新しいアドテク「サプライパス最適化」の現状:要点まとめ

入札リクエストの爆発的な増加に伴い、ヘッダー入札がプログラマティックプラットフォームにとって大きな負担となった。そのため、プラットフォームはコスト削減に努めている。

インフラコストの削減を目指すデマンドサイドプラットフォーム(以下、DSP)が注目しているのが、「サプライパス最適化(Supply-Path Optimization:SPO)」と業界で呼ばれる新しいアドテクだ。SPOでは、アルゴリズムを用いてオークションで勝てる機会がもっとも大きい入札を選び出す。バイヤーは、SPOのおかげで落札できる可能性が高まるため、勝つ見込みのないインプレッション、再販に依存しているサプライサイドプラットフォーム(以下、SSP)、それに重複しているインベントリー(在庫)を避けられる。SPOの狙いは、入札効率を高めることでDSPがコストを削減し、怪しげなSSPの利用を回避できるようにすることだ。

本記事では、SPOの現状について知っておくべきことを紹介しよう。

重要な数字

  • わずか2年前まで、ヘッダー入札は少数のパブリッシャーしか利用していないニッチなコンセプトだった。だが現在、インベントリーをプログラマティックに販売するパブリッシャーの72%がヘッダー入札を利用していると、サーバーサイドのヘッダー入札ソリューションを手がけるサーバービッド(ServerBid)は報告している。
  • 2014年には、ターン(Turn)やザ・トレード・デスク(The Trade Desk)といったバイイングプラットフォームが処理するインプレッションの数は1秒あたり約100万だった。だが2016年末の時点で、ターンは1秒あたり約450万、トレードデスクは1秒あたり570万のインプレッションを処理していた。
  • DSP企業のロケットフューエル(Rocket Fuel)は実数を明かしていないが、同社はSPOを使うことで、1秒間に処理するインプレッションの数を最大30%削減できたと述べる。
  • アドテク企業アップネクサス(AppNexus)の広報担当者によれば、同社のインベントリーはおよそ半分が重複だという。このような重複を回避するため、同社は2017年初頭に、インベントリーの20%でSPOを使用した。現在では、インベントリーの48%でSPOを使用している。
  • 7月には、アドテク大手のルビコンプロジェクト(Rubicon Project)が3850万ドル(約42億円)でトグル(Toggle)を買収した。その狙いは、トグルの機械学習機能を利用して、入札を回避すべきインプレッションを特定し、インフラコストを削減することだ。

バイサイドの考え

ほとんどの広告主は、自分たちのお金が中間業者ではなくコンテンツクリエイターの手に渡ることを望んでいる。SPOはDSPとSSPを近づける役割を果たすため、理論的には複雑なデジタルサプライチェーンのなかで生まれるアドテク税を減らせるはずだと、ピュブリシスメディア(Publicis Media)のプログラムおよびサービス担当シニアバイスプレジデント、リッチ・ソベル氏は述べている。

アドビシステムズ(Adobe Systems)、ソノビ(Sonobi)、ザ・トレード・デスクといったバイサイドプラットフォームの担当者は、SPOのおかげで、アービトラージ(裁定取引)に頼る透明性のないSSPがビジネスを続けることは難しくなると予測している。

セルサイドの考え

アドテクプラットフォームは数多く存在するが、その差はほとんどない。だが、この新しいアルゴリズムをDSPが入札に使用すれば、付加価値をもたらしてくれる中間業者とそうでない中間業者を見分けられるようになるかもしれないと、ディズニー=ABC・テレビジョングループ(Disney–ABC Television Group)のアドテク専門家、サミュエル・ジェニング氏は言う。

「(SPOのおかげで)あまりにも多くの分け前を取っているSSPから、ほとんどのお金をパブリッシャーに渡しているSSPに需要が移ることになる。そのため、長期的にはパブリッシャーの利益に沿ったものになるだろう」と、テクノロジー系パブリッシャーであるパーチ(Purch)のCTO、ジョン・ポッター氏は語った。

業界にとっての意味

ヘッダー入札は、自社のエクスチェンジを優遇するGoogleのアドサーバーに対するパブリッシャー側からの回答だ。それと同じように、SPOは、ヘッダー入札による重複インベントリーの増加といった負担に対する広告バイヤーからの回答といえる。SPOのおかげで、バイヤーはアービトラージが得意なアドネットワークやSSPを回避できるようになるため、いかがわしいベンダーの排除につながる可能性がある。そうなれば、最終的には、中間業者に支払われていた広告費がパブリッシャーに移るだろうと、メディアトレーニングテック企業アイピーオンウェブ(IPONWEB)の戦略開発担当シニアバイスプレジデント、ネイサン・ウッドマン氏は指摘する。同社はSPOを使用して、不明瞭なオークションダイナミクスでDSPが自社やSSPの利益に反する入札を避けられるようにしている。

「これはエコシステム全体にメリットをもたらすことのできる対処方法だ」と、ウッドマン氏は言う。「(エクスチェンジを通じて)もたらされるメディア支出は今後も変わらないが、(広告費が)ユニークなインベントリーを持つ企業に再配分されるようになるだろう」。

Ross Benes(原文 / 訳:ガリレオ)
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