新流行の「シネマグラフ」、新興市場を制するのは誰だ?

「シネマグラフ」がデジタルマーケティングにおいて、流行の兆しを見せ始めている。「シネマグラフ」とは、静止画であるはずの写真の一部が、動画のように動き続ける「新しい画像」のことだ(TOP画像参照)。

流行の要因は、シネマグラフの認知が広がったことに加え、Facebook、インスタグラムなどでの掲載環境が整ったことが挙げられる。また、スマートフォンに保存された動画からシネマグラフを製作できるアプリも登場しており、一部のインスタグラム広告などでもシネマグラフはデビューを飾った。日本でもメディア、プラットフォームでシネマグラフの活用が始まっており、全編シネマグラフで制作された女性ユニットのミュージックビデオも登場している。

これを商機とみたシネマグラフ専門ベンチャーが現れた。大手ストックフォト企業も参入の機会をうかがっているという。そんな、シネマグラフ市場をめぐるベンチャー企業の攻防を見てみよう。

digiday1
ビールの泡が溢れ出る「シネマグラフ」。Image by 星野美緒(produce from Create the Bridge‘s movie

シネマグラフにすべてを注ぐ独ベンチャー

Gallereplay」は、ベルリンのシネマグラフ専門のベンチャー企業。同社の共同創業者であるマルコ・ウォルド氏は「私たちはストックシネマグラフを販売し、動画をシネマグラフに加工する受託業務も行う。製作に関しては、内製する場合もあれば、世界中の協力アーティストにアウトソースする場合もある」と、話した。

同社は2015年8月にドイツの新聞最大手「アクセル・シュプリンガー」などドイツの3メディアから取材を受けており、同国内においてベンチャー企業が集まるベルリンでも、急成長が見込まれる企業として国内外からの注目が増している。

digiday3
湖畔からの風が女性の髪を揺らし続ける。Image by 星野美緒(produce from Colby Moore‘s movie)

Gallereplayが警戒しているのが、有名なストック写真サイトである「シャッターストック」とシネマグラフ専門ベンチャーの「フリクセルフォト(Flixel Photos)」が協業する動きだ。両社はシャッターストックの流通網を使い、多くのシネマグラフを提供する予定だという。フリクセルフォトは、Gallereplayのライバルで、シネマグラフのフォーマットを理解する多くの写真家を抱えている。

ウォルド氏は、大手企業が参入してくることは見越していたと、話した。Gallereplayはより多くのアーティストと契約し、より多くの写真をポートフォリオに加えることで先駆者利益を築こうとしている。

インスタグラムから火がついた

シネマグラフは数年前からすでに存在していたが、つい最近、広告業界で人気となった。インスタグラム、TumblrやTwitterがシネマグラフに最適な動画フォーマットを導入したためだ。

ウォルド氏は多くのシネマグラフのハッシュタグをトラッキングしていた。「今年の初めにインスタグラムで紹介してから、インスタグラムに投稿されるシネマグラフの数が10倍に増えた」という。

多くの企業もソーシャルメディアのプロモーションにシネマグラフを使用している。フリクセルフォトによると、スターバックス、ウォルマート、菓子メーカーのドリトス、ダンキンドーナッツやアップルなど、これらの企業は最近ソーシャルメディアでシネマグラフを用いた。日本企業ではトヨタも利用している

Here's our vision of @instagram's #WHPHoldstill. #KeepItWild with your Weekend Hashtag Project. #4Runner.

toyotausaさん(@toyotausa)が投稿した動画 –

インスタグラムやFacebookもシネマグラフを1年以上採用している。特にループ動画フォーマットが公開されてからはシネマグラフなどを推進した。

写真の魅力高める「お金持ちの『GIF』」

インスタグラムのマーケット・オペレーションズ・ディレクターであるジム・スクワイヤーズ氏は、米DIGIDAYとのインタビューで、「シネマグラフはマーケターがプラットフォームで採り入れ始めている、よりクリエイティブなスタイルだ」と指摘する。「人々や広告主に愛されていて、写真の魅力に注目を集められる優れた方法だ」。Facebookも動く写真をローンチしたばかりで、新しいiPhoneにも動く写真機能が備わっている。

「やり方によって、多くの反響を得ることができる」と、デザインコンサルティングの「ワーク&コー」のパートナーを務めるジョン・ジャクソン氏は言う。さらに「シネマグラフはお金持ちの『GIF』だ」と、表現した。ジャクソン氏はディズニーや大手スーパーマーケットのターゲット、そのほかの企業のシネマグラフ製作を過去に手掛けている。

digiday4
渋谷ハチ公前のスクランブル交差点のシネマグラフ。Image by 星野美緒

Gallereplayはストックシネマグラフを増やすため、多くのアーティストと契約を行っている。マーケティングで使用する場合、利用料は200ドル(約2万4000円)。記事で使用する場合は100ドルになる。ウォルド氏によると、Gallereplayは高画質な映像に興味を持っていて、普通のストック写真や動画には興味がないという。

「今までに見たことがあるようなものからは、できる限り離れたい」と、ウォルド氏は言う。ストック写真企業が提供しがちな、古臭くて陳腐な写真のことだ。

しかし、フリクセルとシャッターストック陣営が追いかけてきている。フリクセルのマーケティング部門長を務めるロバート・レンドヴァイ氏は、シャッターストックとの新たな契約で、1000枚以上の新たなシネマグラフが、掲載されることになったことを明らかにした。新しい対決の火蓋は、切って落とされたばかりだ。

Garett Sloane(原文 / 訳:小嶋太一郎)*[日本版]編集部で加筆・編集した。
Eye-catch and thumbnail Image by 星野美緒(produce from Benjamin Wu’s movie)