悪しきユーザー体験の元凶はどこにある?:アドブロックという名の大いなる偽善

本記事は、ピュブリシスグループ(Publicis Groupe)傘下のアドテク企業、ヴィヴァキ(VivaKi)でCEOを務めるステファン・ベリンガー氏からの寄稿です。

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無料で高品質のインターネットコンテンツをめぐる戦いが、いっそう激しさを増している。この戦いは、モバイルデバイスにおける「より良いコンシューマー体験」という旗印のもとで繰り広げられているが、その核心は消費者よりお金にあると私は確信している。具体的にいえば、誰がより多くの利益を生み出すのかという問題だ。

アドブロックというビジネスモデル

2016年2月19日、それを象徴する出来事が起こった。モバイル通信業者のスリー(Three)が、イスラエルに拠点を置くアドブロック企業、シャイン・テクノロジーズ(Shine Technologies)の技術を利用して、ネットワークレベルでは2番目に規模の大きなアドブロックを統合しているワイヤレス・サービス・プロバイダーになったのだ。

プレスリリースでは、コンシューマーの保護に関する話が多く語られ、アドブロックがもたらす負の部分については、ごくわずかしか触れられていない。このビジネスモデルによってもたらされる、アドブロック企業やスリー(Three)の売上の出どころについては、なおさらだ。

こうした取り組みでは、GoogleやFacebookから配信されている広告がブロックされることはほぼ間違いなく、事態を回避するために料金を支払うよう求める可能性も十分にある。これを恐喝と呼ぶ人もいるが、うまい儲け話だと捉える人も多いに違いない。

ユーザー体験を貶めるのはどちらだ?

どちらにしても、GoogleとFacebookはこの恐喝を喜んで受け入れることもなければ、売上なしにサービスを提供することも好ましくは思わないだろう。このような広告掲載料が課せられるようになったとき、スリー(Three)の株価がどうなるか、想像してみてほしい。

アドブロックを取り入れるスリー(Three)は、自分たちの株価にも影響力が及ぶことを信じている。また、彼らのモバイル商品がユーザーから大いに好まれていることも事実だ。

だが、それらユーザーは、スリー(Three)を通したモバイル体験で、GoogleやFacebookのサービスに熱中している人たちでもある。そのため、この取り組みの成否は、スリーを通したGoogleやFacebookへのアクセスが、何らかの形で制限されるようになったときに、それでも同じくスリー(Three)を利用するというユーザーがどれくらいいるかにかかっている。

また、GoogleやFacebookが恐喝に屈しないことに決めた場合はどうなるだろう? GoogleやFacebookで大勢の人が見たがるコンテンツに、誰が資金を提供するのだろう? スリー(Three)の顧客だろうか? 私はそうは思わない。

コンテンツは衰退するしかないのか

これは大切な問いだ。なぜなら、本来素晴らしいコンテンツには、制作、公開、ホスティングのための資金を要するからである。広告による売上(または、ユーザーが支払うサブスクリプション料金)がなければ、コンテンツは衰退するしかない。

このことが、アドブロックを大いに偽善的な存在にしている。「より素晴らしいコンシューマー体験」という旗を振りながら、実際にはもっとも貧しいWeb体験にユーザーを導いているのだ。テレビの場合と異なり、これに代わる選択肢は存在しない。テレビであれば、ユーザーは広告を見るか、広告のない番組にお金を払うか、さもなければテレビの電源を消すという選択肢がある。

争いや議論が続くなか、我々アドテク企業は、自身のデータに気を配り、コンシューマーの声に耳を傾け、我々が関わるクライアントやオーディエンスとの繋がりにおいて、ますます価値を生み出していくことに邁進すべきだ。我々が素晴らしいコンテンツと価値あるメッセージでコンシューマー体験の質を高めていければ、アドブロッカーなど現実に意味のない問題になるはずだ。

Stephan Beringer(原文 / 訳:ガリレオ)
Image via Thinkstock / Getty Images