CPM削減のため、インフルエンサー活用を進化させる広告主:ペイドでコンテンツ拡散の後押しも

ソーシャルメディア上で人気の人物を、広告主がクリエイティブエージェンシーとして活用しているのはよく知られている。彼らはソーシャルメディアユーザーにRFP(提案依頼書)と指示書を送り、自身のチャネル上でコンテンツを宣伝するよう依頼してきた。

そんな広告主たちのインフルエンサーマーケティングがさらなる発展を遂げつつある。個人のソーシャルメディアアカウントの枠を超え、ペイドメディアを活用してインフルエンサーのコンテンツを拡散するのだ。エージェンシーの幹部たちは、この手法だと著名パブリッシャーのブランデッドコンテンツを購入するよりも安上がりで済むと、口を揃える。

インフルエンサーの定義は人によって異なる。エージェンシー各社によると、フォロワー数の規模よりも、エージェンシーの幹部がユーザーのコンテンツをどう評価するかの方が重要なようだ。コンテンツの生成とディストリビューションをパブリッシャーに直接依頼すると、ブランドが負担する費用は莫大になる。それならば、インフルエンサーを雇ってそれに匹敵するコンテンツを作る、というのがその狙いだ。そして広告主はインフルエンサーのコンテンツをペイドメディアによって後押しする。広告ターゲティングツールを使い、パブリッシャーのオーディエンスと似た層を探し出しているのだ。

インフルエンサーのシンジケーション

米エージェンシーのジャニュアリーデジタル(January Digital)で戦略サービス部門シニアディレクターを務めるメーガン・ジョーンズ氏によると、同エージェンシーは「インフルエンサーのシンジケーション」という手法を使っているそうだ。同氏のチームは、インフルエンサーのコンテンツをパブリッシャーの広告提供の代替手段として利用している。ジョーンズ氏の主なクライアントはファッションおよび美容業界だが、大半のクライアントには大手パブリッシャー製作の10万ドル(約1140万円)規模のブランデッド動画などに割けるほどの予算はない。それに対し、インフルエンサーによる動画制作は2万から3万ドル(約220万から340万円)で済むという。

次にコンテンツディストリビューションの面から見てみよう。たとえば、化粧品ブランドが新作のリップスティックの宣伝で、BuzzFeedの読者をターゲティングしたい場合、まず、ジョーンズ氏のチームはFacebookでBuzzFeedのコンテンツをフォローしているユーザー情報を集める。そこからリップスティックに興味のあるユーザーを絞り込むことで、BuzzFeedの読者であり、かつ同商品の市場の消費者でもある人たちをすくい上げることができる。ほかにも彼女のチームは、トリプルリフト(TripleLift)をはじめとするプログラマティックプラットフォームを活用してパブリッシャーに対し、キーワードによるターゲティングを行い、似かよったオーディエンスを探し出しているそうだ。こうして、後押ししたインフルエンサーのコンテンツは、スポンサードされた投稿としてソーシャルメディアユーザーに向けて投稿するか、パブリッシャーがオープンエクスチェンジで広告インベントリーを販売しているときは、パブリッシャーのWebサイトに掲載している。

「インフルエンサーコンテンツのシンジケーションは今後もトレンドであり続けるだろう。コンテンツの生成だけをインフルエンサーに依頼するのでは意味がないからだ。インフルエンサーは新しいパブリッシャーであり、当社はそれを活用していく」と、ジョーンズ氏。「パブリッシャーにもまだ存在価値はある。だがその価格モデルは現実に追いついていない。パブリッシャーに対するキーワードターゲティングで同じオーディエンスが見つかるのであれば、パブリッシャーはもはや必要ではなくなるだろう」。

オーディエンスと自然に交流

米エージェンシーのアイスドメディア(Iced Media)でデジタル戦略とメディアディレクターを務めるアシュリー・バンクス氏も、ジョーンズ氏と同意見だ。バンクス氏のチームはインフルエンサーを活用することで、パブリッシャーと直接やり取りするより費用対効果の高いCPMでオーディエンスにリーチし、繋がりを築いているという。

「コンテンツの質や妥当性といった面では、パブリッシャーによるコンテンツ生成のメリットはある。だが、その場合は往々にして、一括契約が必要なうえに、パブリッシャーのコンテンツスタジオが作るネイティブアドには、どうしても広告っぽさが残ってしまう」と、バンクス氏。ほかにも、インフルエンサーのコンテンツではオーディエンスと自然に交流できることが多く、インフルエンサーとのメディア契約でも内容をクライアント自身で決められる。

一方で、パブリッシャーと直接関係を持たなければ専有情報であるパブリッシャーの読者層を知ることはできないとバンクス氏。だが同氏は、Facebookのビジネスマネージャを使えばパブリッシャーのコンテンツを共有した人や「いいね!」を押した人へのターゲティングは可能だと語る。それだけではなく、旅行や食事など、キャンペーン戦略に基づいたオーディエンスの興味についてさらに絞り込むこともできる。

パブリッシャーではできないこと

また、別の見方として、アメリカのエージェンシー、ドイチュ(Deutch)でエグゼクティブバイスプレジデント兼メディアディレクターを務めるローレン・テトゥアン氏は、CPMの低い広告については、必ずしもインフルエンサーを利用していないという。同氏のクライアントはパフォーマンスとリーチのバランスを求めているため、彼女のチームはインフルエンサーには通常1クリックあたりまたは1エンゲージメントあたりの支払いを行っているという。これは大手パブリッシャーとの取引ではできないことが多い。だが一方で、高品質な特注品や迅速な納品が必要な場合は、いまでもパブリッシャーに依頼しているという。

「私たちはしばしば特注コンテンツを自社製作しており、インフルエンサーはそういったコンテンツのディストリビューションに喜んで協力してくれる。大手パブリッシャーのなかにはブランド自身のコンテンツはディストリビューションしてくれないところもある」と、テトゥアン氏。「当社は通常、インフルエンサーのオーガニックなチャネルからはじめるようにしている。そのあとペイドメディアや、Facebookやインスタグラムの広告ツールを使ってターゲティングを行っている」と、同氏は語った。

YUYU CHEN(原文 / 訳:SI Japan)
Photo by Shutterstock