米10代に流行、グループ動画アプリ「Houseparty」とは?:マーケターが押さえておくべきこと

物事は一周して、もとに戻るものだ。90年代の半ば、インターネットはチャットルームと同義だった。そしていま、アメリカの10代の若者たちは、かつての「AOLインスタントメッセンジャー(AOL Instant Messenger)」によく似たアプリに群がっている。かつてのものとの違いは、動画が利用されているという点だけだ。

2016年2月にリリースされたアプリHouseparty(ハウスパーティー)は、若者たちの「リビングルーム」として売り出している。ごくシンプルな仕組みで、最初にユーザー登録を済ませると、スマートフォンの連絡先にある相手と、リアルタイムで仮想の「たまり場」に集まれるというもの。それぞれのビデオ通話には、同時に最大8人が参加できる。

10代の若者が集まるところには、ブランドが必ず顔を出す。だが、Housepartyは将来、Snapchat(スナップチャット)ほどの成功を収めるのか? それとも、ピーチ(Peach)のように失敗するのか? 本記事は、マーケターがHousepartyについて知っておくべきことを、英DIGIDAYのグレース・カフィン記者がまとめて紹介する。

Housepartyの幕開け

Housepartyは、ライフ・オン・エア(Life on Air)が開発した第2のアプリだ。同社が先に開発したライブストリーミングアプリ、Meerkat(ミーアキャット)は、現在サービスを終了している。Meerkatは、2015年にクリエイティブ・ビジネス・フェスティバルのSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト:South by Southwest)で有名になったが、Twitterにプラットフォーム配信から遮断されて潰された。Meerkatが消えたあと、競合するPeriscope(ペリスコープ)やFacebookのライブ動画が、アーリーアダプターたちを抜き去った

人員を削減したあと、チームは方針転換して、2016年2月にHousepartyをローンチ。その際、開発者に共同創業者の夫の名前を使い、意図的にMeerkatとのつながりを隠した。

目標は、たまにではなく習慣的に使われるアプリになること。それこそが、公開チャットからプライベートチャットに(そして、見知らぬユーザー同士から友達同士に)切り替えた理由だった。こうした動きはベンチャーキャピタル業界の関心を集め、Housepartyは2016年12月、WhatsApp(ワッツアップ)やインスタグラムに投資したセコイア・キャピタル(Sequoia Capital)主導の資金調達ラウンドで、5200万ドル(約59億円)を調達した。

英国における出足は遅かったが、Housepartyは2016年の終わりにかけてiTunesランキングをじわじわと上昇。アプリ市場分析をおこなうアップアニー(App Annie)のデータによると、2017年1月には、iOS App Storeのソーシャルネットワークアプリのダウンロード数ランキングで、Viber(バイバー)やSkype(スカイプ)などを抜いて4位の座を確保した。かつてのMeerkatは、広告を打ったにもかかわらず、英国では639位止まりだった。

アプリ内広告の可能性

Housepartyチームはこれまで、広告については沈黙してきた。だが、個人情報取り扱い同意書の細則で、登録時に広告への同意をユーザーに求めており、サードパーティーからの広告メッセージが「含まれるかもしれない」。つまり、ブランドが顔を出すということだ。

ただし、ブランドのコンテンツがプライベートソーシャルネットワーク(または、ダークソーシャルネットワーク)へ割って入るのは難しい。特にHousepartyのようなアプリは、シンプルな単機能しかなく、広告表現の仕組みが限られているため、ハードルが一層高くなる。

Musical.ly(ミュージカリー)のようなアプリと違って、Housepartyはフィード上で新しいコンテンツの発見を主眼とするようなメディアではない。インフルエンサーやセレブではなく、既存の関係、つまりスマホの連絡先リストのネットワークのうえに役立つアプリなので、プロダクトプレイスメントがより困難になっている。

