超売り手市場! デジタルマーケ業界内「転職」の天国と地獄:甘いワナに陥らないための心構え

求職者1人に対する求人数を示した2016年8月の有効求人倍率は1.37倍と、3カ月連続ですべての都道府県において1倍を超えた。なかでも広告、デジタルマーケティング業界では、未経験も含めた若手の採用が積極的に行われており、空前の「売り手市場」の様相を呈している。

「しかし、デジタルマーケティングを担う人材はまだ少ない」と語るのは、広告・デジタルマーケティング業界に特化した人材紹介会社ウィンスリー代表取締役の黒瀬雄一郎氏だ。「ニーズは高いが、新しい分野のため、データやデジタルに明るい実務経験者が少ない」。

一方、売り手市場ゆえの転職先のミスマッチも後を絶たない。「転職に失敗したという声を数多く聞くのも確か」と、黒瀬氏は述べる。本記事では、デジタルマーケティング業界において転職をいかに成功させるべきか、その秘訣を探る。

いびつに「需要」が多い転職市場

現在、デジタルマーケティングを積極的に推進しているのは、従来の事業会社に限らない。Webを中核とした事業会社、広告・PR会社、Web制作会社、コンサルティングファームなど、さまざまなプレイヤーが存在する。そのため、人材は慢性的に不足。業界の転職市場は、需要と供給のバランスを著しく欠いている。

「これまで中途採用を積極的に行ってこなかったナショナルクライアント(国内大手事業会社)の多くが、マーケティングのインハウス化(内製化)を進めている」と、ウィンスリーの黒瀬氏は内部事情を説明。「加えて、メガベンチャーと呼ばれる新興企業にも、潤沢な資金を背景に、デジタル人材を獲得する動きは当然ある」。

まさにいま、デジタルマーケティング業界は空前の「売り手市場」。しかも、人材流動化により、転職希望者は増加傾向にあるという。だが、黒瀬氏は「いわゆる『顕在層』は少ないのが現状だ」と付け加えた。

一方、転職「顕在層」はわずか2%

ウィンスリーの調べによると、大手転職サイトに現在の在籍企業を登録しているユーザーを「顕在層」とした場合、当該在籍企業の社員数に占める割合は「わずか2%前後」であることがわかったという。

「一方、社員数から上記の『顕在層』を差し引いたものを『潜在層』とした場合、潜在層のなかから当社がスクリーニングした在職者のうちの約7割は、『条件が整えば転職を考えてみたい』という態度変容層だった」と、ウィンスリーの黒瀬氏。「共通しているのは、潜在層の多くは漠然としたキャリアプランや目標を抱えつつ、いまの会社で働いている傾向がある点だ。また、優秀な人材ほど会社に対するロイヤリティが高い」。

このように、業界を取り巻く人材不足やニーズの高さによる「簡単に転職できそうだ」というイメージが、「転職ミスマッチ」を引き起こす要因のひとつといえる。

しかし、安易な転職は「失敗」を招く

安易な転職が、どんな悲劇を招くのか。ウィンスリーの黒瀬氏に、いわゆる「失敗例」を教えてもらった。転職希望者の準備不足が「こんなはずではなかった」という状況を招いている様子が浮かび上がってくる。

<失敗例1>
ネット専業広告会社から、一般事業会社に転職した29歳女性の場合。広告専業のプランナーから、大手金融系企業に転職し、口座開設のWebマーケティング担当になった。

 

しかし、仕事は定められた予算でKPIを達成するためにPDCAを回すことで、改善施策も予算の関係から失敗が出来ない。やるべき仕事の幅がとても狭くなり、成長の実感がもてていない。

広告会社から、クライアントである事業会社に転職したいというニーズは強い。しかし、意外と失敗するケースが多いのも事実だ。その理由について黒瀬氏は、「事業会社は、いくつものクライアントを掛けもつ代理店とは異なり、ひとつのプロダクトやサービスに専念し、数字を追求することが求められる。このプレッシャーは転職前より大きい場合がある」という。

