【一問一答】エージェンシーの「透明性」とは?

デジタルマーケティングの未来に示唆を与える用語をわかりやすく説明する、「一問一答」シリーズ。今回のテーマは、いま大きく問われはじめている、エージェンシー関係における「トランスペアレンシー(透明性)」です。

調査会社ピボータル(Pivotal)のアナリストであるブライアン・ウィーザー氏は昨春、4大エージェンシー持ち株会社の評価を下げました。あわせて、エージェンシーのキックバックに対する批判が増えていることから「持ち株会社の長期的な成長に関する見方の一部を評価し直す」と警告。同氏は投資家への報告書で、マーケターはこの問題について学びはじめたばかりだとして、「当面の間、様子見をするかこの分野から手を引く」ことを勧めています。

このキックバックとは、たとえ最適な選択でなくても、一定の広告購入を保証してもらうため、メディア企業がエージェンシーに支払うお金のこと。古くから行われている慣習です。また、これによって浮いた分のお金は、多くの場合、たとえ契約で定められていても、クライアントに渡るものではありません。

料金の低下でエージェンシーの利益が縮小したことで、ますます悪化している、この問題。では、今回のテーマ「トランスペアレンシー(透明性)」とは、いったい何なのでしょうか?

「トランスペアレンシー(透明性)」、ひと言で説明すると?

全米広告主協会(ANA)の副組合長、ビル・ダッガン氏は次のように整理しています。「クライアントのお金がどのように使われているかが明確にわかることだと、私は考えます。そして、そのお金がエージェンシーのパートナーの活動に、どのように影響しているかを明確にすることです」。

この説明は、答えよりも疑問を生じさせます。プロセスの進み方について「わかっていれば」十分に透明性があるというクライアントがいる一方で、それだけでは足りないというクライアントもいるのではないでしょうか。

デジタルエージェンシーであるエッセンス(Essence)の北米マネージングディレクター、ロブ・ライフェンハイザー氏は、透明性とは「代理を務めるクライアントのために、メディアに対して支払われる費用の開示です。結局、そのお金を使って市場にいられるのですから」と説明しています。

なぜ、いま、そこまで問題になっているのでしょう?

エージェンシーへのリベートを巡る騒動は、メディアエージェンシーであるメディアコム(Mediacom)の最高経営責任者(CEO)だったジョン・マンデル氏が、ANAのカンファレンスで「エージェンシーは舞台裏の動きについて、クライアントに対し、まったく透明性がない」と語ったことで、大きくなりはじめました。そして、複数の高級幹部のインタビューを採り上げた「AdAge(Advertising Age)」のキックバックに関する特集記事が、その存在を明らかにしました

ANAと調査会社フォレスター(Forrester)による2014年の調査では、メディアバイイングを促進する新しいツールや、そうしたツールによって取引のプロセスが分かりにくくなったことに対する懸念がクライアントの間で高まっていることが判明。調査回答者のほぼ半数がバイイングの透明性をついて懸念を示し、また、半数以上が、「エージェンシーがメディアセラーからリベートを受け取る可能性を大いに懸念している」と答えたのです。

さらに広く見ると、プログラマティックにおいて、メディア費用、スタッフ費用、およびシステム費用などが一緒くたにされ、「ブラックボックス」化した価格モデルが生まれています。ひとまとめにされると、クライアントにはそれぞれの費用が見えません。つまり、メディアにはマージンが上乗せされるのですが、そのマージンを明確にしていないエージェンシーがあるのです。

でも、どこでも行われていることではないのですか?

メディアのリベートや、「透明性がない」さまざまなビジネス手法は、この世界のほかの分野にも実際にあります。米国では、ないとされてはいますが、エージェンシー幹部の大半がもちろんあると話しています。

よくわかりません。クライアントにとって、どうマイナスなのですか?

本当に問題になっているのは透明性ではなく、偏向の問題なのです。あるメディアプランがあり、2つのベンダーから1社を選択する必要があるとしましょう。その場合、エージェンシーは大きなリベートが貰えると思われるところを選びがちです。こうして偏向が始まります。プランを実施するのに最善ではないけれど、リベートをくれるところを勧めるかもしれません。そのことをあなたならクライアントに言うでしょうか? それとも言わないでしょうか?

「言わない」ということをクライアントに言えばどうでしょう?

いい質問ですねぇ。それについては、世界広告1位のWPPという興味深い事例があります。「AdAge」のレポートのなかで直接やり玉に挙がっている、WPP傘下のエージェンシーであるメデイアコムです。これに関してウィーザー氏は、持ち株会社であるWPPは、従来から業務の「透明性がないことについて」は、非常に「透明にしている」ので、最大限に「免責される」としているのです。ダッガン氏は「この見方に拍手を贈る。彼らは公の場に出てきて、そう言っている」と述べています。

この免責はおそらく、WPPが総売上とメディア取引による売上を明らかにしている唯一のエージェンシーであり、クライアントにその差がわかるということから生まれるのでしょう。また、メディアエージェンシーであるグループM(GroupM)が、米国において同社のベンダー関係には、リベートと隠された売上がないことを明らかにしました。ウィーザー氏は、報告書のなかでこれに同意し、ほかの持ち株会社が総売上とメディア取引で得た売上との差について明らかにしていないのは「残念だ」と述べています。

法律事務所リード・スミスLLP(Reed Smith LLP)の共同経営者でエンターテインメントおよびメディア業界グループを担当するケリ・ブルース氏は、「興味深い立場をとっていますね。しかし、十分ではないと考える、WPPのクライアントもいるのではないでしょうか」と話しています。

匿名希望のあるメディア幹部は、WPPの手法について、「違法ではないが、やはり興味深い」と言っています。この幹部は、「実際に広告主のCEOのところに行って、あのエージェンシーは費用に関する透明性がないと言えば、CEOたちはためらうことでしょう。それでも、透明性がないことを隠していないのです。完全に合法的です。しかし、それも賢い広告主が増えるまででしょう」と語りました。

クライアントは、実際に気にしているのですか?

クライアントによります。この問題をよく知る人たちによると、リベートを得ていることを公にしている限り、エージェンシーが「ボーナス」のようなものとしてリベートを得るのは差し支えないと、クライアントが言うのを聞いたことがあるそうです。しかし、社内にプログラマティックバイイングを導入するクライアントが増えており、そうしたクライアントの一部には、デジタルに詳しく、エージェンシーを除外することを選ぶところもあります。

この問題は、今後どのように展開するのでしょうか?

ブルース氏は、「クライアントは監査規定に戻り、これを強化したがるでしょう」と述べています。同氏によると、これまで監修したエージェンシー契約の大半は、リベートがあればそれをクライアントに渡さなくてはならないとする監査規定があるといいます。「言われていることが本当だとしたら、私は広告主が監査を適切に行っているのかを尋ねます」。

最終的に、どうするのかは広告主次第です。ブルース氏は、「もう長い間、行われているそうです。広告主ひとりひとりが立場を表明することが必要になるでしょう」と話しています。

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Shareen Pathak(原文 / 訳:ガリレオ)