Apple Watchのアプリ開発で参考にしたい3つの成功事例

市場リサーチ企業カナリス(Canalys)によると、2015年4月よりAppleが出荷したApple Watchは、およそ700万本だという。この数字は、競合商品すべての出荷数よりも多い。

スマートウォッチ市場は、これから開拓されていくことに疑う余地はないだろう。まだ若い市場だが、多くのブランド企業は失敗を恐れずにApple Watchのアプリ開発を進めている。

しかし、Apple Watchのアプリ開発には課題がある。そのひとつは、Apple Watchをスマートフォンの延長線上にあるデバイスとして捉えることをやめることだ。通知の確認だけに機能を絞るなど、その小さなスクリーンに適したUXやサービスを考えることである。

デジタルエージェンシー、デジタスLBi(DigitasLBi)にてテクノロジーパートナーを務めるセルジオ・ファレッティ氏は「Apple Watchで通知を受けることは可能だ。しかし、多くのApple Watchユーザーは同時にスマートフォンを所持しているため、わざわざApple Watchで複雑な操作を行いたいとは思わないだろう」と話す。

「Apple Watchのアプリ開発の秘訣は、ユーザーがいつスマートウォッチを使用し、いつスマートフォンを使用しているのかを学ぶことだ」。

ブランド企業もやっとApple Watchの利便性を味方につけ始めている。以下に、Apple Watchのアプリの成功例を3つ紹介しよう。

ピザの「ワンタップ」注文

イギリス人は、酒を飲みながらピザを食べることが大好きだ。そこに注目したドミノ・ピザ(Domino’s Pizza)は、2016年の1月1日に新たなApple Watchのアプリをリリースし、ワンタップでピザの注文を可能とした。

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ドミノ・ピザ – 酔っぱらいの食欲のために

このアプリを使うのには、まずドミノ・ピザのWebサイトのイージーオーダーセクション(Easy Order)にてユーザーが好きなピザを登録する必要がある。そして、Apple Watchと接続すれば、Apple Watchのスクリーンを1回タップするだけで登録しているピザの注文ができる。また、ドミノ・ピザのオーダー状況追跡システムである「ピザトラッカー」とも連動しているため、注文状況を確認することも可能だ。

3分間のミニ瞑想タイマー

瞑想アプリである「ヘッドスペース(Headspace)」は、「心のためのスポーツジム」とも称され、お金はあるけど時間がないというユーザーにとって最適なアプリだ。

iPhone用のアプリでは10分間のさまざまなガイド付き瞑想ルーチンが選択できるが、Apple Watch用のアプリではSOSボタンが表示されているだけだ。頭のなかを整理したい時、このSOSボタンをタップすることで、3分間のミニ瞑想が行える。

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ヘッドスペース – 精神安定のためのSOS

「ヘッドスペース」は世界中に300万人ものユーザーを抱えている。そのユーザーには俳優のグウィネス・パルトロウやジャレッド・レト、ザック・ブラフなどのセレブも含まれる。「ヘッドスペース」の共同設立者であるリッチ・ピアソン氏は、将来的には、カスタム化可能で直感的な操作ができるアプリをウェアラブル端末ユーザーに提供したいと話す。

運動中の心拍数モニタリング

ランニングやサイクリングの計測結果を記録するアプリ「ストラヴァ(Strava)」は、ソーシャルメディア上でのトレーニング自慢の火付け役といっても良い。

先述のデジタルエージェンシー、デジタスLBiのファレッティ氏が評価しているポイントは、「ストラヴァ」がApple Watch内蔵のリアルタイム心拍数計測データを活用しながらトレーニングをするユーザーの行動を理解していることだ。そして、スマートフォンを通してSNSにデータを投稿しやすいという機能も成功の一因だろう。

「ストラヴァ」のシニアiOSエンジニア、エリック・ケネディ氏は「ランニングやサイクリングのデータとともに心拍数を表示しているのが特徴だ」と語る。「これによって、アスリートは画面をスワイプすることなく、トレーニングに集中できる。私たちはApple Watchが備えている能力と、アスリート的な考え方を融合させた」。

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ストラヴァ – 控えめな自慢屋さんへ

「最終的に、ユーザーの時間節約につながらなければ、そのアプリに価値はない」と、デジタルエージェンシー、エッセンス(Essence)のモバイル部長、リアム・プーク氏は語る。

たとえば、Apple Watch用に銀行アプリがあまりヒットしていないというのは当然といえば当然だ。銀行残高を調べるのは、せいぜいモバイルで1週間に数回というところである。だから使用頻度が少ない場合、ユーザーの時間を節約したということにはならないのだ。

「現在、Apple Watchは積極的にテクノロジーを採り入れようとしている市場に向けてアピールされている。しかし、今後主流アプリとなるためには、ユーザーの間で何らかの行動的変化が起きるか、もしくはApple Watchの大きな普及のきっかけとなる『キラーアプリ』を生むしかない。スマートフォンの場合、キラーアプリは地図アプリだった。スマートフォンに大きな付加価値を与えた」と、プーク氏は語っている。

酔っぱらいのためのピザ注文アプリと3分間瞑想アプリだけでは、Apple Watchがスマートフォンのような日常に欠かせないデバイスになるにはまだ遠いようだ。

Lucinda Southern(原文 / 訳:BIG ROMAN)
Images courtesy of Domino’s, Headspace and Strava.