「連携力」で生み出した、新しいPMPのカタチとは?:セプテーニ ✕ GMOペパボ ✕ 東経 の取り組み

パフォーマンスを追求する広告として、オープンオークション型のプログラマティック広告が全盛だ。しかし同時に、アドフラウド(広告詐欺)やブランドセーフティといった課題も浮き彫りになっている。

それに立ち向かうべく、株式会社セプテーニ、GMOペパボ株式会社、株式会社東洋経済新報社の3社が取り組んだのが、PMP(プライベートマーケットプレイス)だ。それぞれ、順にエージェンシー、クライアント、パブリッシャーの立場となる3社は、互いに密にコミュニケーションをとることで、媒体理解を深め、ターゲティングやクリエイティブの最適化を行い、成果を上げているという。

PMPにおける珍しい事例

特定のメディアの優良な広告枠を固定の料金で利用できるPMP。一見純広告と同じように見えるが、直接DSP/SSPなどのシステムを通じて広告の出し入れを行うため、管理が容易で、オーディエンスデータに基づいたターゲティングを行えるところが魅力だ。しかも、マーケター側からするとアドフラウドやブランドセーフティに関する問題もなく、パブリッシャー側からすると高単価で提供できるというメリットもある。

すでに、PMPという手法は、一般に知られるようになってきた。だが、今回の3社のように、しっかりと互いに向き合って、プロジェクトを進めている例は、いまのところ珍しい。そのうえ、基本的にPMPはブランディング目的の利用が多いが、今回の場合はアプリのダウンロード、つまり獲得型のキャンペーンが目的であったという。

「このような取り組みを実施したのは、はじめてだった」と、セプテーニでアカウントプランナーを努める渡邊畔氏は語る。本記事では、そんな3社が取り組んだ、新しいプログラマティック広告のあり方についてレポートする。

「アドフラウドに関する相談が増えている」と渡邊氏

「アドフラウドに関する相談が増えている」と渡邊氏

アドフラウドに悩む広告主

ことのはじまりは、GMOペパボ社長室マーケティング統括チームでマネージャーを務める相田傑氏が、自社で実施しているキャンペーンにおいて、アドフラウド被害の疑いをもったことにある。ハンドメイド作品のCtoCオンラインマーケット「minne(ミンネ)」を運営している同社では、ユーザー拡大のためにプログラマティック広告を使って、アプリのプロモーションを行っていた。

「アプリの訴求広告に関するデータと実際のダウンロード件数のレポートを眺めていたら、おかしいなと感じる数字があった」と、相田氏は振り返る。「訴求広告のリーチ数とAppStoreの獲得件数の推移を見て、月間10%前後が正しく獲得できていなかった」。

特にいわれのない、無駄なコストが10%前後も増えるのは、広告主にとって大きな痛手。ならば、不正の可能性がある媒体を除外してしまえば解決するかというと、そう単純ではない。

「いくつかのアドネットワークではブラックリストを作って除外しているが、やり過ぎると今度はリーチが取れなくなる。また、一度除外した媒体を再検証してホワイトリストに戻すかどうかを判断するにも手間がかかる」と、相田氏は悩ましさをにじませる。そこで、セプテーニに相談したという。

「ブラックリスト、ホワイトリストに分別するだけでは、ままならない」と相田氏

「ブラックリスト、ホワイトリストに分別するだけでは、ままならない」と相田氏

予想してなかったマッチング

「同様の問い合わせが増えている」と、渡邊氏は語る。相談を受け、アドフラウドをブロックするツールなどを挟んで広告掲載することも考えたが、今回はPMPを選択した。ホワイトリストでパフォーマンスのよい出稿先に「東洋経済オンライン」の名前を見つけたからだ。

「意外にも東洋経済オンラインがminneのユーザー層にマッチするということがわかり、これはやる価値があると思った。PMPを活用した新しい取り組みであり、媒体と密接に連携する施策として、よい試みになると考えた」と、渡邊氏は当時を振り返る。

以前から相田氏も、PMPならアドフラウドの抑制ができて、プロモーション効果の改善にもなるかもしれないと感じていた。そこで、セプテーニの提案にのった。東洋経済新報社側の担当となった、ビジネスプロモーション局デジタル広告部の進藤貴史氏も、この取り組みの意義を強く感じたという。

「オープンオークションのネットワーク広告では、どういう広告が掲載されるか事前に審査できない。質の悪い広告、たとえばユーザーにいきなりインストールを強いるようなものや、ウイルスに感染しているような広告が出てしまうこともあり、パブリッシャーにとっては大きなリスクになっていた」。

