「ナイキは手強いが、現在は我々の方にかなり分がある」:アンダーアーマーのデジタル戦略にひそむ野心

米国ボルチモアを拠点としているアンダーアーマー(Under Armour)は、現在ナイキ(Nike)に次ぐ、スポーツウェア第2位のブランドだ。しかし、同社は間もなくナンバーワンになると宣言している。その自信の裏付けとなっているのは、「フィットネステクノロジー」への野心的な取り組みだ。

過去3年間において、アンダーアーマーは、フィットネステクノロジーに多大な投資を行っている。同社のチーフデジタルオフィサーであるロビン・サーストン氏は、「世界最大のコネクテッドフィットネスプラットフォームを構築中」であると、米DIGIDAYに語った。

フィットネス関連で同社が最初に行った買収は2013年。1億5000万ドル(約162億円)で、サーストン氏が設立したマップマイフィットネス(MapMyFitness)を買収した。その後、フィットネスアプリであるマイフィットネスパル(MyFitnessPal)とエンドモンド(Endomondo)の買収に5億6000万ドル(約605億円)を費やしている。

しかし、同社がコネクテッドフィットネス事業の基盤構築に着手したのは、2015年になってからだ。アンダーアーマーが有する4つのモバイルプラットフォーム(UAレコード、マップマイフィットネス、エンドモンド、マイフィットネスパル)を統合し、デジタルフィットネスコミュニティを構築したのである。

アンダーアーマーの取り組み

2016年のCESでは、アンダーアーマーはJBLとの協業によるワイヤレスヘッドフォン2種類、スマートシューズ、アクティビティトラッカー、コネクテッドフィットネスシステムであるヘルスボックス(HealthBox)を発表した。

これらの製品は、ユーザーがアプリごとに登録する手間を省き、すべてのデータが統一されたヘルスダッシュボードに集約されるように設計してあると、サーストン氏は述べている。

「アンダーアーマーでは、ユーザーが運動や健康管理をはじめるにあたり、最低限に必要なものは何か? と、いつも考えている。我々の取り組みの全体像は、すべてのアンダーアーマー製品が統合されており、一貫性があることを示している」と、サーストン氏は述べる。

ナイキの戦略とはまったく違う

統合(インテグレーション)というアイデアは、目新しいものではない。来る6月に登場する予定のNike+アプリは、同じようなモデルを採用している。Nike+は、3つの既存Nike+アプリ、すなわちナイキランニングクラブ(Nike Running Club)、ナイキトレーニングクラブ(Nike Training Club)、ナイキSNKRS(Nike SNKRS)を統合したものだ。

アンダーアーマーはナイキの新製品に脅威を感じてはいない。サーストン氏によると、アンダーアーマーのフィットネス製品は、ショッピング体験ではなく、フィットネスそのものに重きを置いているからだ。ジム内外での運動、アクティビティトラッキング、食生活などに関する情報とツールを提供している。

もっとも重要なのは、アンダーアーマーでは、ユーザーのデータを使用して「パーソナルコーチ」体験ができる点だ。たとえば、ユーザーのアクティビティがストレスを示し、通常のレベルよりも心拍数が20%上昇していて危険の可能性がある場合、アンダーアーマーのヘルスボックスはユーザーに対して運動量を減らす、あるいは中止を促すという。

「これはナイキの戦略とはまったく違うものだ。我々の戦略は、マーケティング中心ではなく、製品中心の取り組みだ」と、サーストン氏。「ナイキは手強い競合ではあるが、現在、コネクテッドフィットネスに関しては我々の方に、かなり分があると思う」。

Apple、フィットビットも「競合」

ヘルスボックスのようなデジタルフィットネス製品は、成長を続けるウエアラブル市場において、ナイキのほかにも、フィットビット(Fitbit)やAppleも直接的な競合となる。リサーチ会社のパークアソシエイツ(Park Associates)によると、デジタルフィットネス市場は、2014年の20億ドル(約2150億円)から、2019年には54億ドル(約5840億円)へと成長する見込みだという。

「米国でフィットビットが大成功を収めたので、2015年度末の数字には急激な成長が見られると予想している。この先2年くらいは、フィットネストラッカーを中心にモバイルヘルスの成長傾向が続くと思われる」と、パークスアソシエイツのヘルス&モバイル製品ディレクターであるハリー・ワン氏は述べている。

2015年の時点で、フィットビットのアクティブユーザーはおよそ950万人。アンダーアーマーのアクティブユーザーは7700万(登録ユーザーはおよそ1億6000万)人だ。「フィットビットのユーザー規模は、まだ我々の足元にも及ばない」と、サーストン氏。「フィットビットやAppleが直接的な競合だとは考えていない。彼らとはパートナー関係を結んでいる」。

まだ大きな収益をもたらしていない

フィットネスセンサー技術をメインの製品に統合するスポーツアパレルメーカーは増えてきている。2018年初頭までには、現在のスマートシューズやスマートシャツよりも進化し、手頃な価格の製品が登場するだろうと、ワン氏は述べている。

デジタル広告、デジタルフィットネスプラットフォームのライセンスとサブスクリプションで構成されるアンダーアーマーのコネクテッドフィットネス事業は、まだ大きな収益をもたらすには至っていない。2015年のアンダーアーマー年次報告によると、デジタルフィットネス事業は、アンダーアーマーの合計収益およそ39億ドル(約4220億円)の1.3%となっている。

Yuyu Chen(原文 / 訳 片岡直子)