全米広告主協会の「透明性レポート」に株価は未反応:むしろ関連株の終値は微増

去る6月7日、全米広告主協会(Association of National Advertisers[略称:ANA])が発表した「エージェンシーの透明性」に関するレポートでは、メディア・エージェンシー業界では「不透明な慣習」が数多く行われていると報告された。

それにもかかわらず、レポートが発表された同日火曜日、オムニコム(Omnicom)、IPG、WPPの株価は若干の上がりを見せてマーケットを閉じた。それぞれの終値は、IPGは1%上がって23.96ドル、オムニコムも1%増の83.27ドル、そしてWPPは1.7%増の116.27ドルだった。投資銀行で、大手ホールディングカンパニーのレーティングを変更したところもなかった。

マーケットは一般にこういったレポートに敏感に反応する。ましてや今回の報告書の内容は衝撃的なものだ。

なぜ未反応だったのか?

業界に蔓延しているリベート。プログラマチック広告購入に関してエージェンシーが所有しているトレーディングデスクに仕事を流すといった慣習がクライアントの知らぬところで行われており、しかもシニアエグゼクティブはそれを周知しているという実態。このような内容であるにも関わらずマーケットが反応していないことに不思議に思う人も多いのではないだろう。

「レポートは私たちの予想と食い違うものではなかった。去年1年間ずっと寝てた投資家なら(レポートを見て)「なんてこった!」って言ったかもしれないね」と、ピボタル(Pivotal)のアナリストであるブライアン・ウィーザー氏は言う。

作成に8カ月の調査が費やされた本レポート。調査のきっかけとなったのは、2015年、全米広告主協会のイベントで、メディアコムの前CEOであるジョン・マンデル氏が、リベートが蔓延していると業界の内情について吐露した発言だ。

これを受けて、ピボタルはこのレポートのインパクトを測ろうとした。ホールディングカンパニーの銘柄がいくつかは格下げとなったが、影響を正確に知るのは難しすぎた。

混乱している投資家たち

エージェンシーの成長がどれくらいこういった不透明な慣習によって支えられてきたのか、投資家たちは知ることができないでいる。というのも、メディアトレーディングによる収益が総収益のうちどれくらいの割合なのかは明らかになっていないからだ。

また、これが株価のブレークアウトが起きていないデジタルメディア分野で起きているのも混乱につながっている。さらにリベートは米国内での問題であるのに対して、そのインパクトがグローバルでどれほどあるのかが見極められないのだ。

クライアントに与えるインパクトを投資家が理解しはじめるとその影響が出てくるかもしれない、とウィーザー氏は言う。クライアントがこのレポートを根拠にして料金の減額を求めたり、契約を詳しく調べたりしはじめると(全米広告主協会は後者を勧めている)、影響は大きくなるかもしれない。「そうなると(投資家たちが)事態を明確に理解できるようになるだろう」と、ウィーザー氏は締め括った。

Shareen Pathak(原文 / 訳:塚本 紺)