「独身の日」高級ブランドへアピールする、アリババの狙い:「see-now-buy-now」形式の事前イベント

アリババ・フランス(Alibaba France)のマネージングディレクター、セバスティアン・バドー氏によると、中国人の顧客はすぐに行動するそうだ。11月11日に迫ったショッピングホリデー「独身の日」の幕開けとしてアリババが開催した、今年で2回目を迎えた「see-now-buy-now(いま見て、いま買う)」スタイルのショッピングイベントで、心に残る印象を残すために各ブランドに与えられたステージ時間はたった7分だけだった。

バドー氏は次のように述べている。「中国は、ブランド全体にとって興味深い市場だ。ただし、あるレベルの教育を施す必要がある。目標は、ストーリーを語る場をブランドに与えることだ――これはエンゲージメントを作り出すことにもつながる。もちろん、中国の顧客も製品を購入するが、こうした購入は、魅力的なストーリーに触発されての行動だ」。

「Tモールコレクション(Tmall Collection)」と題された、この2回目のsee-now-buy-nowイベントには、オープニングセレモニー(Opening Ceremony)、フルラ(Furla)、リモワ(Rimowa)、ゲラン(Guerlain)、ビクトリアズ・シークレット(Victoria’s Secret)、レイバン(Ray-Ban)、エスティローダー(Estée Lauder)など27のブランドが参加し、4時間の売り込み合戦を繰り広げた。アリババのチームは、顧客データを活用しながら参加ブランドと協力し、顧客の興味レベルやブランドがプロモーションできる内容に基づいて、このイベントに合う顧客を選び出したという。

ブランドは、自社が担当する部分の制作費を負担しなければならないが、イベント参加費はない。デザイナーブランドのなかには、オープニングセレモニーやジェイソン・ウー(Jason Wu)のように、アリババとCFDA(Council of Fashion Designers of America:アメリカファッション協議会)のパートナーシップを通じて招かれたところもあった。

アリババが狙っていること

このイベントの様子は10月に撮影され、中国のテレビ局のほか、動画ストリーミングアプリ「ヨウク(Youku)」やTモールアプリなど7つのプラットフォームで10月31日に中国国内で放送および配信された。アリババでは、視聴者数が(ストリーミングプラットフォームがTモールアプリだけだった)昨年の700万人から1億人以上に増えると期待している。

「独身の日」に先駆けてこのような露出が増えると、世界最大の1日限りのショッピングイベントとしてすでに記録を樹立しているこのイベントの歴史が、また塗り替えられるかもしれない。2016年には、Tモールにおける小売店の総売上が32%も跳ね上がり、178億ドル(約2兆円)に達した。

これは驚くべき数字だが、高級ブランドは通常、大衆向けのPRの場であるショッピングイベントにこぞって参加するものではない。Tモールコレクションに参加した高級ブランドにとって、強調すべき点は商品の値引きではなく、たとえばゲランの香水「ビーボトル(Bee Bottle)」やリモワの手描き模様入りスーツケースなど、数々の限定品だった。

また、このイベントに参加した高級ブランドに中国の一般大衆というオーディエンスへの売り込み方を教えたバドー氏にとって、目的はアリババの新しい「ラグジュアリーパビリオン(luxury pavilion)」に命を吹き込むことだった。8月に開設されたラグジュアリーパビリオンは、アリババのeコマースプラットフォーム上でよりプレミアム感のあるハブと位置づけられていて、通常のアリババの一般大衆向け小売りプラットフォームとは別に、高級なショッピング体験を喚起する動画や画像をブランドがアップロードできる。ラグジュアリーパビリオンにページを持てるのはアリババに招待されたブランドだけで、(アリペイ[Alipay:支付宝]での支払額や過去の購入履歴をもとに)アリババが高級品購入者と認定した顧客のみがそこへのアクセスを許される。

学習するブランドたち

多くの高級ブランドが、自社が所有するサイトまたはアリババやJD.comのようなパートナーを通じて中国のeコマース市場になじんでくるにつれて、さまざまなことを急速に学んでいる。ヒューゴ・ボス(Hugo Boss)やティファニー(Tiffany & Co)など、ラグジュアリーパビリオンに存在するブランドは、アリババの高級品チームと協力してキーオピニオンリーダー(KOL、中国のインフルエンサー)を見つけ、彼らと手を組んで買い物がしやすいコンテンツ作りに取り組んでいる。

「ブランドが、富裕層に属する中国の消費者と関わる方法が変化している。この市場では、いままでやってきた多くのことを捨て去らなければならない。もっとも大きな改革を実施し、チャンスをつかみ取ろうとするところが、それを一番うまくやれる。中国の顧客もデジタル面で進歩しており、これらのブランドが中国から学んだことは、米国はもちろん、世界のどこでも応用できる」と、バドー氏は言う。

中国の顧客は、スマートフォンを利用したショッピングを特に好んでいる。実際、Tモールコレクションの一環として、モバイルでのショッピング体験を通じて購入される高級ブランドもいくつかあると、バドー氏は言う。イベントで紹介された商品を購入する場合、携帯電話でライブストリーミングを視聴している顧客は、商品をタップするとTモールのカートにその商品が送られる。テレビで視聴している顧客は、携帯電話を振るだけで、そのとき画面に映っているものが何であろうと、それがカートに追加される。バドー氏によれば、初回に続いて今回もイベントに参加したゲランは、ライブショウ後に50万ドル(約5600万円)以上を売り上げたという。

データの透明性が強み

米国でアリババと同じような地位を占めるAmazonもまた、高級ファッションビジネスの強化に努めているが、両社を比較して論じることは間違いだと、バドー氏は指摘する。アリババは、卸売小売業者ではなくサードパーティーのマーケットプレイスで、ブランドとデータの共有をし、価格設定や出品についてもブランド側に管理を任せている。こうしたデータの透明性は、高級ブランドが中国のeコマース市場で足場を得て、米国や欧州の高級品購入者層より若い顧客についてより多くを学ぶのに役立っている(中国の顧客は男女ともに20代後半で、米国の顧客層より25歳、欧州より15歳、それぞれ若い構成になっている)。

ブライアン・スクール・オブ・ビジネス・アンド・エコノミクス(Bryan School of Business and Economics)のニール・クシェトリ教授は、次のように述べている。「アリババの強みはビッグデータだ。彼らは毎日500億件もの取り引きを処理している。しかし、さらに重要なのは、彼らが持っている単なるデータの量ではなく、彼らがそれを喜んで共有しようとしていることだ。データの共有については、Amazonがブラックボックスのようになっているのとは対照的に、アリババは戦略パートナーとしての地位を確立している」。

Hilary Milnes(原文 / 訳:ガリレオ)