また、外部から人材を獲得する事業会社は、デジタルマーケティングのリテラシーが低い傾向がある。黒瀬氏の読みでは、「予算が取れないうえ、上司を説得するのも難しい」状況。結局、目先の数字を追う仕事に忙殺され、思ったような仕事ができない、というパターンに陥りやすいのだそうだ。

<失敗例2>
大手企業からメガベンチャーに転職した26歳男性の場合。新卒で入社した大手企業で4年働き、メガベンチャーから「将来の幹部候補として」迎えられた。

 

業績は伸びている。だが、入社してみると幹部候補は確かに優秀だが、それ以外のメンバーはレベルがバラバラで仕事の質も低い。また社内の雰囲気もサークル的なノリがあり、社員の出入りも多く、社内派閥があることにも気づいた。朝令暮改的なカルチャーにもなじめないという。

大手からベンチャーに移り、次にまた大手に戻るのは非常に困難だ。メガベンチャーは、福利厚生、オフィス環境の良さなど、外向けにはさまざまな魅力的なオプションを提示していることも多い。だが、黒瀬氏は「内情を知らずに安易に転職すると、思いもしないような『ブラックな面』に直面するケースがある」と語る。

「転職成功」を導くふたつのカギ

その一方、「自分のやりたいことが明確な人、情報収集をたくさんしている人は、失敗が少ない」と、黒瀬氏。以下が、その成功例だ。

<成功例>
外資系広告会社の営業から、大手事業会社のマーケティング部門に転職が決まった女性の場合。転職前の会社に不満はないという段階から、1年半ほどかけて、じっくり情報収集を継続していた。

 

グローバルなマーケティングの仕事をやりたいという本人の目的が明確で、ワークライフバランスを重視するという希望ポイントが明確だったため、ポジションが出たタイミングで転職活動をはじめて短期間で決定した。

ウィンスリーの黒瀬氏によると、「採用する側も候補者の目的が明確だったため、話が進むのが早かった」という。このように、「転職する理由が明確であること」「情報収集がきちんとできていた」という2点が、転職成功のカギを握っている。

まずは「転職ルート」の検討から

転職に失敗する事例の共通点は、「イメージ先行で、安易に決めている」点にある。募集要項だけでなく、実際に働く現場にはどういう人がいるか、社風などのカルチャーも事前に把握することが欠かせない。

つまり、転職を考えた段階で「将来、自分は仕事面、生活面でどうなっていたいのか」というイメージを明確化して欲しいと、黒瀬氏は呼びかける。次に、「転職ルート」の検討だ。一般的に転職の応募方法には2つある。

1つ目は「ダイレクトリクルーティング」だ。これは、転職希望者が企業HPなどを見て直接応募する場合や、転職サイトに登録された情報を見て、企業が直接希望者にアプローチする場合などがある。

ダイレクトにコンタクトすることで、お互いの希望がマッチすれば、スムーズに成立するメリットがある。事業者側としても、人材紹介サービスなど仲介業者を経由するより、コスト安だ。しかし、希望者側にとっては情報が少なく、失敗するリスクも少なくない。

2つ目が、「人材紹介会社にエントリーする」方法である。黒瀬氏の肌感覚では、「転職者の7〜8割が、人材紹介会社経由のケース。そして、社内の紹介を含む、ダイレクトリクルーティングは、2〜3割程度」となるそうだ。

「人材紹介会社選び」のポイント

「転職ルート」については、人材紹介会社を経由することを、黒瀬氏は薦めている。なかでも「転職する理由の明確化」「情報収集」の点で、信頼できるキャリアコンサルタントを選ぶことが成功の一里塚となるという。

しかし、「既存のスキルセットをもとに、会社を紹介する人材紹介会社も依然として多い」のが現状だ。また、人材の取り合いという状況から、人材紹介会社側がクロージングを早める傾向もある。面接が終わって、内定オファーが出てから「1週間以内に決めてください」というケースも数多くあるそうだ。

