この手法は新しい! いま体験すべき「360度動画」広告5選:映画的演出、イースタエッグ、バイラルなど…

VRよりも新しくてお手頃な360度動画は、マーケターのツールボックスのなかでもお気に入りになりつつある。

Facebookの360度動画プラットフォームでは、2016年4月までの12カ月間に、2万を超えるアップロードがあった。また、YouTubeにアップロードされた360度動画の大半は再生回数が10万を超えている

360度動画の魅力は、アクションを身近に感じる没入感を体験できることだ。とはいえ、新しいテクノロジーの例にもれず、未発達な部分もある。たとえば、エンゲージメントを追跡するツールの不足だ。我々は今年のはじめ、米国のブランドが360度動画をどう使っているかを紹介した。英国のブランドはいま、このフォーマットの可能性を別の形で試している。

360度ならではのバイラル動画

360度動画で見る、フォーミュラEカーを跳び越えるダミアン・ウォルターズの後方宙返り
2012年にスタートした電気自動車のカーレース、FIAフォーミュラEチャンピオンシップは、360度動画を使って短編動画コンテンツに没入感を付け加えた。1回きりのプロジェクトや大きな予算を使った広告とは異なり、フォーミュラEは360度動画のフォーマットを使って、YouTubeユーザーに衝突、スタント、ドライバー側のアクションなど、危険ともいえるコンテンツを製作し、提供した。

スタントマンのダミアン・ウォルターズ氏が高速走行中の車を後方宙返りで跳び越える動画は、120万回以上再生された。カルトLDNのリップスコーム氏によれば、この種のコンテンツは低予算でつくれるが、プランニングが重要だという。「従来であれば編集に頼ることができたが、こういったものの場合は入念な事前計画が必要だ。1テイクしかないのだから」と、同氏は話した。

しかし一方で、360度動画ではないオリジナルの動画は再生回数が500万回を超えた。ブランドが360度のフォーマットの可能性を活かしきるには、まだまだ先が長そうだ。

まるで映画な360度映像

#ImagineBoleyn ブーリン・グラウンドを360度動画で再体験
オペラメディアワークスEMEA(Opera Mediaworks EMEA)の英国担当マーケティングマネージャー、ニコラス・クロウ氏によれば、360度動画は体験が重要な核となる市場に適しているという。同氏は、「消臭剤などの日用消費財ブランドには不向きだ」と指摘した。

このことを念頭に、サッカークラブチームのウエストハム・ユナイテッドFCは、2016年5月に公開した360度動画プロジェクト「#ImagineBoleyn」で、映画的アプローチをとった。この動画は、チームの旧ホームスタジアムに対しての感謝を示したものだ。ウエストハムは、イーストロンドンのオリンピックスタジアムに本拠地を移すことになっている。

俳優レイ・ウィンストンのナレーションとともに、視聴者は控室からピッチまで、スタジアムのさまざまな場所を体験する。カットも、特殊効果も、感動的な音楽も、この動画は視聴者の心の琴線に触れるように作られた。現在までにFacebookでの再生数は31万回を超えている

360度映像で宝探しクイズ

ジョージホームの360度ツアー
先述のクロウ氏は、ブランドが360度動画を利用する際の大きな課題として、テキストや視覚効果の見せ方を挙げる。「360度動画を提供する制作会社は多いが、ちゃんとしたものを作るにはかなり費用がかかる」と同氏。

従来の動画と違い、360度動画ではユーザーが監督の椅子に座ることになる。映像がはじまれば、どの人や物体に注目するかはユーザーの自由だ。この特徴を活かして、スーパーマーケットチェーン、アスダ(Asda)の家具や衣類のオンライン通販ブランド、ジョージ(George)は、春夏のホームウェアコレクションを発表した際、その特徴を活かしたゲームを仕掛けた。

ジョージは「イースターエッグ(隠しコンテンツ)」を、自社の商品でコーディネートされた家のなかに隠し、ツアー動画のなかでユーザーが見つけられるようにしたのだ。すべてのイースターエッグを最初に見つけた人には250ポンド(約3万3000円)相当のクーポンをプレゼントしている。

エージェンシーのファロン(Fallon)が製作したこの動画は、Facebookで1万1000回以上閲覧され、YouTubeでは100万回近く再生された。

「このようなコンテンツは、通常コンテンツよりずっと役に立つ。イースターエッグがあれば、人は何度も何度も見てくれるからだ」と、カルトLDNの最高経営責任者(CEO)、ブライディー=レイ・リップスコーム氏は米DIGIDAYに語った。

デジタルショールームを360度化

103EXの中へ:360度VRで気軽に体験
自動車は明らかに没入的テクノロジーと相性がいい。アクセンチュア(Accenture)の調査によれば、消費者の75%が、自動車の購入プロセス全体(車探しから融資まで)をオンラインで行いたいと考えている。

ロールスロイス(Rolls Royce)は、360度動画を使ってこの変化に対応しているブランドのひとつだ。103EXモデルの発売に際して、ロールスロイスは美しいグラフィックと華麗なサウンドを使って、車の特徴を紹介する動画を製作した。YouTubeでは18万回ほど再生された。

限りなくライブな360度体験

バブアー春夏2017、ロンドンメンズコレクションにて
アウトドアファッションブランドのバブアー(Barbour)は、多くのブランドと同様、デジタルツールを使って、これまで報道関係者やVIPしか入れなかった場所にファンを招き入れている。バブアーは2016年6月、メンズファッションウィークで開催した2017年春夏のショーを360度カメラで撮影した。ショーの動画制作はカルトLDN(Cult LDN)というエージェンシーが担当し、編集を経て、動画は撮影から1時間もしないうちにバブアーのソーシャルチャンネルにアップロードされた。

バブアーのグローバルマーケティング責任者、ポール・ウィルキンソン氏は、米DIGIDAYの取材に対して、「360度コンテンツに参入するプラットフォームが増え、オーディエンスのエンゲージメントも増えるにつれて、我々は革新的でワクワクするような方法でユーザーとつながりたいと考えた」と語った。

いまのところ、360度動画のライブストリーミングは不可能だ。しかし、VRの没入感とSnapchat(スナップチャット)やペリスコープ(Periscope)のライブ感を結びつけたいブランドにとっては、それは理にかなった次なるステップとなるだろう。

Grace Caffyn (原文 / 訳:ガリレオ)