史上最悪なタグライン、全米ワースト5:失業中コピーライター(55歳)の告白

このコラムの著者、マーク・ダフィ(55)は、広告業界辛口ブログ「コピーランター(コピーをわめき散らす人)」の運営人。米大手Webメディア「BuzzFeed」で広告批評コラムを担当していたが、2013年に解雇を通達された業界通コピーライター。

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アメリカの古き良きタグラインの時代はもう終わった。というか、終わってからかなり経った。まだ、わずかに残っている良きタグラインたちもデジタルエージェンシーやマーケターたちによって絶滅へと追いやられるだろう。

ナイキの靴の売上をキープしているものが何か知ってるだろうか。現在行われている広告・プロモーション・キャンペーンすべてを合わせて考えて欲しい。それは「Just Do It.(ただやるしか無い)」というタグラインだ。

アメリカン・エクスプレスの「Don’t Leave Home Without It(これなしに家を出ないで)」も同じことがいえる。素晴らしいタグラインにはこれほどの力が込められているものだ。

というわけで今回は、逆の視点でタグライン・ワースト5を紹介する。

ステラ・アルトワ:「Be Legacy」(大いなる伝承となれ)

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ステラの「創業者」であるセバスチャン、イザベラ・アルトワに役者が扮しているこちらのポスター、1366年の人物の服装としては間違っているのではないか

ブランドをより先鋭的に見せるため、競合ブランドたちから頭ひとつ抜きん出るため、コピーライターは昔から文法の基礎をひねって、ねじって、殺してきた。しかしそれにしてもだ。ビールブランドだ。「Be Legacy」は求めすぎだろう。なぜステラ・アルトワ(Stella Artois)に「伝承になれ」なんていわれないといけないんだ。

なぜ、「Be Remembered」(記憶に残れ)とか、「Be Better」(より良いものへ)とか、「Be Drunk」(酔っ払いになれ)とかにしなかったんだろうか? 「酔っ払いになれ」はビールのタグラインとしては最高に良いと思うのだが。今年はじめにはツイッター上でもっと良いタグラインをステラのために考えるのが流行ったみたいだ。たとえば、こんな感じだ。

    「Be Legless」(千鳥足になれ)

    「Be er」(もっと……になれ/つづりがビール(Beer)になっている)

    「Be at wife」(つづりを縮めるとBeat Wife = 妻を殴る。ステラ・アルトワはアルコール度数の高さから暴飲や暴力とつなげて連想されてきた

シロック: 「LET’S GET IT」(手に入れるんだ)

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あとフォントもね…

フランス産のウォッカ、シロック(Cîroc)のタグラインがこれだ。

何を手に入れるんだよ。シロックか? シロックなのか? CMを見ても謎は深まるばかりだ。CMを見ていると「LET’S GET IT」は「めちゃくちゃ酔っぱらおう」ということなのかなと思えてしまう。

「レンタルで借りたタキシードにゲロを吐くぐらい酔っぱらおう」というメッセージなのか? このタグラインについてパフ・ダディをコマーシャルに入れるよりも、タグラインについて追求するミーティングにパフ・ダディを参加させたほうがよかったんじゃないか。

キャデラック: 「DARE GREATLY」(より勇敢な挑戦を)

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どっちかっていうか「より勇敢な散財を」の方が良いんじゃないか。

キャデラック(Cadillac)って車だよな。違ったっけ。

クルド人たちと一緒にISISと戦うアメリカ人は勇敢だ。超高速で移動するゴムの塊を止めようとするホッケーのゴールキーパーも勇敢だ。1970年にフォード・ピントを購入することも……まぁある種の勇敢さだ。

しかし、2016年に、まず10万ドル(約1000万円)もする車を買う経済的余裕があって、しかも本当に買ってしまうことは……勇敢ではない。勇敢の真逆だ。むしろ勇敢が足りていない状態のことを指す。

クアーズライト:「The World’s Most Refreshing Beer」(世界で1番リフレッシュさせてくれる)

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世界で1番意味のないタグライン

どうやってFDA(アメリカ食品医薬品局)の認可がおりたんだろうか。クアーズライト(Coors Light)は「もっとも味わい深いビール」か? いやそんなことはない。じゃあ「もっとも喉の乾きを癒やしてくれる」か? それも違う。リフレッシュするってどういう意味なんだ? 世界で1番水っぽいってこと? それなら認可がおりるかもな。

ウェルス・ファーゴ:「Together We’ll Go Far」(私たちはともに遠くまで行く)

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遠くっていうか、刑務所にね

【 マーク・ダフィ氏の連載<記事一覧>はこちら

Mark Duffy(原文 / 訳:塚本 紺)