「デジタル変革」が加速する、日本のマーケティング業界:2016年のトレンド予測

本記事は、Supership株式会社にて広告事業部のデジタルエージェンシー事業部長を務める菅原健一氏による、寄稿コラムとなります。

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2015年を振り返り、2016年のマーケティング業界のトレンドを予測していきたい。2015年、みなさんに変革は起きただろうか? 自らを改革できただろうか? 世界は急速に変わり始めている。ユーザーは新しいデバイスをすぐに使いこなし、ジェネレーションZに代表される新しい世代やカルチャーが生まれている。

これを読む、マーケターのあなたはどうだろうか。

世界中で起きているイノベーションはあなたの都合では止まらない、そしてどんどん変化の速度は速くなっていく。想像してみていただきたい。10年後の未来から「今」を振り返ってみると、おそらく変化が一番緩やかなのは「今」である。これ以上速くなる変化のスピードに対応するために、変化に合わせて行動を変えていくためには今すぐ対応すべきである。

マーケティングが明確に投資と位置付けられる

2015年12月、アドテック東京、最初のキーノートは、WPPチーフデジタルオフィサー スコット・スピリット氏/資生堂ジャパン株式会社 マーケティング本部長 音部大輔氏/VML 代表 荻野英希氏だった。

世界最大のエージェンシーグループWPPのスピリット氏は、企業の投資先は「データ」「人材」「テクノロジー」であるとし、音部氏はブランドのマーケターとしてROI(投資対効果)の重要性を説き、そのためにもマーケティングの目的が何かを常に問い続ける必要があることを語っている。

このようにマーケティング活動は投資の行為であり、戦略的な判断と、ROIやROAS(広告費用対効果)など投資の回収を行う重要性が語られた。

従来の宣伝部では、広告を出すことの目的から、これらが曖昧な部分があったと思う。今後、よりROIの計測やシミュレーションに力が入るとともに、それら計測の仕組みが確立されていくと予想される。

イノベーションとアントレプレナーシップ

Uber(ウーバー)やAirbnb(エアビーアンドビー)に代表されるように世界中で起きているイノベーション。メルカリなどのCtoCもそうである。このように世界中の「車・ドライバー」と「乗客」や「部屋」と「泊まりたい人」、つまりは何かを「売り(貸し)たい人」と「買い(借り)たい人」がスマホアプリひとつで結びついていく時代になった。

メッセンジャーがコミュニケーションを、ソーシャルメディアやキュレーションメディアが多くの情報を提供し、ユーザーは常に待たされることのない状態が当たり前になり、自然と生活が変わっていく。

おそらくスマホが起こした変革以降、明日の待ち合わせを「19時にここで待ち合わせし、雨が降ったらあのカフェに変更」と入念に計画する人はいなくなったし、CDショップで、お気に入りのアルバムをディグる(digる:1枚1枚ジャケットを見て探す)こともなくなっただろう。一度起きた体験の変化は、元には戻らない。きっともう昔の体験はできない。試して欲しいが、今の時代にCDショップで1時間CDを探すのは苦痛だ。集中力もおそらく持続しない。

これが知らずに起きている変化である。

自分たちを含めて人間は急速に変化をしている。若い人なら固定観念がない分、なおさらである。この変化した人間に、商品やサービスを受け入れてもらう必要があるのである。

2015年、多くのカンファレンスやサミットで、このイノベーションとユーザーの変化について語られた。マーケティングにも、このイノベーションを起こすためのアントレプレナーシップ(起業家精神)が必要になるのである。

デジタルはマーケティングの中核へ

日本人のメディア接触の44%がすでにデジタルになっている。ROIを算出するためにも数値化は必要である。データに基づいた投資判断をするにもデジタルは最適である。

このようにデジタルシフトをする土壌は整った。数年前に思われていたような、デジタルが何か特殊なものであるという考えは捨てていい。デジタルはマーケティングの中核となり、投資を含めた意思決定を行うための最良の場となり、ユーザーと繋がる最適な手段となる。

テレビと動画のハイブリッド

最後に、米国での数年前から行われている広告業界の一番大きなチャレンジが、ついに日本でも2016年から本格化しそうな気配を感じている。

大きなトレンドとして、

    ・若い世代はすでに半数近くテレビを見ておらず、従来のテレビを使ったコミュニケーションが困難になってきた。

    ・一方でNetflixやhuluなどであれば、テレビのコンテンツをデジタルでは観るという傾向もあり、コンテンツとしてテレビが死んだわけではない。

このためテレビとネット動画広告を組み合わせた、最適なコンテンツ制作・広告設計を行う必要性が出てきている。

海外では映画やテレビ番組のなかに商品を入れる「プロダクトプレイスメント」は普通に行われる。日本でもこのように広告手法が変化することで、「クリエイティブの変化」や、広告であっても尺のバリエーションは多様化するため目的に沿った「素材の長さの変化」や、ターゲットの特性を見ながら「テレビ(or/and)動画」などを考えていく必要がある。

Facebookや日本の一部の正しいデータをもった事業者で動画広告を配信する場合は、その指標はGRP(Gross Rating Point:延べ視聴率)ではなくTRP(Target Rating Point:ターゲットの延べ視聴率)となり、マーケターの求めるターゲットに限定して動画を配信することもできるため、動画を用いたコミュニケーションが、よりROIに直結する活動となるだろう。

2016年へ向けて

このように変化が激しい時代のなかでマーケターは何をすべきだろうか。

難しく考えることはなく、テクノロジーを信じ、ユーザーの変化を捉えることでより「本質的な目的」を追求出来るようになると信じている。

Written by 菅原健一
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