ブランドの「スラング」利用に、冷ややかな反応のユーザー:ソーシャルマーケは正攻法が吉?

2015年、米国のブランドたちは、ソーシャルマーケティングにおいて本当にうまくやった。

各社とも、いまの若者のフレッシュな言葉使いに気づいたのだ。人気ラッパーであるドレイク風のジョークを飛ばし、若者に喜んでもらうのにふさわしく振る舞ったといえるだろう。

ソーシャルメディア分析企業の「ブランドウォッチ(Brandwatch)」が、2015年1月から11月に計測した結果によると、マクドナルドからスプリントまでの168社が「Bae(バエ:愛おしい人、カレシ、カノジョ)」や「On Fleek(オンフリーク:的確、しっくりくる)」という若者言葉を駆使して、ソーシャルの話題作りに奔走していたという。ブランド数でみると、若者言葉を利用したのは660を超していた。

しかし、ただ若者言葉を使えばいいというわけではない。家庭料理レストランチェーン「オリーブ・ガーデン(Olive Garden)」ですら、その「クール」な言葉を使いはじめたころには、おそらく「クール」という特性はすでに失われている、ということだ。

Olieve-Garden

オリーブ・ガーデンのツイート「あなたのBae(恋人)がブレッドスティックが好きじゃないって? 別れましょう。あなたの人生に『その種のネガティブなこと』は必要ありません」

間に合わせの策でしかない

「多くの企業が、その場しのぎや表面を取り繕ったりと『安手の宝石』に頼りすぎている」と、消費者動向分析企業インサイト・グループ(Incite Group)の創業者兼CEOであるニック・ジョンソン氏。「そうした企業は自らを『ストリート系』ティーンに知ってもらおうと多大な努力を重ねている。だが、実際にはティーンはそっぽを向いている」。

ジョンソン氏は、ブランドが「Bae」といった言葉を使うのは、間に合わせの策でしかないと切り捨てる。消費者に過剰に迎合的であり、買いたいという欲求を引き出すためのリアルで持続的な努力には当たらないと指摘した。

ブランドによる「ヒップな」メッセージの連発は、アプローチしてきた消費者を冷淡にさせ、警戒心を呼び起こすだけでなく、シニカルな思いさえ抱かせる。Twitterの@BrandsSayingBaeでは、こうしたメッセージをパロディにしているほどだ。このアカウントほど、ブランドに前途を悲観させる場はないだろう。

むしろ正攻法が好効果

エージェンシーABXによる「広告ベンチマーク指標」の分析では、マクドナルドの新しい「ブレックファスト・オールデイ」キャンペーンでは、いくつかの発見があったとしている。

消費者向けに商品を強調する方が、ソーシャルメディアやハッシュタグに重点を置くよりも効果的だったという。前者の指標は133ポイントを付け、行動を促す結果となったが、後者は110ポイントにとどまり、消費者の購入モチベーションにつながらなかったからだ。

また、マクドナルドは「Bae」や「On Fleek」を84回使用。ブランドでは最多であることも分かった。その多くが「ブレックファスト・オールデイ」の発表時に使われていたが、消費者の反応は明らかに良くなかったという。

「言葉」に頼りきってはいけない

当初、消費者はブランドがオンライン上で生意気にとられる発言をすることに興味をそそられた。いままでと違うと面白がられ、顔が見えない企業に人間味を感じさせるのに役立った。

ダイレクトマーケティングエージェンシーのワンダーマン(Wunderman:電通イージス系)のCEO、ジェイミー・グットフレウンド氏は「初期の段階では、こうした言葉によって消費者の注目を集めることができ、Twitter上で即座に反応があった」と語る。

しかし、こうした大手ブランドが自分たちの膨大なデータにアクセスしていることに消費者が気づくと、新奇さは次第に消えていった。「いまや社会のルールが『自分の人生を良くするに当たり、データをどう活用していくか』になっているにもかかわらず、ブランドはただただ『言葉』に頼り切るばかりだ」。

真の「使い勝手の良さ」とは

なかには適切な方法を知っているブランドもある。先進的な例はドミノピザのようなブランドだと、グットフレウンド氏は指摘する。同社が2015年11月にリリースした「Easy Order(簡単注文)」ボタンは、ワンクリックでピザを玄関先まで届けてくれる。

一方Netflix(ネットフリックス)では、だらしない両親向けに、子供を寝かしつけようとベッドに引き込ませる「ダイノトラックス(Dinotrux)」という5分間のビデオを配信している。「見せてほしいが、語りかけてほしくない。それが真に有用な『使い勝手の良さ』なのだ」。

スラングの寿命は短い

いかなるイベントでも、消費者への訴えかけにスラングを使いすぎるのは危険だ。それが密やかでカッコいいと見なされる時期がどれぐらい続くか、誰も分からないからである。

一般論ではあるが、「押しつけがましさが少なく、限定された集団のなかでよりも、広く普遍的に使われている」言葉の方が、息が長い傾向にあると、カナダの言語学者であるグレッチェン・マカロック氏は指摘する。

「On Fleek」のような、アングラな文化から沸き上がる若者限定のスラングに詳しくなっても、そうした言葉は廃れがちだ。「Bae」と両方を使ったブランドの例は660だが、圧倒的に反応があったのは「Bae」であり、93%だった(ブランドウォッチ=Brandwatch=集計)。また、両方とも2015年1~3月期がピークだったという。

また新しい流行語が生まれる

しかし、すべてのブランドがクールに思われようとする試みを即座にやめることは期待しない方が良い。すでにひとつの言葉が台頭しはじめており、皆さんの子ども(8歳から12歳)からすれば「何をいまさら」と思われているかもしれないからだ。

「スモール(Smoll)」という言葉で、現代語辞典では多くの定義がされているが、「極端に小さくてすごいキュート」という解釈が1番分かりやすい。そして、これが次にブレイクしそうなのだ。

Tanya Dua(原文 / 訳:南如水)
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