アディダス、マイクロインフルエンサーの起用に手応え:招待制アプリでの限定販売が話題に

アディダス(Adidas)は、リオネル・メッシやズラタン・イブラヒモビッチなど有名サッカー選手を広告塔として起用する一方で、いわゆるマイクロインフルエンサーも活用している。

アディダスの事業開発部門を率いるマーク・マコウスキー氏は、7月6日にロンドンで開催されたMMSモバイルカンファレンスで、スター選手ほどのリーチはなくても、マイクロインフルエンサーの影響力は重要だと述べた。アディダスは昨年、デジタルエージェンシーのポシブル(Possible)と共同で、サッカー用スパイクの新モデルのプロモーション用にアプリ「グリッチ(Glitch)」をローンチした。同社がマイクロインフルエンサーの力を認識したのはこのときだ。新製品の試着や購入は「グリッチ」アプリユーザーに限定され、登録するには、すでにアプリを使用しているほかのユーザーからの招待が必要だった。

限定ゆえの熱狂

アディダスは、ロンドン中のサッカーアカデミーから30人の選手を選び、アプリとシューズのデザイン、ネーミング、プロモーションへの協力を仰いだ。のちに約50人に拡大されたが、当初の30人は現在、グリッチでフルタイムで勤務していると、マコウスキー氏は言う。

昨年10月のローンチ以降、グリッチはすぐにサッカーファンが必死に登録したがる製品に仲間入りした。このシューズを手に入れるためには、何とかしてアプリに潜り込まなくてはいけないと、皆が気づいたのだ。人気が最高潮だった頃は、アプリの登録コードがeBayで出品されたほどだ。その後、アディダスは限定コミュニティの間口を広げ、紹介なしの人にもコードを公開した。これに対し、一部のファンは限定プロダクトでなくなったことへの不満を漏らした。だがこの決定は、アプリの公開以降、アディダスが少数のマイクロインフルエンサーとともに、常にプログラムを書き換えていることを象徴している。

「彼ら(発足当初のマイクロインフルエンサー)がブランドコンセプトの主体としての自覚をもったことで、紹介限定コミュニティにすることや、アクセスコードを配布することに関連する、さまざまな意思決定がスムーズに行えた」と、マコウスキー氏は言う。

他地域でも横展開

グリッチがテストケースでうまくいったのは、こうしてサービスに信用を埋め込んだためだと、マコウスキー氏は言う。同氏は売上額を明らかにしなかったが、グリッチがつい先日ベルリンでもローンチし、年内にさらに欧州2都市で展開予定であることからして、最初のロンドンでの売上に重要なステークホルダーも満足しているようだ。グリッチのアプリがロンドンと同じようにヨーロッパ各地で成功を収めたとしたら、2020年までに40億ユーロ(約6000億円)というアディダスのオンライン売上目標の達成は近づくだろう。とりわけ、忠実なファンのデータをさらに充実させられるのは強みだ。マコウスキー氏は、アプリのCRM(顧客関係管理)の面での可能性は発足当初から考慮に入れていた、と豪語する。

アディダスのマイクロインフルエンサー重視は、インフルエンサーマーケティングの標準化という大きな流れに合致している。ブランドは安全管理や測定指標など、さまざまな懸念を抱いており、それがSNSのスターやクリエーターとの協力に影響を与えている。

インフルエンサーの集客力を欲するあまり、ブランドにはイメージとの合致や信頼性を二の次にして、インフルエンサーなら誰でもよしとする傾向があると、トライブ(Tribe)の最高経営責任者(CEO)を務めるアンソニー・スバースキス氏は先述のMMSモバイルカンファレンスで述べている。同氏は続けて、これは「短命に終わる」戦略だと批判した。「インフルエンサーは提携するブランドを選ぶようになってきている。かれらは商品に本物のつながりを感じられなければ、オーディエンスに売り込むのを拒否するだろう。この分野(インフルエンサーマーケティング)に手を出すブランドやエージェンシーは肝に銘じておくべきだ。すでにブランドを利用している顧客こそが最高のインフルエンサーであることを」。

今後の展開

アディダスはデジタル広告の配分を増やしており、今後数カ月のうちにインフルエンサーがますます広告戦略で中核的な役割を担うようになりそうだ。同社の最大の関心事は、グリッチへのマーケティングサポートやモバイル限定のアプローチがない場合に、どうすればコミュニティに根差したビジネスを確立できるかだ。それがたとえ、小さなコミュニティだとしても。

Seb Joseph (原文 / 訳:ガリレオ)