニー傘下のスポーツ専門チャンネルESPNのドメインespn.comに偽装し、そのインプレッションを本物のESPNよりも低価格で販売することで、サイトレベルの安全性を調査せずに広告枠を安く手に入れようとするバイヤーから、金をだまし取る。

フィナンシャル・タイムズ(Financial Times、以下FT)は9月、自社の動画広告在庫をプログラマティック取引で販売していないにもかかわらず、ft.comになりすました動画広告在庫が15のサプライサイドプラットフォーム(SSP)で販売されていることを突き止めた。同社によると、被害額は推定で月100万ポンド(約1.5億円)。そのためアドテク企業オース(Oath)、スポットX(SpotX)、フリーホイール(FreeWheel)、ビッドスイッチ(BidSwitch)の4社に対し、ft.comになりすました動画広告在庫を販売しないように要請した。

アドフラウド検出サービスを提供する企業ホワイト・オプス(White Ops)のCEO、マイケル・ティファニー氏は、ヘッダー入札の普及がドメインなりすまし増加につながっていると述べた。同社は、米国内で6000を超えるパブリッシャーになりすましていたとされる「メスボット(Methbot)」の手口を明らかにして以来、注目を集めている

ヘッダー入札の普及以前は、パブリッシャーは広告在庫を販売する際に、一度につきひとつのSSPにコールをかけていた。複数のSSPが同時に入札するわけではなかったので、個別の広告在庫にアクセスしていた。このためバイヤーは、どのSSPがどのパブリッシャーと直接関わっているかを把握可能だったため、ドメインなりすましを監視することができた。

だがヘッダー入札により、複数のパブリッシャーが同時に複数のSSPにコールをかけることができるようになった。広告在庫の価格を上げるために、ヘッダー入札を利用するパブリッシャーはブラウザ上でさらに多くのSSPをロードするようになった。こうして、特定のSSPが特定の広告在庫にアクセスすることが少なくなり、バイヤーが健全性をチェックしにくくなった。

「ヘッダー入札には長所も多いが、しかし従来型のアドフラウドが再び横行するきっかけにもなっている。ドメインなりすましを行う悪徳業者にとって、つけ入る隙が増える」とティファニー氏は語った。

広告在庫タイプの偽装

アドベリフィケーション企業ダブルベリファイ(DoubleVerify)によると、アドフラウドは、動画広告ではディスプレイ広告の2倍の頻度で発生しているという。大量の広告費が動画広告に投じられていることを考えると、これはありそうなことだ。

アメリカのデジタルパブリッシャー最大手100社の場合、ディスプレイ広告のCPM(広告表示1000回あたりの料金)が2~6ドル(約228~684円)であるのに対し、動画広告のCPMは12~20ドル(約1368~2280円)だと、あるバイヤーが匿名を条件に明かした。このように動画広告のCPMがディスプレイ広告を上回るため、悪徳業者がディスプレイ広告在庫を動画広告在庫に偽装し、差額分をだまし取る行為が横行している。

このタイプのアドフラウドは、動画広告の需要が世界的に高まり続けている現在、広告主にとってまったく頭痛の種となっている。デマンドサイドプラットフォーム(DSP)のメディアマス(MediaMath)でサプライ部門責任者を務めるルイス・ロスコフ氏は、ディスプレイ広告の在庫を動画広告の在庫であるかのように見せかけているSSPを現在も見かけると語った。ロケットフューエル(Rocket Fuel)とインテグラル・アド・サイエンス(Integral Ad Science)が4月に共同で発表した調査結果によると、動画広告在庫の最大70パーセントが、この手口によって偽装されているという。

反社会的勢力の資金源に

フェイクニュースへの意識が高まり、またアクティビストが差別主義的コンテンツへのブランドの広告出稿を告発するためにSNSでスクリーンショットをシェアする活動を続けている現在、ブランドイメージの毀損を防止することがますます必要になっている。そのため一部のマーケターは、ホワイトリストやブラックリストなどのツールをより積極的に利用することで、広告費を反社会的勢力に渡さないように努めている。

しかしブランドセーフティの取り組みはいたちごっこになっており、依然として解決していない。ポルノ、違法コピー、ヘイトスピーチのサイトは、もはやブランドの広告を自サイトのページに直接呼び込むことができなくなったため、最近は中間業者に転じることで、ブランドの広告費をどこでむしり取っているのかわからないようにしているとティファニー氏は語った。こうした仲介業者は広告費詐取のために、従来型の手口を使っているのだ。

一例としては、無防備なポルノサイトユーザーにポップアップ広告やポップアンダー広告を表示させる手口が挙げられる。たとえばポルノサイトが、アドネットワークを、一見ポルノとは無関係なfashionshack.comなどのサイトに接続しておく。ユーザーがそのポルノサイトを訪れると、別のブラウザウィンドウが既存のウィンドウの下に隠れる形で開き、そこにfashionshack.comが自動的に表示されるようになっている。ここに大したコンテンツがなくとも、ポップアンダー広告がユーザーから見えない状態で更新され続けるため、何千回ものインプレッションが発生する。このような手口では、カムフラージュ用のサイトは、ポルノコンテンツを掲載していないうえに別ウィンドウで開かれるため、ブランドイメージ毀損の防止に取り組むベンダーの監視をすり抜けるおそれがある。

広告主は、広告の出稿先を考慮せずにオーディエンスをターゲティングしたり、怪しい動画広告在庫を買い入れたりする習慣をやめることで、アドフラウドの被害に遭う可能性を減らすことができる。出稿先のサイトを絞り込むことも有効かもしれない。さらに、高品質な広告在庫が供給されにくいニッチな層を重点的に狙う場合は、より慎重になる必要がある。

「悪徳業者は、マーケットの防衛手段のレベルに合わせて、アドフラウドの手口のレベルを変える」と語ったのは、アドフラウド関連のコンサルティングサービスを提供するメソッドメディアインテリジェンス(Method Media Intelligence)の創業者、シャイリン・ダール氏だ。「だからこそ、いま、ベーシックな手口のアドフラウドがこれほど横行しているのだ」。

Ross Benes(原文 / 訳:Conyac)