VCCPキン(VCCP Kin) でマネージングディレクターを務めるピート・グレンフェル氏は、「ブランドのメッセージをどこかに流す」としても、友人同士の閉鎖的なグループには受け入れられないだろうと指摘。それでも、Housepartyにはブランドが入り込む方法はあるかもしれないという。たとえば、アプリ上の会話にインフルエンサーを参加させたり、ユーザーの話題から消費者マインドを汲み取ったりすることが考えられる。本記事のために接触したほかのエージェンシー幹部は、定性的調査を実施する環境になりうるという意見に同意した。

アディダス(Adidas)などのブランドは、WhatsAppのようなダークソーシャル(閉鎖的な)プラットフォームのユーザーグループを介してコンテンツを拡散させている。「ソーシャルメッセージングのAI機能が向上したおかげで、こうしたコンテンツの展開が以前よりも現実的になっている」と、マーケティングエージェンシーのチーム・イレブン(Team Eleven)で戦略パートナーを務めるニコラス・ギル氏は語る。

エージェンシーのWCRSの戦略部門を率いるマット・ローズ氏は、ブランドがチャットのスポンサーになる可能性があると予想する。「エンターテインメント系ブランドにとってはとりわけ有効かもしれない。たぶん、シリーズ映画やスポーツチームが、グループ動画視聴を後援するのではないか」と、ローズ氏は述べている。

そのほかの懸念材料

Housepartyユーザーの60%超は24歳未満で、Snapchatの広告主がターゲットにしている年齢層と似ている。だがSnapchatは現在、より年齢層の高いユーザーも増やしている。

ただし、Housepartyのアプリストアにおける評価は4プラスだ(ほかの大半のソーシャルネットワークは13歳以上のユーザー向け)。英デジタルエージェンシーのアイプロスペクト(iProspect)でソーシャルおよび動画のメディアバイイングを率いるロブ・カブロブスキー氏によると、これは、子供向けの広告をめぐり、英国の広告慣行委員会(CAP)の厳しい規則を破りたくないブランドにとって、危険信号になりうるという。

「たしかに、ブランドはZ世代(現在の10代)のユーザーに発見してもらえるだろう。ただし、18歳未満に宣伝してはいけないという点に関して、多くの問題に直面することになる」と、カブロブスキー氏は指摘する。

競合するプラットフォーム

ソーシャルプラットフォームには、互いの機能を盗んできた歴史がある。ただし、インスタグラムやFacebookのようなほかの人気ソーシャルプラットフォームは、基幹サービスにライブ配信を追加する形だったが、Housepartyにはライブ配信機能しかない。

「Facebookがすでにメッセンジャーアプリでグループ動画チャットを展開している。つまるところ、HousePartyが強い独自性を売りにするのは難しい」と、ソーシャルメディアエージェンシーのソーシャルチェーン米国法人(Social Chain USA)でクリエイティブディレクターを務めるカサル・ベラガン氏は説明する。

とはいえ、HousePartyが成功したのは、主要プラットフォームがライブ動画機能を追加したあとのことだ。HousePartyアプリを開くと、目にするのは自分自身とほかの仲間がオンラインになっていること。ここでやることはひとつしかない。このシンプルさをライバルが真似するのは難しいだろう(MeerkatはTwitterに模倣された)。ユーザーの気を散らせるものは何もなく、ユーザーはみな話す、というモチベーションだけしかないからだ。

だが一方で、広告ユニットを必要とする場合、シンプルさを維持するのは、より困難になる。オーディエンスが広告を目にできるほど長く滞在するかどうかで、将来が決まるだろう。

「Facebookが得意でなかったこと、(閉鎖的な環境の維持)にWhatsAppが注力した。WhatAppが得意でなかったこと(動画通話)にSnapchatが注力した。ちょうど同じように、Snapchatが得意でない部分(既存のサービスの上に成り立つネットワークプラットフォーム)をHousepartyは切り崩そうとしている。既存の勢力を切り崩して成功したものが、また新たな勢力に切り崩されるという繰り返しだ」と、英クリエイティブエージェンシーのデューク(Duke)で最高戦略責任者を務めるスティーブ・ストークス氏は語った。

Grace Caffyn(原文 / 訳:ガリレオ)