コピーライターとして成功するために必要な唯一のこと:失業中コピーライター(56歳)の告白

このコラムの著者、マーク・ダフィ(56)は、広告業界辛口ブログ「コピーランター(コピーをわめき散らす人)」の運営人。米BuzzFeedで広告批評コラムを担当していた業界通コピーライターだが、2013年に解雇を通達された。趣味のホッケーは結構うまい。

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タイトルを読んで興味を持ったけれど、本文を読むのが面倒な読者はGoogleで「Fallon McElligott ad(ファロン・マックエリゴット、広告)」と画像検索をして、クリックしてコピーを読んで、またスクロールして、を繰り返せば良い。無料だ。それらの広告を何時間か眺め、クリエイティビティを脳のなかに流し込むだけ。そうしたら次に何かアイデアを出さないといけなかったり、コピーを書かないといけないとき(ネイティブ広告やコンテンツ広告なんていうクダラナイものでも構わない)、いまよりは良いコピーを書けるだろう。少なくとも自分に対して厳しくなることができるはずだ。

しかし、この本文を読めば、さらに良いコピーライター/アートディレクター/コンテンツメーカー/クリエイティブテクノロジストになることができる。そして、それでも無料だ。

読者の多くは、トム・マックエリゴットを知らないだろう。ディレクター/コピーライターのマックエリゴット、彼のアートディレクター・パートナーであったナンシー・ライスとパット・バーンハムは、1980年台と90年台に素晴らしい広告を何百個も作り出した(当初はファロン・マックエリゴット・ライスという名前だったが、80〜90年台はファロン・マックエリゴットというエージェンシー名だった。そこには、彼らのほかにも素晴らしいコピーライター、アートディレクター、クリエイティブディレクターがいた)。トム・マックエリゴットは、このエージェンシーを1988年に去っているが、彼のクリエイティブ精神はそのまま残った。少なくともエージェンシーのドアに彼の名前が残されているあいだは。

彼らのエージェンシーが作ったクリエイティブ、特にコピーは読む人をワシ掴みにし、印象を強く残す力があった。広告業界でそれまで見たことが無いようなコピーライティングだったのだ(その後、また見られなくなってしまったが)。

前述した画像検索をしてみると、おそらくデイブ・ダイによるブログに出くわすはずだ。ダイは現在、ロンドンのJWTのアート/デザイン部門の責任者でありクリエイティブディレクターだ。いま、英国のもっとも才能あるアートディレクターのひとりだ(ということは、世界でもっとも、ということになる)。彼はマックエリゴットのもと、プロデュースされたプリント広告のほぼすべてを素晴らしいことに収集している。彼のブログで見て欲しい。

いまはとりあえず、いくつかの例を見るに留めたい。

エピスコパル教会

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もしもイエス・キリストが生きていたら、ファロン・マックエリゴットを広告エージェンシーとして雇っただろう。エピスコパル教会のために作られた、30個の素晴らしいプリント広告のふたつが上記だ。左は「6人の力強い男によってアナタは、教会に戻されないといけないのか?」となっている。死者の棺を人々が運ぶことから、死にでもしない限りはアナタは教会に来ないのかと力強く訴えている。右は「神がいなければ、悪循環だ」となる。ダイのブログのポストで教会のプリント広告をすべて見ることができる。

ポルシェ

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クルマを見せて、何か素晴らしい文章を書く。簡単な公式だけれど、実行するのは死ぬほど難しい。マジで、本気で挑戦してみて欲しい。何時間か経てばあきらめるだろう。左は「ツッフェンハウゼンから飛び立つコウモリのように走る」という意味だが、もとは英語の慣用表現「地獄から飛び立つコウモリのように(速い)」から来ている。ツッフェンハウゼンはポルシェの工場があるドイツの都市だ。右は「機内食を食べずに移動するなら、これより速くはならない」。また、ほかにもマックエリゴットによるポルシェのプリント広告がここで20ほど見ることができる。

飲酒運転

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スティービー・ワンダーをつかった広告は、マックエリゴットが有名人を使って作った唯一の広告と言っても過言ではない。なぜなら有名人の広告は総じて最悪だし、成功する例がない。クリエイティブな意味で、この有名人を使うことが決定的に意味を持っている場合は別だ。上記の広告はその好例だ。スティービー・ワンダーが盲者であることがポイントとなっている。左は「酔ってる奴の車に乗るくらいなら、自分で運転する」。左のプリントには下に「酒を飲んだ後に運転をすること、もしくは酒を飲んでいた奴が運転する車に乗ることは大きな間違いだ。そんなの誰が見ても分かる」というコピーがついている。ちなみに、タンブラーでたくさんシェアされている右のアタリ広告(右:「もしオレがテレビゲームをするなら、アタリだろうね」)はフェイクだ。

チルドレン・ディフェンス・ファンド

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そして最後に、15年の時間の経過を経て制作された、このふたつの広告を見て欲しい。左の広告に書かれていること(「去年、我々は80億ドルの軍事援助を他国に行った。我が国の教育を十分に受けられていない子どもたちは、その国が地図のどこにあるかも見つけられない」)は残念ながら今日でも事実のままである。軍事援助の金額はおそらくもっと大きいだろう。右の広告は1999年、コロンバイン高校銃乱射事件から6カ月後の秋に公開されたものだ(「トレンチコートを来た子どもが学校で銃乱射事件を起こした。人々の反応? トレンチコートを禁止すること」)。

広告を教える学校ではこのふたつの例を使ってコピーライティングの教訓を教えるべきだ。真実に勝る広告は存在しない。しかし、どの真実を伝えるか、そして、どうやって伝えるか、それによって偉大な広告となるかどうかが決まる。

頭脳と本能をこれほど力強く、そして効果的に組み合わせたエージェンシーはファロン・マックエリゴットのほかにない。そして、今日存在しているエージェンシーはどれもその足元にも及んでいない。

もしもトム・マックエリゴットについて学びたいのであれば、ダイはこの1月に彼にインタビューしたものをポッドキャストで配信している。それはマックエリゴットが25年ぶりに行ったインタビューで、今後25年間はインタビューは受けないとダイに語っている。ポッドキャストは長さ2時間に渡るものだが、より良いクリエイティブになりたいと切望している人物なら2時間をかけて聴くべきだ。リンクはこちら(インタビューは9分あたりから始まる)。つべこべ言わずに聴くように。

【 マーク・ダフィ氏の連載<記事一覧>はこちら

Mark Duffy(原文 / 訳:塚本 紺)
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