「今回の取り組みは、媒体側としてありがたかった」と進藤氏

「今回の取り組みは、媒体側としてありがたかった」と進藤氏

配信面に秘められた事実

実際の取り組みは、セプテーニが戦略と運用を担当する形で進められた。DSPとSSPはともにGoogleの広告プラットフォームを使用。クリエイティブは2つのサイズで約50種類制作し、セグメントはiOSとAndroid、男女の掛け合わせに加えて、ハイクラス男性に設定した。また、読者の属性値や来訪するボリュームゾーン、媒体内での自身のある枠について進藤氏からアドバイスを受け、それを踏まえてまずはテスト配信を実施した。

その結果、女性の反応率が高いことがわかり、クリエイティブのブラッシュアップ制作を急ピッチで進行。それが功を奏し、本配信ではテスト配信時と比較して0.1%近くCTRが改善した。PMP配信前のアドネットワーク経由での配信時と比較すると両OSともにCTRが0.3%程度改善されたという。

この取り組みは、東洋経済にとっても媒体を理解してもらう絶好の機会になったようだ。実は、「東洋経済=男性が読者のサイト」という固定化されたイメージは、東洋経済自身にとっても課題だったからだ。進藤氏によれば、「今年に入ってから女性の比率が急伸しており、男女比率は6対4くらいで、女性は決して少なくない」という。「東洋経済オンラインの読者は、共働き世代の30-40代がボリュームゾーン。minneのターゲットに含まれながらも、いままでリーチしきれていなかった層とマッチしたのではないか」と進藤氏は分析する。

東洋経済オンラインではPMPの事例は増えている。だが、多くはブランド認知が目的だ。今回のように獲得目的のキャンペーンでひとつの媒体を指名買いするというのは珍しい。しかも、純広告であればパブリッシャーが代理店や広告主と直接話すのは一般的だが、プログラマティック経由だと数字だけの世界で完結してしまうため、代理店や広告主との一切会話はない。そのため、これまではPMPであっても、媒体特性や読者の詳細を伝える機会はなかった。

だからこそ、今回の取り組みは「代理店や広告主が抱いている課題や意図を聞ける有意義な機会だった」と、進藤氏は述懐する。

3社の立場で、直接話し合うことに意味がある

3社の立場で、直接話し合うことに意味がある

エージェンシーの存在意義

だが、代理店を介さず広告主と媒体が直接密にコミュニケーションを取ることで、成果につながるのであれば、代理店の存在意義を揺るがすことにはならないのか? クライアントである相田氏と、パブリッシャーである進藤氏に問うた。

相田氏は、「確かにそういった面もあるかもしれないが、広告主としては付加価値の高い代理店と付き合うのがベストな選択だ」と答える。

「セプテーニは自社プラットフォームをもたないので、何を使うべきか客観的な視点で提案してくれる。クリエイティブの制作も、我々の社内リソースだけでは限界があるが、代理店に任せることで満足できるものを作ってもらえるのは非常に助かる。また、媒体との距離が近くなることで、媒体から直接情報も入手できるようになるが、その情報を代理店に戻して、戦略、運用、設計、クリエイティブを助けてもらうことで、さらなる効果の向上につなげることができる。そういう点で、PMPでも代理店の存在意義はあると感じている」。

媒体側の視点として、進藤氏もニュートラルな立ち位置をセプテーニの一番の強みに挙げる。「いろいろな代理店と話していると、自社サービスを使わなければならないというしがらみを感じる。広告主がいつも使っているものを使えることはセプテーニの強みだ。また、媒体を評価してもらったうえでの取引が増えるのは理想的だが、取引を増やしたくても社内リソースやクリエイティブ制作における知見が不足していたりする。だから、セプテーニのような代理店は心強い存在だ。我々だけでは実現できない」。

これからの代理店の姿

代理店の強みは、これまでの案件で培った知見や経験を活かして、新しい提案や運用、クリエイティブの制作ができることだ。しかし、AIなどの技術がさらに進歩すれば、そういった部分も機械でまかなえてしまえるのではないだろうか? という、少し意地悪な質問を、最後に渡邊氏に投げかけてみた。

「運用型キャンペーンにおいては、いまでも人の手で確認をすることは大切だが、チューニングについてはAIに任せた方が良い結果になることもある」と、渡邊氏は答える。「しかしながら、代理店の役割がAIに取って代わられるとは考えておらず、むしろAIを味方に付ければいいと考えている。セプテーニでは、AIの活用を推進する専門部署があるので、今後は、AIの力と人の脳(発想)を組み合わせることで、代理店ならではの価値を提供し続けていきたい」。

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Written by 仲里淳
Photo by 渡部幸和