2016年に実践へつなげたい、10のマーケティングトレンド

本記事は、アドテックを主催する企業コムエクスポジアム・ジャパン株式会社のiMedia Chairmanである中澤圭介氏による、同社のブログ記事からの転載となります。

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2016年がスタートした。リオ・デ・ジャネイロオリンピックや米国大統領選挙など、世界的に注目されるイベントもあり、それらに向けた新たなマーケティングアプローチも出てくる。マーケティングに携わる人にとっては、発見の多い1年になりそうだ。

ただ、発見しているだけでは、ますますスピードアップする世の中の、そして顧客の変化についていくのは難しい。自らが積極的に動き・考えることで、発見を即実践につなげていきたい。そこで、昨年を振り返りつつ、2016年のマーケティングトレンドについて考察したい。

①企業を挙げてのデータ活用の本格化

2016年は、長年の課題であった「経営陣のデジタルマーケティングに対する理解度向上」が進む。ビッグデータを活用する多くの企業が、データを統括する専門の部門を持つようになっており、部門ごとで所持していたデータを一括管理するという体制が整いつつある。つまり、経営にかかわる重要事項として、デジタルマーケティングが位置付けられることとなる。マーケティング担当者がデータ活用について、常に経営者目線で考え・話せるようになることで、この流れをより強くすることができる。

②コンサルティング企業のさらなる躍進

データマーケティングが経営課題として捉えられることで、この分野において経営コンサルティング会社の存在感が一層高まる。近年、広告会社とコンサル会社が競合することも増え、コンサル会社がエージェンシーを買収し、クリエイティブなどすべてに応えられる体制を整えてきている。企業は、どこをパートナーとすべきか、より広い見地から考えて選べるようになり、コンサル会社にとってはチャンスが広がる。エージェンシーは、自社の独自の強みや、貢献できる点を磨いて明確にクライアントに提示することでチャンスを広げていきたい。

③カスタマージャーニーとオムニチャネルの融合

デバイスの進化によって生活者の行動は一層複雑になり、情報接点と購買体験の組み立ては、もはや不可分と言える。企業の都合でそれらを分けて考えるのではなく、本当の意味で顧客を中心に置いたコミュニケーションと購買体験を一緒に組み立てることが求められる。そうすることで、より満足度の高い顧客体験の提供を実現することができる。

④コンテンツの量から顧客目線コンテンツの質の向上へ

2015年はオウンドメディアの立ち上げ、コンテンツを増やすという最初のステージだった。2016年は顧客が本当に必要としている情報は何かを正しく把握し、質の高いコンテンツを充実させ、それらを効果的に届けることへの投資が増えるステージに移る。自社の商品・サービスのカテゴリーにおいて、顧客の求める質の高いコンテンツを生み出せるのは誰なのか? プロフェッショナルとパートナーシップ体制を築いてコンテンツを作ることが、顧客から支持され、継続的にアクセスされるオウンドメディア構築につながる。

⑤よりリアルな体験提供への投資

コンテンツの重要性が増し、各社が力を入れる中で差別化を図るには、顧客によりリアルな体験を提供できるかが重要となる。たとえば、オキュラスのようなバーチャルリアリティーの分野は、体験者に感じさせられることの範囲が広がり精度も飛躍的に高まっている。どの技術が自社の商品・サービスを顧客にリアルに体験させられるのか、プラットフォームを見極めて積極的に投資を行うことでより有効な施策を行えるようになる。

⑥アトリビューション&行動予測

2015年はPVなど、従来の測定指標ではなく、サイトの滞在時間やシェアの数、ターゲットに正しく届いているか、ユーザー単位の広告接触の検証など、目的によってどの指標を重視するかを決める動きが広がった。それに加えて2016年は、測定結果と各種データを基にしたマーケティングオートメーションが進み、セグメント・各種施策がさらに精緻化する。そこからさらに、顧客の行動を予測するエンジンの活用にも取り組むことで今後に向けての知見を蓄積し、他社に先んじることができる。

⑦動画活用の転機

2015年は動画を活用する企業が一気に増え、認知から購入に至るまでの各顧客接点に適した内容で動画を作成するようになった。2016年はその流れを継続しつつ、スマートフォン経由での動画視聴の割合が高まっていることを受けて縦型の動画の制作・活用が進む。すでに広告会社、制作会社、メディアが連携する取り組みも始まっており、目的ごとに最適な縦型動画の見せ方や企画など、クリエイティブ面での大きな変化・進化に期待したい。

⑧フィンテック(Fintech)のマーケティング活用が本格化

2015年末、金融庁は銀行の業務範囲規制を緩和し、フィンテックに積極的に取り組めるようにすると発表した。フィンテックのスタートアップ企業と投資信託選びをサポートするスマートフォンアプリをリリースする動きもあるなど、いよいよ日本でもフィンテックの取り組みが本格化する。決済の簡素化や仮想通貨など、生活者の購買行動を大きく変化させることは間違いない。所有する資産情報など、取得できるデータのことも考えると、応用分野の幅は非常に広い。この分野への取り組みは欧米が数年先行しているので、海外の動きをウォッチしたうえでどう取り入れるかを考え・素早く行動したい。

⑨人工知能によるビジネスの進化

Googleの「ディープラーニング」への取り組み強化やIBMの人工知能システム「ワトソン」の利用など、人工知能のビジネス活用は拡大の一途。問い合わせ内容の判別による早急なカスタマーサポート、生活者の購買傾向や好みの把握に基づいたレコメンドなど、コンシューマーに向けた活用も進む。いち早く取り組みをスタートさせた企業が大きなアドバンテージを得られるため、さまざまな活用事例が一斉に出てくるだろう。

⑩スタートアップ企業との共創

これからは、メディア・国内外・デジタルか非デジタルかといった枠にとらわれず、顧客の体験価値を向上させるために社内外のあらゆるリソースを活用しなければならない。世界では、あらゆる分野で「デジタルを活用して従来の常識を破壊しよう」と考える会社が立ち上がっている状況だ。企業の規模に関係なく、組むべき技術・ソリューションを持っている企業を世界中から見つけるためのネットワークを構築し、見つけたらすぐにアプローチできるようなフットワークの軽さが大きな武器になる。

変化のスピードに対応し、さらに自らを変革させるためにも、正確な情報把握が必要だ。とはいえ、海外メディア、最新のソリューション、注目のスタートアップ企業など、マーケターが目を向けるべき範囲がとても広い。それらを常にチェックし、適切な情報をキャッチアップする仕組みが整っているか、そして何より自社の顧客を深く理解した上で目的が設定されているか。その上で各トレンドの中から必要な要素を取り入れ、大きな成果につなげていきたい。

Written by 中澤圭介
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