「消費者とのエンゲージメントは変革期を迎えている」:バカルディ北米CMO

この記事は、「米DIGIDAYが選ぶ革新的なCMO」シリーズの1本。時代の先を進みデジタルイノベーションを通じて収益を向上させる先駆的なブランドマーケターを特集する。

バカルディ(Bacardi)は、時代の変化に合わせて業態を変えることに慣れている。かつては社名を冠したラム酒が主力商品だったが、顧客の好みが変わると、ウィスキーがブランドの顔になった。そしていま、愛飲家と新規の顧客にリーチするため、同社のデジタルへのアプローチは進化の必要に迫られている。

バカルディは昨年、それまで単独だったグローバルCMOを2人体制に切り換え、1人を欧州に、もう1人を米国に配置した。また同社は、アドエージェンシーBBDOのもとで、テキーラ「カサドレス(Cazadores)」、ウォッカ「グレイグース(Grey Goose)」、ジン「ボンベイ・サファイア(Bombay Sapphire)」など200以上の商品からなる自社ポートフォリオを確固たるものにし、数カ月前には、メディアエージェンシーOMDとの提携を介して、プログラマティックにも初参入した。

バーガラ氏:「広告支出の多くをデジタルに移しつつある」

バーガラ氏:「広告支出の多くをデジタルに移しつつある」

「我々は、広告の支出と取り組み、ブランド注力の多くを、デジタルへ、とりわけモバイルへ移行しつつある」と、バカルディの北米事業担当CMO、マウリシオ・バーガラ氏は語る。「来年は、我々が消費者にエンゲージする方法に関する数多くのイノベーションが披露される年だ」。

本記事では、バカルディが自社のマーケティング戦略をどのように変えつつあるのかを詳しく見ていく。

データの有効活用

バカルディがデジタルに振り向けるリソースを増やしつつある現在、バーガラ氏のチームは、ソーシャルとモバイルから得られる分析をさらに活用して、メディア投資の最適化を図っている。同氏によると、データを駆使して、同社の顧客の属性を把握するだけでなく、いつどこで彼らがブランドメッセージを目にすることになるのかも予測しているという。

たとえば、バカルディは、ジオデータ(地理空間情報)を使って、バーにいる消費者を特定し、彼らにSnapchat(スナップチャット)やインスタグラムでブランデッドコンテンツを配信できる。また、データを活用することで、同一の動画で編集が異なる10本のバリエーションのうち、消費者の反響がもっとも高いものを判定できる。

「我々はますます、データドリブンに、そしてインテント(意図)ドリブンになりつつある」とバーガラ氏。

バカルディはまた、ターゲット広告の配信数を増やす狙いから、OMDとの提携を通じて、数カ月前にプログラマティックにも初進出した。多くの大手広告主がこの機能を内製化しつつある一方、バカルディがこの動きに同調することは当面なさそうだ。

「コミュニティー管理とコンテンツは、バカルディの内部に置く必要がある。だが我々は現在、パートナーシップと内製化の適切なバランスを学んでいる途中だ」と、同氏は説明する。

体験の重視

データの活用以外にも、消費者にユニークな体験を提供することにより、バカルディは酒類メーカーの枠を越えた「文化に関わる」存在になることを目指している。

バカルディは、この体験型マーケティングをオンラインとオフラインの両方で展開。傘下のボンベイ・サファイアは先月、BBDOと共同で、Googleのクローム(Chrome)ブラウザの拡張機能「アーティファイアー(Artifier)」を開発した。これを導入すると、ウェブページ上のさまざまなバナーを、ボンベイ・サファイアのプログラム「アーティザンシリーズ(Artisan Series)」に発表されたアート作品に変えることができる。

さらに今年8月、バカルディとBBDOは、デジタル版のスカベンジャーハント(宝探しの一種)で、電子音楽アーティストのゴールドルーム(Goldroom)とタッグを組んだ。このスカベンジャーハントでは、ゴールドルームのライブチケット10組分が、同アーティストのウェブサイトに隠された。チケットやエクスクルーシブトラックなどの賞品を見つけるには、参加者たちはクロームブラウザのシークレットウィルンドウを開くか、ゴードルームのTwitterで手がかりを追跡するかしなければならなかった。

また、バカルディは今年7月、アーティストのスウィズ・ビーツ(Swizz Beatz)を同社のカルチャー部門チーフクリエイティブに任命した。昨今、各社が同様の起用を行うようになってきたが、その大半の目的は売名だ。ポラロイド(Polaroid)は同社のクリエイティブディレクターにレディー・ガガ(Lady Gaga)を任命したが不幸な結末を迎え、インテル(Intel)は同社の「ディレクター・オブ・クリエイティブ・イノベーション」にブラック・アイド・ピーズ(Black Eyed Peas)のウィル・アイ・アム(will.i.am)を起用するという常軌を逸した行動に出た。

だが、バカルディとスウィズ・ビーツの場合は有機的な連携で、昨年マイアミで開催された同ブランド初の現代アートフェア「ノーコミッション(No Commission)」における両者のコラボから続く自然な流れだ、とバーガラ氏は語る。ノーコミッションでは、スウィズ・ビーツが自身のプロジェクト「ディーンコレクション(Dean Collection)」を介してキュレートした新進アーティストたちによる作品が展示された。バカルディによると、このイベント期間中に総額100万ドル(約1億円)以上の作品が売れたという。

「インフルエンサーは、我々のマーケティング戦略の重要部分を占めつつある。彼らとコラボすることにより、我々は消費者にユニークな体験を提供し、ブランドメッセージを増幅できるのだ」と、バーガラ氏は語る。

ラムブランドの復権

バーガラ氏は、マーケティングのイノベーションと製品のイノベーションは、密接に関連すると確信している。酒類業界全体では、ウィスキーが売上を伸ばしている一方で、ウォッカとラムは横ばい状態が続いている。だが同氏は、今年か来年にもラムは少しずつ活気を取り戻すはずだと考えている。この状況に対応すべく、バカルディは、熟練の技をさらに追求したラムの新製品を売り出し、選択の幅を増やす予定だ。

「我々は常に、トレンドがどのように進化しているのかを注視している」と、バーガラ氏は語る。「いまのバカルディで、我々には、ラムの位置づけに関して確固たるアジェンダがある。それは、カテゴリー全体が高級品の方向に進んでいるというものだ」。

Yuyu Chen (原文 / 訳:ガリレオ)
Photo by Ed Ivanushkin(CreativeCommons)