    ・キャリアコンサルタントが、キャリア・ライフプランを考えてくれるか
    ・先行き不透明な業界動向を鑑みつつ、今後の見通し・情報を提示してくれるか

上記のポイントを踏まえ、複数の紹介会社とコンタクトしながら、自分がやりたい仕事にマッチングしてくれるキャリアコンサルタントを見極めることが大事だ。

キャリアコンサルタントの仕事内容

ウィンスリーでは、広告代理店での営業経験の長い黒瀬氏を中心に、エージェンシー系、コンサル系など「業界別」、エンジニア系、営業・マーケ系、バックオフィス系など「業種別」に専門分野をもつキャリアコンサルタントを6名擁している。

業界経験豊富なキャリアコンサルタントが、希望者の「転職理由の明確化」「的確な情報収集」をサポートし、適切なキャリアプランを提示できるのが特徴だ。具体的には、転職希望者に会って履歴書や職務経歴書をもらい、そこから転職理由についてのヒアリングを行う。

「転職理由が明確でない場合は、明確にすべき理由から説明する。また、ヒアリングの結果、『いまは転職しない』という選択肢を提示する場合もある」と黒瀬氏は語る。自身が、前職で人材採用や育成マネジメントを手がけてきた経験があり、メンバー全員が単なる人材の紹介営業だけではないキャリアプランの提示が可能なのだ。

業界動向や、外から見えない社内事情などの情報は、キャリアコンサルタントがクライアント企業からヒアリングして入手する場合もある。たとえば、転職に失敗して、ウィンスリーを訪れた転職希望者からヒアリングして得る場合もある。

黒瀬氏は、「仕事上、さまざまな会社を見ているので、我々も企業に『いい要素、悪い要素、どちらも出して欲しい』といっている。いい会社ほど、自社にとって都合の悪い要素もきちんと開示してくれる傾向がある」と話す。

業界全体の底上げをするために

また、同社はオウンドメディア「デジキャリ」を立ち上げ、情報発信を続けている。サイトオープン後、約8カ月が経過するが、応募に関する問い合わせが約10倍以上に増えた。「とくにリテラシー高い読者から、自分たちに近いメディアだと思ってもらえた」。

なかでもオススメなのは、「転職の成功事例」シリーズや、業界に関わる人の本音を引き出した「業界あるある話」などの記事だという。

年内には、「デジタルリテラシーを高める人材育成のための研修事業」を立ち上げる予定と黒瀬氏。前職で人材獲得の難しさに直面し、「採用に苦労した経験から、人材獲得だけでなく、人材育成を通じたデジタルマーケティング業界全体の底上げが急務」と危機感を感じている。

「我々は人材を紹介する仕事を行っているが、『人材を引き抜かれる』側の企業があることも忘れていない。人材育成は『引き抜かれる側』のケアにもなる。さらに、人材育成により、受発注双方のリテラシーが高まっていくことで、デジタルマーケティング業界全体の底上げにつながっていく」。

 

KuroseTOP_ad▼黒瀬雄一郎
株式会社ウィンスリー 代表取締役

 

2000年に慶応義塾大学経済学部卒業。NTTに入社し、その後、株式会社USENにて動画コンテンツ事業「GyaO」と、楽天とのジョイントベンチャー「ShowTime」の事業を立ち上げ。2003年に電通初のネット専業広告代理店である電通イー・リンクの立ち上げメンバーとして従事し、営業周りの統括を行う。営業周りの採用責任者として100名程度のメンバーを採用。2012年広告デジタルマーケティング専門人材エージェントの株式会社ウィンスリーを立ち上げ、現在に至る。なお、ただいまウィンスリーでは、同社経由で入社決定した方全員に「日経デジタルマーケティング年間購読無料キャンペーン」を実施しているとのことだ。

 

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Written by 阿部欽一
Image via Thinkstock / Getty Images