反論:「バナーは効果ない」という業界人は算数をやり直せ

本記事は、メディアプランニング&購入エージェンシーであるメディアソシエイツ(Mediassociates)の戦略プランニングVP、ベン・カンツ氏による寄稿です。

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毎年はびこる雑草のように、またもやトゲを生やしたへそ曲り業界人が出現、デジタル広告の花「バナー広告」は何の役にもたたないという主張を展開した。匿名のメディアエージェンシーCEO(ここでは密告者と呼ぼう)が米DIGIDAYに語った記事(日本語翻訳版)によると、世のマーケターは、誰も見ないオンライン広告フォーマットに莫大な無駄金を使っているという。この密告者いわく、「(広告業界は)本質的に壊れているもの(ディスプレイ広告)を、洗練されたものであるかのように見せかけてきた」。

あーあ。この密告者はつまり、私は算数ができませんと告白しているようなものだ。デジタル広告の効果が絶大であることは、各ステップを計算しさえすればわかる。ジョン・ワナメーカー風に言わせてもらえば、広告業界人の半数は、広告の効果を計測する方法をわかっていない。その「わかっていない半数」の言葉が、DIGIDAYに掲載され続けるのは困ったものだ。

まずはロジックを試したらどうか。筆者は以前、悪評高いバナー広告が、実はほかの大部分のメディアとまったく同様の範囲に収まるレスポンスレート(0.07%)を達成していると米DIGIDAYの寄稿記事に書いた(たとえばテレビの場合、 視聴率ではなくレスポンスレートを計測すると、0.05%になる。根拠となる計算はこちら)。

計算してみればすぐに分かる

しかし、もっとわかりやすい方法がある。基本的な「算数」だ。ミスター密告者くん、君にとっては難しい話かもしれないが、よく読んで欲しい。デジタル広告の仕組みを、わかりやすく解説してやろう。

  1.  100万ドルのメディア予算があると仮定しよう。実際の予算は、これより多かったり少なかったりするだろうが、レスポンスレートに基づくモデルの話をするので、最終的な売り上げ実績1件あたりの結果は同じだ。10万ドルのバナー広告予算、これが前提。
  2. 頭脳明晰なメディアショップ(たとえば、ウチの会社。笑)に依頼して、オーディエンスデータターゲティングとクオリティ出稿を活用した平均CPM 4ドル のデジタル広告購入を計画してもらう(CPMは、インプレッション数1000あたりのコスト)。欲張りな計画ではあるが、プログラマティックをブレンドすれば十分可能だ。通常は、斬新で派手なフォーマットの広告も入れるのだが、ここでは、便宜上、ありきたりなIAB広告枠を使うと仮定する。
  3. ここで計算。[($100,000 ÷ $4.00) x 1,000] の解から、10万ドルの予算で2500万のインプレッションが買えることがわかる。2500万は、広告が「提供」される回数だ。
  4. 優秀なメディアショップが展開する優れたデータターゲティングとコンテキスト出稿により、平均0.07%のクリックスルーレートが達成できると仮定しよう(ルーマニアからのbotトラフィックを差し引いたうえで)。2500万のインプレッションに0.07%をかけると、クライアントのサイトが1万7500回クリックされることになる。
  5. ここで、購買コンバージョンレートが2.0%と仮定する。コンバージョンレートとは、ウェブサイトへのビジターが実際に製品を購入する割合だ。これはブランドや業界によって異なるが、1万7500人のビジターのうち、2.0%が購入に誘導されると、販売実績数は350となる。
  6. 最初に仮定した10万ドルの予算を350の新規販売実績で割ると、売り上げ実績1件あたり$285.71のコストがかかったことになる。

結果には、ばらつきが発生する。我々の経験では、売り上げ実績1件あたりのコストは、50ドルから700ドルと幅広く、売らんとする製品がイケているかそうでないかによって変動する。しかし、285ドルくらいが目安だと思っていい。

さて、デジタル広告に効果があるかどうかを理解するには、レスポンスレートを見て嘆くのではなく、「売り上げ実績1件につき、285ドル以上の儲けが出ているか」を考えればよいのだ。カミソリのパッケージを10ドルで売っているなら、残念ながら、デジタル広告には効果がないという結論になる。ROIがマイナス97%では、本末転倒だ。バイラル動画の製作にでも精を出すべし。

「投資利益率は250%、10,400%」説

しかし、1000ドルのレザージャケットを売っているなら、ROIは250%で、悪くない。3万ドルの自動車ならば、売り上げ1件あたりのコスト$285.71は、全然、悪くない。これはROIにすると10,400%だ。

言い換えると、デジタル広告に効果を期待するには、デジタルでの売り上げ1件あたりのコストよりもかなり高めの製品価格が必要なのだ。大部分の製品は、この勘定書きに収まっている。

これは意見ではない。冷徹な数字のロジックである。

もちろん、ほかにも考慮すべき変数がいろいろあることはわかっているよ、ミスター密告者くん。もろもろのマーケティング経費を差し引いたり、顧客の「ライフタイムバリュー」を加味したりしなければならないだろう。それに、同時に発生している、ほかのマーケティングチャネルの影響も測らねばならない(テレビCMがデジタルクリックに影響している? Google検索がマーケティングチャネルを弱体化している?)。また、5ドル以下の価格でポップコーンを売っているなら、望みは薄いことには違いない。

バナーを含むプランは相互補完的

最後に。製品を世に知らしめ、ストーリーを語る上で、小さなバナー広告は、サウンド、音楽その他を駆使した派手なテレビCMにはまったくかなわない、これは妥当な見解だ。新聞広告では、映画の予告編と同様の注目は得られないということと同じだ。頭から湯気を立ててこれを読んでいるであろうアンチディスプレイ広告の密告者くん、この点については君に同意する。

実際のところ、我々のエージェンシーでは、「バランスのとれた食生活」よろしく、テレビ、ラジオ、OOH、体験型広告などを含む総合メディアプランのひとつとしてデジタル広告を扱っている。複数のコンポーネントが互いを補完しあい、それぞれが重要な役割を担っているのだ。しかし、レスポンスレートが低いからデジタル広告はまったく使えないという主張は、誤謬もいいところだ。正直なところ、かなり恥ずかしい。

というわけで、ぜひとも電卓を叩いてみることをお勧めする。デジタル広告は使えないという主張からは、数字に弱いという事実が露呈するだけだ。

Ben Kunz(原文 / 訳 片岡直子)
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