「透明性レポート」が示すメディアエージェンシーの大問題:なぜこれが引き起こされたのか?

この記事は、独立系メディアエージェンシーであるノーブル・ピープル(Noble People)のCEO グレッグ・マーチ氏による寄稿コラムとなります。

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全米広告主協会(ANA)が最近発表した、あの「透明性レポート」については、すでにご存知のことだろう。同レポートによると、メディアエージェンシー業界には、マネタイゼーションの仕組みや振る舞いなどについての透明性がないという。広告主の目標の達成のためだけにメディアが勧められているかどうかは不明なのだそうだ。こうした主張は怒りを誘い、マスコミの注目を集めた。当然、エージェンシー側も憤慨している。

「透明性レポート」の裏テーマ

しかし、このレポートには別のテーマが眠っている。読み取るのが困難で複雑な問題だが、マーケティングのコミュニティなら間違いなく注目するに値するものだ。このレポートでは、会社のスケールと社内風土によって透明性の欠如がどのように実現されるのか、その概要が示されているのである。

ポイントは3つの形で表されていた。担当エージェンシーがサインした契約によっては制約されない姉妹会社、クライアントのメディア支出の見返りに株式を引き出す持株会社、そして、持株会社のトレーディングデスクとの調整に基づいて、見合わせられたり聞き入れられたりするメディアベンダーへのアクセスの3つだ。

こうした調整の隠蔽や合理化が、スケールの大きさによって容易になるというのはわかりやすい話だろう。とはいえ、まずは、スケールがもたらすメリットについて検討しよう。

スケールは有効性を意味する

スケールの大きさは一般的に、クライアントに低いレートをもたらす能力と結びつけられる。たしかにその可能性はあるが、この方程式は変動しやすい。

多くの場合、スケールの大きさは、有効性を意味する。「うちは大きく、彼らは大きい。ほかの人たちも彼らを選べば、そんなにひどいことになりえない」というわけだ。ニューヨーク市にやってくる旅行者がレストランチェーンのオリーブ・ガーデン(Olive Garden)で食事をするのもこれが理由だ。

スケールの大きさには、世界中でシームレスに機能する国際ネットワークが含まれている。ただし残念ながら、同じ会社内部で起こる競争も、別々の会社による競争と同じくらいの妨げになりえる。

スケールは価値を保証しない

では、スケールがもつデメリットを検討しよう。

この世界に存在するメディアが増えつづけているせいで、メディアの質を下げさえすればレートを下げることができる。そのようなメディアには事欠かない。テレビだけで1000もチャンネルがあり、物理メディアとデジタルメディアもたくさんあるが、その大部分は、実際にはまったく視聴されていない。バナーの50%は、1秒見られればエージェンシーが「ビュー」に数えるのだからひどい話だ。

オンラインオークションには、そうした質の低いメディアが次々とやってくる。つまりスケールは、オークションにおいては価値をもたらさない。

一方で、スポーツ中継や、アカデミー賞、良い場所にあるビルボード(広告掲示板)、文化的な集まりの時空間など、希少な「メディア」の価格は急騰している。こうしたメディアを売る側は、それが売り切れることを知っている。つまり、「たくさん買うこと」が問題の解決になるわけではないのだ。

組織のスケールも問題となる

スケールがもたらす別の側面は「会議」だ。全体を把握することなく、ひとつのことの断片を担当する大勢の人間が参加するたくさんの会議。おそらく姿を見せること自体がステータスなのだろう。しかし結局は、19人が携帯電話を45分間だけオフにして、事前に書き留めたメモを読み合うのと大差はない。

なぜそんなにたくさんの人が会議に出席するのだろうか。それは、その多くは学校を出たばかりの「アシスタント」であり、彼らを「プランナー」が管理しているからだ。プランナーは、2年後に「スーパーバイザー」になる必要があり、さもないと会社を辞めることになる。

そして、3年の経験があるスーパーバイザーは4人のプランナーを管理するが、自分は「アソシエイト・ディレクター」によって監督されている。アソシエイト・ディレクターがいなければ、「グループ・ディレクター」が、自分より下のレベルの仕事をすることが必要になるからだ。その一方で、もっとも経験を積み、独創性をもつスタッフが、17%の時間でクライアント10社に対処している。

スケールは人材の質の低下を招く?

そしてプロセス。スケールはプロセスが大好きなのだ。スケールが大きくなると、仕事をしない人間が必要になる。彼らはプロセスを実施し、修正し、プロセスを教育する。

ビッグデータも忘れてはいけない。本当に変化をもたらすビッグデータの事例研究がいくつあっただろうか? 何かを3%増加させるためという名目で、莫大な時間とお金が請求され費やされるが、そうしないと増加しなかったのかは定かではない。

私はたくさんのクライアントや、メディアエージェンシー仲間と話をしてきたし、たくさんの従業員を雇ってきた。しかし、「あの会社のマーケティングが実際には何によって変わったのか知っているかい? このレートにプロセス、そしてこのメディアミックスのモデルだよ」という声は一度も耳にしていない。ということは、スケールは単に、メディアエージェンシーの質の低下を招くのではないだろうか。

スケールに関係なく、すべてのエージェンシーは、クライアントへの透明性を確保するべきだ。あの余分なリベート収益を取り除いてみたら、メディアエージェンシーの成功と失敗は、そこで働く人々の実際の質に結びつくようになるのかもしれない。

そうなった世界を想像してみよう。

Greg March(原文 / 訳:ガリレオ)