ロンドンに「ユニコーン企業」は、なぜ生まれにくいのか? 〜その誕生の仕組みを考える

英ロンドン市内の一角、新興テック企業が集まる場所「シリコン ラウンドアバウト」は、Uber(ウーバー)やAirbnb(エアビーアンドビー)のような世界規模の企業をまだ生み出していない。資金調達の機会と規模を拡大する能力は、米国並みとされているものの、そういう企業が今後「シリコン ラウンドアバウト」から誕生するかどうかは、いまだ未知数だ。

もちろんUberやAirbnbは、新興企業が目がくらむような成功を収めた類い希なる事例だろう。だが、世界には「ユニコーン企業」(評価額が10億ドル[約1200億円]を超えている非上場ベンチャー企業)が145社も存在する。

ユニコーン企業の評価額を見ると、2009年に創設されたUberが510億ドル(約6兆1300億円)でもっとも高い。2008年に創設されたAirbnbが255億ドル(約3兆600億円)で3番目の高額となっている。

英ユニコーン企業はたった5社

これらのユニコーン企業145社のうち、英国で創設されたベンチャー企業は、わずか5社。ファンディング・サークル(Funding Circle)、Powaテクノロジーズ(Powa Technologies)、トランスファーワイズ(Transferwise)、ファーフェッチ(Farfetch)、シャザム(Shazam)に留まる。

最初に挙げた3社は、フィンテック(Fintech:IT技術を活用した金融サービス)企業だ。フィンテックは、ロンドンが長年にわたって市中心部にある金融街と結びついているおかげでブームになっている。だが、消費者向け技術を提供する「ユニコーン企業」、つまり、世界各地のUberやAirbnb的な企業は、より多くの金と名声を惹きつけている。

「シリコン ラウンドアバウト」という名称自体が、カリフォルニア州にあるシリコンバレーを意識したものだ。だが、2008年に誕生したこの名称は、1971年にそう呼ばれるようになったシリコンバレーと比べると、赤ん坊のようなものだろう。シリコンバレーは40年以上、デジタル業界の「次なる大物」を探し求める投資家に大いに支えられてきたのだ。

以下で、「シリコン ラウンドアバウト」からUberやAirbnbのような世界規模の企業が誕生するのは時期尚早である理由をあげる。

1. 投資ペースが緩やか

資金調達エコシステムの大部分は、当然ながらシリコンバレーに基盤があり、年々活性化している。世界4大会計事務所アーンスト・アンド・ヤングの市場調査によると、カリフォルニア州では、2014年の投資額が前年比で倍増したという。それだけの金額をすぐに利用できるおかげで、米国のベンチャー起業家は有利な立場にある。

投資家が学生の負債を完済して起業家精神を掻き立てることも、以前から知られている。だが、英国の卒業生は、それとは少し異なる状況を目の当たりにする。

英国では、STEM(科学、技術、工学、数学)専攻の卒業生が数年前から減少しており、有能な人材の不足につながっている。それを受けて英政府は、STEM分野への関心を高めることを重視する傾向があり、起業家にとってのチャンスは英国で徐々に拡大している(2014年、ユニバーシティカレッジロンドンが起業講座をはじめて開設し、英国政府はさらなる支援を提供し始めている)。だがその一方で、資金調達と教育の機会の変化によって、結果がもたらされるまでには、長い道のりがある。

ゆっくりと着実なペースは、英国式の資金調達にも合っている。米国と比べて資金調達ラウンドは慎重で、50万ポンド、100万ポンド、300万ポンド、500万ポンド、1000万ポンドというサイクルで段階的に進められ、弾みがつくまでに時間が掛かる。

2. 地理的な課題

欧州には国境があるため、企業が急速に規模を拡大することができない。だが、資金調達したカリフォルニア州の企業は、驚異的なペースで規模を拡大できる。なぜなら、カリフォルニア州が広大な米国における他地域への玄関口だからだ。

マニング・ゴットリーブOMD(Manning Gottlieb OMD)における起業促進部門ビヨンド(Beyond)の責任者であるスティーブ・エドワーズ氏は、「その点では、Uberのモデルが格好の例とされる。新たな都市に進出する際には、ドライバーの供給(ドライバーへの奨励金)と需要(顧客に対する宣伝と割引)に多額の投資を行っている。そのため最初はとても費用が掛かるが、個々の事例に基づくと、半年後には黒字に転じる」と語っている。

一方で同氏は、フランスの「ブラブラカー(BlaBlaCar)」とも協力してきた経歴がある。米国でウーバーが展開する、「ウーバープール(Uber Pool)」に似たフランスの相乗りサービスを、イギリスに展開することについてもコメントしてくれた。

「フランスとイギリスでは、言語も文化も、交通規制もちがう。まったく新しいプロセスなので、従来までは問題なくできた物事のペースが落ちるのはいうまでもない。この変化を合わせていくためには我々も学ばなければならない」。

3. すべては時間の問題

ロンドンは新興企業を育てるという点ではまだ歴史が浅い。すばらしい事業アイデアを生み出す力を備えた企業はあるが、そのような企業がUberやAirbnb並みのスピードと積極性で規模を拡大することは、いまのところなさそうだ。業界がこうした「ユニコーン企業の幻影」にとらわれず、規模と富をすばやく勝ち取ろうとする企業が少なくなることを願う。

とはいっても、ロンドンの起業文化がさらなる成功を収めるのは時間の問題だ。その市場が成熟するには、より多くの時間が必要ということだ。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)
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