たった52%しか視認されない、英国のディスプレイ広告事情:その損失は約1840億円

ディスプレイ広告の近年の課題は、「実際にユーザーに目視されたかどうか」だ。読み込みが遅く画面に表示されないケースや、画面スクロールの速度によってユーザーの目に止まらないケースなどが、問題視されている。

この「ビューアビリティ(Viewability:表示された広告が視認可能であった回数または割合)」問題は、英国ではさらに顕著のようだ。2015年第3四半期の全英におけるディスプレイ広告で、きちんと視認されたものは約半分(52%、前期比3%増)しかないという。

その事実を浮き彫りにしたのは、欧州全域の数十億にも及ぶインプレッションを追跡している企業ミートリクス(Meetrics)による測定結果だ。豪州やフランス、ドイツなどのビューアビリティと比較すると、英国が際立って悪い。2015年7月から9月までのメディアへの広告支出全体分として2億6000万ポンド(約480億円)を加算すると、同年1〜9月の「視られていない」ディスプレイ広告による損失額は、10億ポンド(約1840億円)に膨れ上がると同社は推計している。

その一方、フランスとドイツは、状況が遥かに良い。フランスのビューアビリティは、第2四半期の62%が第3四半期には69%に伸びていた。ドイツでは64%から61%に落ちていたが、豪州は70%という堅調な数字だった。

なぜ英国のビューアビリティは低いのか?

ミートリクスの国際ビジネス担当ディレクターであるアナン・ジョシー氏は、ビューアビリティで英国が、ほかの欧州各国の後塵を拝しているのは、プログラマティック広告市場が発達しているからだと指摘する。そこではオープンな取引が定着しているため、パブリッシャーのロングテール(売上の少ない商品群)が他国よりもさらに伸び、ひいては「閲覧されることの少ない」インベントリー(在庫)を作り出しているという。

多種類の位置情報をもとにしたB2B広告で知られる企業インサイシブメディア(Incisive Media)で、プログラマティック広告業務の筆頭責任者を務めるダレン・シャープ氏も同意見だ。「ビューの有無を問わずにインベントリーの収益化をパブリッシャーが実現できるとするなら、より多くの広告スロットを1つのページに設け、売り上げを増やしたいとの誘惑にかられても不思議はないだろう」。広告スロットが1つのページに複数掲載されると、それぞれを読み込むのに時間がかかり、すべて表示される前に離脱される可能性が高くなるのだ。

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Direct Buy(直接購買)はOpen Exchange(オープンエクスチェンジ)よりもビューアブルインプレッション(視認された広告表示)の割合が高い傾向がある。オープンエクスチェンジが発達したイギリスでは比較的未発達のフランス、ドイツに比べ、ディスプレイ広告が「視られていない」。

オンライン上でのディスプレイ広告のビューアビリティが悪いと指摘したのは、今回のミートリクスの調査が初めてではない。Googleは昨年リリースしたレポートで、1度も視認されたことのないバナー広告は、全世界で56%にも上ると明らかにしていた。

パブリッシャーに埋め合わせ求める

このため、世界最大の広告グループであるWPP系列のグループMや、多額の広告費で知られるブランドのユニリーバは媒体社に対し、「100%閲覧される可能性がある広告にだけ料金請求せよ」と要求している。

この要求、豪州ではすでに採用されているという。エージェンシーによる100%のビューアビリティ保証を媒体社の方で確保するというものだ。その結果、英国に比べ豪州は、高いビューアビリティを実現できていると、ミートリクスのジョシー氏は話す。

たとえば、パブリッシャーが70%のビューアビリティしか確保できなかった場合、残る30%について埋め合わせしなくてはいけない。まったく逆の方策もある。ジョシー氏によると、プレミアムなコンテンツを展開できれば、広告主は出稿したがり、在庫の価値が高まるという。豪州のBBCに相当するORFは、コンテンツに力を注ぎ、結果としてCPM(表示1000回あたりの単価)を高めた。

英国では、パブリッシャーは圧力に直面している。インサイシブメディアのシャープ氏は「ビューアビリティが65%だとするなら、こちらの方で無償でインプレッションを10%追加し、埋め合わせをする必要がある」と語った。

ロード時間の長さも一因

ミートリクスのジョシー氏は「視認されない広告が出てしまう最大の理由は、ロードにかかる時間が長過ぎるため」と説明した。このため、配信される広告の約20%は、視認される前に、ユーザーが他のページに移ってしまう。「Webページと、広告配信システムのパフォーマンス向上。この2つの観点が、業界としての取り組むべき課題だ」と、語る。

コンテンツがロードされる前段として発生している、ブラウザの膨大なリダイレクトを「ドラスティックに」減らすことが課題だ。なお、ミートリクスの調査では、打開策として、どの広告フォーマットが閲覧される上で効果的かについても触れている(下図参照)。

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ディスプレイ広告のフォーマットごとにビューアビリティは大きく異なる。上から「ハーフページ」(300×600ピクセル)、「ビルボード」(970×250ピクセル)、「スカイスクレイパー」(120×600ピクセル)、「MPU」(300×250ピクセル)、「リーダーボード」(728×90ピクセル)。

バラバラの効果測定がバラバラの基準を生む

各ベンダーの評価指数が、いまなお一致していないことも、ビューアビリティを巡る最大の問題の1つだ。インサイシブメディアのシャープ氏によると、すべての広告フォーマットの計測に当たり、1秒間に視られる割合がいくつかを基準としている。

一方、インタラクティブ広告協会(IAB)が大型広告フォーマットに定めている判断基準は、1秒間に当たり広告ピクセルの30%が視認されることだ。また、それ以上に厳しい。ピクセルの50%の視認を基準としているベンダーもある。このような異なる測定基準が、ビューアビリティに「大きな」インパクトを与えており、各国の間に差があることの要因の一つだ。

Jessica Davies(原文 / 訳:南如水)
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