テレビはデータで進化する:アメリカのテレビデータ活用事例

本記事は、デジタルインテリジェンス主催の『テレビ×デジタルの最適化 CMARCセミナー』の講演内容をまとめたものです。

講演では、デジタルインテリジェンス代表取締役の横山隆治氏と、VMLの日本法人の代表および株式会社FICCの代表取締役を兼務する荻野英希氏によって、テレビ広告の未来についてのトークセッションが実施されました。その内容を荻野氏が書き留めてくれています。

以下、当日のスライドとともに、セッション内容をご確認ください。

日本よりも早くデジタル化が進むアメリカでも、テレビはいまだ最大の広告メディアです。しかし、視聴データの充実により、テレビ広告の形は少しずつ変わりはじめています。地域によって変革の度合いは異なりますが、すべてMeasurable(測定可能)でAddressable(個別配信可能)な方向に進んでいます。

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テレビが変化している背景には、データの可用性があります。テレビデータには以下の3種類があり、その可用性と量の増加に伴い、マーケティングの可能性が広がります。

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日本では、視聴行動のデータが少しずつ集まりはじめていますが、まだ分析対象のセグメントを細かく分けるほどのボリュームがありません。今後はテレビメーカーや携帯キャリアのデータシェアリングなどを通じて、視聴データ量の充実が進みますが、現状のデータでもできることはたくさんあります。

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データ量が豊富なテレビの視聴サーベイデータを、セグメントや購買行動の段階ごとに分類したデジタル広告の視聴行動データと掛け合わせ、態度変容や購買行動のサーベイを実施することで、ターゲットやチャネル、そしてメッセージの効果を定量的に評価することができます。態度変容や購買行動に対する効果をもとにコミュニケーションを改善し、最適な予算のアロケーションが可能になるのです。

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アドレサブルTVはさらに、世帯ごとに個別のテレビ広告の配信を可能にします。その広告インベントリ(在庫)はテレビ全体の12%と限定的ですが、すでに8割以上の広告主が利用しており、その高い効果を実感しています。その市場規模はいまだ12.6億ドル(約1435億円)と、テレビ市場の1.75%に留まっていますが、2019年には倍以上の30.4億ドル(約3463億円)まで成長が見込まれています。

アドレサブルTVの活用はまだ実験段階であり、たくさんの事例は存在していません。しかし、数少ない事例のなかからも、その効果的な活用方法は見えはじめています。

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飲食チェーンや地域密着型の量販店などは、ロケーションデータや既存顧客のデータを活用することで、来店見込みの高い、商圏内のユーザーだけにテレビ広告を配信することが可能になります。ロケーションデータを提供するPlaceIQのケーススタディでは、広告接触者の来店率が70%も向上しました。

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車メーカーなどはさらにオウンドメディアのデータを活用し、車の購入を検討しているユーザーにテレビ広告を配信し、最寄りのディーラーへの訪問を促すことができます。AT&Tのケーススタディでは、こうしたディーラー誘導広告は10倍のROIで、100万ドル(約1.1億円)以上の収益増を生み出しています。

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アドレサブルTVとデジタルメディアとの併用効果を分析した事例では、新規顧客と既存顧客の購買行動に違いが現れています。ペネトレーション(新規顧客の獲得)には併用が効果的であり、リピート(既存顧客の再購入)にはアドレサブルTV単体が効果的であることが伺えます。

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この結果からは、広告が新規顧客にレレバンス(関連性)だけでなく、複数のタッチポイントで接触することで、ブランドのオムニプレゼンス(偏在性)を感じてもらう必要があるのかもしれません。テレビがターゲティング可能になることで、ブランドはターゲットを絞り、低コストでオムニプレゼンスを演出することができるようになります。

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日本ではいまだテレビ広告の個別配信ができなくも、広告主は動画広告から同様の知識と経験を得ることができます。複数のセグメントや、購買行動における様々なモーメントのターゲティング、Lean Backというテレビのメディア特性、そしてデータ資源の獲得と活用方法など、アドレサブルTVの登場までに学ばなければならないことはたくさんあります。

横山氏(左)と荻野氏(右)のトークセッションの様子

横山氏(左)と荻野氏(右)のトークセッションの様子

Written by 荻野英希