WPPのソレルCEO、業界にはびこる「性差別」に苦言:子会社CEOのセクハラ訴訟を受けて

世界最大の広告複合企業WPPのマーチン・ソレルCEOが、毎年4A’s(American Association of Advertising Agencies:アメリカ広告業協会)が主宰する「トランスフォーメーション・カンファレンス(Transformation Conference)」に動画で参加した。

「ザ・ニューヨーカー(The New Yorker)」の記者であるケン・オーレッタ氏と30分間のチャットを行ったソレル氏。その内容のほとんどは、WPPの子会社であるジェイ・ウォルター・トンプソン(JWT)のCEOグスタボ・マルティネス氏の性差別問題についてだった。性差別と人種差別で告訴されたマルティネス氏は、同社を辞職している。ソレル氏は、性差別問題がエージェンシー業界に浸透していることを認め、今回のマルティネス氏の件は決して彼だけの問題ではないことを強調した。

ピュブリシスCEOの意見

しかし、広告世界3位のピュブリシス(Publicis)のモーリス・レヴィCEOの意見は対照的で、今回の性差別問題は「マルティネス氏だけの問題」と発言している。これに対し、DDBノースアメリカ(DDB North America)のウェンディー・クラークCEOなど、エージェンシー業界の有力者やソーシャルメディアの多くが批判している。ウェンディー・クラーク氏は、エージェンシー業界のすべての階級において性差別や人種差別が横行していると主張している。

「私はウェンディー・クラーク氏の意見に賛成する」と、ソレル氏は言う。「しかし、レヴィ氏の意見には強く反発する。マルティネス氏が引き起こした問題はマルティネス氏だけの問題で、エージェンシー業界には性差別問題がないとレヴィ氏は話している。昔から、彼には事実を無視する傾向がある」。

多様性を最優先に考えていた

ソレル氏によると、WPPで働く19万人のスタッフのうち、下位もしくは中間管理職の半数は女性たちだ。しかし上級職になると、女性の割合が3割近くまで下がってしまうという。

ソレル氏は、WPPでは多様性を最優先に考えていたと語る。2015年末、彼は同社の「サステナビリティレポート(持続可能性報告書)」にも多様性が成長戦略の鍵となると書き記していた。「大学卒業生の60%が女性であり、また、家庭において商品購入の決定権を握るのは80%が女性ということを考えると、人材の確保や市場へのアクセスが課題となる」(WPPの多様性に関する戦略はこちらから)。

「世論という法定では有罪」

ソレル氏によると、JWTのマルティネス氏は同意の上で辞職したという。これは、JWTのグローバルCCO(最高コミュニケーション責任者)であるエリン・ジョンソン氏による訴訟の3日後のことであった。「企業、顧客や社員たちのためにも、辞職が最善の方法だった」と、ソレル氏は語り、辞職は強要したものではなかったことも付け加えた。「マルティネス氏が有罪か無罪かは法廷で決まることだ。世論という法廷では、彼は有罪と判決されている」。

「ザ・ニューヨーカー」のオーレッタ氏は訴えを起こしてから有給休暇を取得しているジョンソン氏についても言及し、彼女がJWTに戻れるのかもソレル氏に聞いた。それに対し、ソレル氏は「戻ってくるのかどうかは彼女次第だ」と答えている。

訴訟の内容は、マルティネス氏がジョンソン氏をレイプすると話したことや、ユダヤ人や黒人に対して差別的発言をしたことで、3月10日に訴訟が起こされている(訴訟内容の全文はこちらから確認することができる)。マルティネス氏は3月17日に辞職しているが、彼の代わりとして最高顧客責任者であったタマラ・イングラム氏がCEOの座を受け継いだ。WPPは、法律事務所プロスカウアーローズLLP(Proskauer Rose LLP)が「訴訟内容を独自調査している」と発表している。調査はまだ続行中だ。

Shareen Pathak(原文 / 訳:BIG ROMAN)
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