自動再生動画の登場で「視聴数」の定義が変わる?

数年前のブランド企業や広告代理店は、各社が独自にバナー広告の評価基準を策定し、どの測定方法が基準としてふさわしいのか議論し合っていた。インプレッションとは一体何なのか、たまたま誰かが開いたページに掲載されていた広告のことを指すのか?

今や、それと同じ問いかけが動画広告にされている。自動再生動画(オートプレイビデオ)と、ボタンを押して再生する従来の動画の2つがプラットフォームで掲載されるようになったからだ。

プラットフォーム各社の動画広告視聴測定法の違い

FacebookとTwitterは最近になって、動画広告の自動再生機能を導入。しかしこれにより、ブランド企業は動画の視聴状況の評価方法をめぐって、ある課題に直面することになる。それは、動画広告を「自分の意志で観た」視聴者の測定基準の定義付けだ。もし広告が自動再生されるのであれば、視聴数は簡単に増加するだろう。だが、そのように自動再生された視聴には、実際どれほどの価値があるのだろうか?ブランド企業側は、自動再生動画への広告費の投資について頭を悩ませることだろう。

「1回の『視聴数』を、どう考えるのか、業界では再定義しているところだ」と語るのは、宿泊先検索サイトの「Hotels.com」のシニア・ブランド・マーケティング・ディレクターを務めるマイク・ウォルフ氏。この「Hotels.com」では、Facebookの自動再生動画広告がデフォルトのミュート状態でも見ている人に訴えかけるような、賢い動画広告を制作している。

このような自動再生動画への課題を生む背景のひとつに、それぞれのプラットフォームによって、ビデオ視聴の計測方式が違うということが挙げられる。たとえば、Facebookでは広告視聴単価(コスト・パー・ビュー)を導入し、その計測法では1日40億超の視聴があると公表した。だが、この数字には同一の視聴者が意図的・偶発的にかかわらず、同じビデオを2回再生しても2回分とカウントされた分も含んでいる。なお、「1回の視聴数」の定義については、最低3秒間は再生されたものに限るという。

動画広告を観なくても視聴数に入る?

対してYouTubeでは、最初の1回の動画視聴だけを視聴回数として計測。そのため1人の視聴者が同じ動画を何度観たとしても、1回の視聴ということになる。しかし、同社のある幹部は「誰かがある動画を観た場合、1回の視聴として数えてくれるが、実際に何秒観たかについてまでは把握できていない」と説明した。「この基準はYouTubeの視聴者によって作られたロジックにすぎないため、規定のルールを私たちは持っていない。また、『1回の視聴数』に対する定義については、他にもさまざまな要因があると見ている」とし、普遍的な視聴回数の測定方法の定義については、まだ明確にしていない。

TwitterもYouTubeと同じく、視聴者の最初の1回目の再生だけが、その動画の視聴回数として計測される。しかし、YouTubeと違うのは、ビデオが少なくとも3秒間再生されない限り、広告料が発生しないということだ。

あくまで視聴者の反応を重視するhulu

そんな中、例外的にも上の3社よりもよりシビアに動画視聴の測定を行っているのが動画配信サービス「Hulu」だ。今年3月、30秒間の広告が最後まで再生された場合にだけ、広告主に料金を請求すると発表。また、自動再生動画広告を採用しないため、正確な視聴者数も計測することが可能だという。

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要するに、動画広告を効果的に活用するためには、ブランド各社がそれぞれのプラットフォームの動画視聴測定基準に最適化する形で、よりクリエイティブなコンテンツを作り出していくことが求められるということだ。「Hotels.com」のウォルフ氏は、次のように予測する。「あるサイトが広告主に対して、広告が3秒間再生されない限り料金を請求しないとしたならば、広告主はどうやったらその最初の3秒間に視聴者の興味を惹きつけられるかを考えなければならない。あるいは、動画広告の95%が再生されない限り、掲載サイトは広告主に広告料を請求しないとするならば、その広告主は動画広告コンテンツをまた違った内容に作り変えることになるはずだ」。

「Hotels.com」にしてみれば、Facebookに対応する動画広告は、自動再生機能に応じつつ、ミュート状態の最初の3秒間で注目を集めてこそ、意味があることになる。Facebookに対応するミュート動画広告作りに成功したことで、さまざまなプラットフォームで展開する動画広告への新しい取り組みの試金石となったと、ウルフ氏は話す。

視聴者の反応を知りたいブランド

アイスクリームの「Ben & Jerry’s」のようなブランドは、ビデオ視聴回数を計測対象から外し、その代わりに最後まで動画再生されたり、視聴者の記憶に留めてもらうことに力を注ぐようにしている。同社のマーケターは、最近になってミュート状態でも分かるように作られたシリーズ広告をFacebookでリリースした。

「業界が常に変化を続けている今、広告主にとっての『ベスト』なプラットフォームが世の中にあるとはいえない」とウルフ氏。「複数の動画広告モデルやクリエイティブなキャンペーンを重ねていくなかで、こうした変則的な取り組みが与えるインパクトを、どうやって動画コンテンツに反映させていくかを考えなければならない」

Facebookでは数秒間でも視聴回数としてカウントすることに対して、デジタルメディア戦略を展開する企業「GershonMedia」の社長バーナード・ガーション氏は、正反対の意見をもっている。「コンテンツ制作側の人間からすれば、Facebookの言う『1回の視聴数』というのは本当に現実を反映したものではない」。よって、彼自身のクライアントには、ユーザーが自分で音声付きの再生をして、初めて視聴とみなすと話しているという。まだまだ動画広告への改善の余地は残されているようだ。

Shareen Pathak(原文 / 訳:南如水)
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