広告志望の学生たちへ。就職を後悔しない5つの進路:失業中コピーライター(54歳)の告白

このコラムの著者、マーク・ダフィ氏(54)は、広告業界を辛口批評する人気ブログ「コピーランター(コピーをわめき散らす人)」の運営人で、現在、失業中のコピーライター。米大手Webメディア「Gawker」でも週刊コラムを担当し、直近では、世界一のバイラルメディア「BuzzFeed」で「広告批評」記事を担当していたが、2013年に解雇を通達された。

◆ ◆ ◆

小洒落た、そしてまったく意味がない(ここのところはあとで説明する)広告学校の「マイアミ・アド・スクール」か「ポートフォリオセンター」を卒業して(もしくはする予定)、履歴書も「まじでヤバイ」と褒められた。さあ、キミはこれからどうする?

親は金持ちか? ならば大学に戻りテクノロジー関係の学士号をとれば良いじゃないか。金持ちじゃない? ……うーん。まあ、ジャーナリズムの学士号じゃないだけマシかもしれんな。

少しでもいい仕事をしたいと思っているのなら、ここである問題が発生する。アメリカの広告代理店のクリエイティブの質は全体的に15年前とくらべ、明らかにひどくなっている。この10年間で、この世の誰よりも広告を見てきた私が言うのだから間違いない。

逃亡する、有能なクリエイターたち

クオリティの低下の理由としてあげられる1つは、優れたクリエーターたちがなにかを察知したように、成長しすぎた広告代理店から逃亡していることだ。なのに、こういった代理店に残った連中は、自分たちの平凡なアイデアでお祭りさわぎ。すべては、平凡なアイデアを素晴らしいと毎日のように褒めたたえる業界紙のせいだ。しかも、売り上げが伸びて欲しいがためだけに書いているだけだからな、この業界紙様ときたら……やれやれ。

しかしこの現状、若いキミたちにとっては朗報なのかもしれない。そこそこな履歴書を持ってさえいれば、隠しきれないほど興奮した広告代理店のエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターたちが、こぞってキミを欲しがるだろう。そして、君は採用され、現実を知ることになるのだ……。

どんなにまともなアイデアでも、褒めてくれない上司。キミの素晴らしいアイデアを平気で盗むか、ボツにするか、ズタズタに切り裂いて見るも無残なものに変えるしかできないお偉さん方。そんな連中に恐怖さえ覚えるだろう。そして多分キミも……遅かれ早かれ会社を辞めることになる。

広告志望の学生が、就職を後悔しない5つ進路

じゃあ、どうすればいいと? ならばキミにもできる仕事を5つ紹介しよう。

    その1)企業内の「クリエイティブ(広告制作)」課

    その2)クリエイティブ(制作)スタジオ

    その3)デジタルエージェンシー

    その4)数少ない、優れた独立系広告代理店で働く

    その5)ロンドンに引っ越す

もしもキミが「二流クリエーター」だとしても、気にすることはない。最初の2つをオススメしよう。なんせ、彼らの生み出す「クリエイティビティ」はたかが知れている。面接で一流気取っていればいい。男も女もツーブロックに刈り上げて、「コンテンツ、コンテンツ」と連呼していたら、同世代のヤツらと差がつく。もう合格も間違いなしだ。

自分が「できるヤツ」と思っているのであれば、どうぞご自由に「その4」を試してみたまえ。挫折することを前提に、だけど。「ドローガ5(Droga5)」や「バートン・エフ・グラフ9000(Barton F. Graf 9000)」など、優れた広告代理店に応募するヤツは星の数ほどいる。もちろんそのなかには、キミより経験を積んでいて、キミより魅力的な履歴書を持つヤツらもたくさんいるんだ。そう、さっき書いたような巨大広告代理店からなんとかして逃げだそうとしているアートディレクターやコピーライターたちが。

たしかにイケてる、デジタルエージェンシー

デジタルエージェンシーが、いま「イケてる」ことは間違いない。昔ながらの広告代理店はおびえ、彼らを買収するか、古いもの同士手を取り合って予算20億ドルもの怪物広告の制作に励んでいる。

デジタルエージェンシーの連中は「テクノロジー」とよく口にするが、私にはさっぱりわけがわからない。アイデアはアイデアだ。ヤツらがどれだけのデータを収集しようとも、アイデアがよくなければどうしようもない。だからキミたちが必要とされているのだよ、アイデアマン(もしくはウーマン)諸君。

しかし、たとえデジタルエージェンシーがよくなってきているとしても、クリエイティビティ的に言えば、まだまだ全体的に酷いものである。だからもっと努力したまえ。

いい広告代理店は人材であふれかえっている

さて最後に5番目のオプションについて説明しよう。なぜロンドンかって? アメリカ同様、イギリスの広告も21世紀に入ってクオリティが落ちてきている。だが、両者はもともと立っていた次元が違う。たとえいくら落下しようが、イギリスがアメリカを下回ることはないということだ。実際、最近の優れた広告のほとんどはイギリスでつくられている。

何度も言うが、いい広告代理店の人材プールは、キミよりも経験を積んでいて、キミより優れたクリエーターであふれかえっている。だから最初のうちは社畜になってオフィス内をただ駆けずり回る日々を送るか、襟のとんがった服を着て、肩で風を切ってその気になるか、だ。

目を覚ませ! 広告志望の学生たちよ

追補:広告学校が行っている「成功の秘訣」を教えてやろう。毎週、実在する商品の偽の広告を作る。それを見た「現実的」な講師たちが善し悪しを決めて、キミに伝える。運が良ければ、なんとわかりやすく理由まで教えてくれる。キミたちはこういった「専門家」の助言を聞くためだけに、バカ高い学費を払っているわけだ。「サバンナ・カレッジ・オブ・アート・アンド・デザイン(Savannah College of Art and Design)」で広告学科長を務める天才クリエイティブディレクターのルーク・スリバン氏に教えてもらう、となれば話は別だがな。

ただこれだけは言わせてほしい。彼らは良い履歴書を持った「ハッピー」な生徒を世に送り出すためにお金をもらっているわけだ。しかし広告を評価するのはとても主観的なものだ。例えばこの「McDonald’s」のCM、大嫌いと言う人が多かったけど、少なくとも私は大好きだ。「ハッピー」な生徒を多く生み出さない講師は、講師でいられなくなる。目を覚ませ! こんなシステムに、本当に大金をつぎ込みたいのか?

違うだろう? ならば作りたまえ。実在する商品の偽の広告を。仮にもしキミがレイアウトのできないコピーライターだったら、そのアイデアを彩ってくれるフリーランス・アートディレクターを雇うといい。逆に文才に自身がないアートディレクターだったら、フリーランス・コピーライターに手伝ってもらおう。

そしてその履歴書を私に送りたまえ。そうしたら、25年もの経験を積んで、あの「ニューヨーク州立ファッション工科大学」でゲスト講師を勤めたこともある、「現実的」なコピーライター、そう、この私が評価してやろう。しかもタダで。ちなみに言っておくが、私は広告専門校のような甘ったるい評価はしないぞ。

【 マーク・ダフィ氏の連載<記事一覧>はこちら

Mark Duffy(原文 / 訳:柳沢大河)
photo by Thinkstock / Getty Images